オーディオでも知った過渡特性の実感
ジラウドの福田さんが所有していた古いJBLのラージモニター。オールアルニコ仕様、恐らくマニア垂涎の品なんじゃないかと思います。こいつの音がま~超強力でした。
とにかくブッ飛ばされたのはスティングの【Brand New Day】
持っているのですでに内容を知ってるつもりでいたんですが、このアルバム一曲目ど頭、目ん玉飛び出そうな衝撃を受けることに。
静寂、ほとんど無音に近かったはずが、
「ドゥブオオオオオォォォォ!!」
とんでもない低音が出てきて仰天。
「え!何これ!?知らない音なんだけど!!?」
そこまで印象に残らなかったCDが別物に化けた瞬間。魂が消えると書いてたまげる、まさにそんな感じ。
自分の所有システムじゃ再生できなかった低音が存在していた事実。いくら何でもあそこまで違うのかとひっくり返ったのなんの。
しかも特別なにもブーストしてないと言うのだから言葉がない。
30Hz~40Hzぐらいなのかどうなのか?具体的な周波数については分かりません。
そこだけ見たら再生できる機器が他にあっても特に珍しくはないと思います。今の時代ならそれこそ小型でも出せるものがあるんだろうと想像。
ただ、あのサウンドの肝はそこではない。
『根本的な解像度と過渡特性』
言葉にするのは難しいものがありますがたぶんこれ。特にジラウドでよく耳にしたのは後者。過渡特性へのこだわりが本当に尋常ではなかった。
「過渡特性とはなんぞや?」って話に当然なりますが、それについては以下のサイトの解説が分かりやすかったのでおすすめ。
簡単に言うと応答速度とか瞬発力とかそんな感じとノリ。
で、その過渡特性に優れたシステムの何が素晴らしいかって、
『超気持ちいい』
ほんとにこれ。
それじゃ説明としてあんまりだってことなら、例えばの話、アタックがなまる、立ち上がりが鈍臭い、音が全然抜けてこない。
エフェクターかけまくりで潰しまくり、音が反響しまくったり遅れまくってわけが分からない、勝手に加工されまくって気持ち悪いなど、そんなイメージをしてみればいいんじゃないかと。
過渡特性に優れたシステムはその逆、バキーン!とアタックが気持ちよく出てくれる、スコーン!と音が抜けてくる。
何もせずともそのままで十分良い、低音が遅れない、望み通りのタイミングでちゃんと音が出てくる。
超瞬間的な音でもしっかり粒が立つ、こちらの望むまま加工することもできる、そんな特性を思い描いてみると分かりやすい。
さらに加えると、妙な余韻や減衰の不自然さがないってのも重要。
「ドンッ!ブンッ!」と短くキレ良く弾いたはずが、「んドゥン!んん・・んブゥン!んん・・」みたいなことになるのはストレスがたまってよろしくない。
この辺、スラップ愛好家などにとっては致命傷にもなってくるでしょう。
「なんでこのアンプこんな音しかしねぇの!?」「全然抜けてこねぇ!」「アタックがなまってクソすぎる!」とか、心当たりのある人も少なくないはず。
楽器でもオーディオでも同じ。過渡特性を捨ててるようなシステムは気持ち悪い。
スペック上のレンジは広くても全然そんな風には聴こえない、低音はもっさいくせに高域はうるさい、だるんだるんで締まりがない、粒立ちが悪くて音がモヤけて団子になる。
全部モノラルにして中心に寄せて潰した感じ、何を通しても再生してもベッタベタに同じノリにしちゃう等、これは自分的には最悪も最悪、絶対に使いたくありません。
困ったもんで、遅いベース、遅いアンプ、遅いスピーカー、遅いエフェクター、そういうやつが溢れているんですよね。
「なまりが良い!温かみがある!」って言うのも分かるんですが、自分の実感としてはその「なまり」とか「温かみ」を求めるにも過渡特性には優れている方が良い。
異常に鈍臭く気持ち悪い特性を味わいとして認識することはちょっと厳しい。
レンジが狭くても過渡特性に優れていれば気持ちいい。
その辺り、状態の良いオールドのフェンダーとか弾くと納得できます。優しくあったかいとかのんびり包み込むなんてイメージとは対極だったりもするあの不思議。
実際に弾いた印象、音が固まりとして出てくる、芯がボヤけずパンチがある、反応も速くてより感覚的、むしろ超元気じゃないかって気持ちいいノリがあってびっくりします。
これについてはシンプルな真空管アンプなどもそうなんじゃないかと。
ただ音色を真似すりゃいいってもんじゃない根本的な特性、感覚的に優れたレスポンスを持っているからこそ今日の支持があるはず。
ただの遺物とは片付けられない気持ちよさには絶対理由が存在する。
ジラウドで体験したオーディオシステムはJBLの他にも、A級動作の強力なパワーアンプとディスクリートのプリアンプを組み合わせていたり、まさに驚愕のサウンドを体験できました。
ああいった音を何十年(40~50年?)も前から知っているからこそ、ジラウドのベースが作れる、普段から感覚を研ぎ澄まし鍛えることができるのだと納得。
ただまぁ、あれと同レベルのシステムを構築するにはとんでもない資金が必要、重量も合計で軽く100kg超えてるのでどうにもならないのが現実。
しかしそれでもやはり、可能な限りは過渡特性に優れたものに触れておきたくなります。
幸い、シンプルなPA用パワーアンプやスピーカーは安価に購入することも可能な世の中、利用しない手はないでしょう。
モニター、アンプシステムを自宅で充実させるのはなかなか難しいのは百も承知。
だけど無理にでも押し通してみる価値はある、構築可能な環境にいるんだったら投資しちゃった方が絶対良い。
何かとオカルトな話やイメージが先行しがちだったりもするオーディオや楽器の世界。そんな中においてジラウドの何が素晴らしかったって、
『圧倒的現実を眼前叩き付ける』
宗教的思考、カルトな脳にかぶれてんのはこっちだったと恥ずかしくなるのが良かった。胡散臭いだの信じられないだの斜に構えてようが目の前であれをブッぱなされたら納得するしかない。視野狭く無知なだけだったとどれだけ赤っ恥かいたことか。
表面的な音色や高域特性にばかり意識が行っているとなかなか気付けない過渡特性。
凄く良い音なはずなのに何かパンチがない・・抜けてこない・・低音も迫力がない・・そんな悩みがあるならそれは根本的な反応速度、応答性に難がある可能性も高いかもしれません。
にもかかわらず、エフェクターや後付け加工でどうにかしようとしても、なかなか上手くはいかない。解像度も反応もより悪化する一方になるのが大体のパターン。
特にベースの場合、そもそもの扱いが色々難しいのが現実。
アタックや抜けばかり求めてキンキンスカスカ、低音出そうとしてぼわぼわ、中高域目立たせてウワモノにぶつかる、そんな悲しいことになりがち。
音抜けを良くしたくて上をブースト、うるさいから低音も出すコンプで潰す、音がどんどん遠くなって抜けない、また高域をブーストなんてループはまさに地獄。
上手な音作り、カットの方向を覚えるのもいいけど、実はもっと簡単な道もあると実感。
『速さを求める』
良いジャズベやプレベ、シンプルを求めるってありがちですが、必然的にその速さ、過渡特性を追求してるがゆえの行動、選択なんじゃないかと。
速い楽器、速いシステムは特に何もせずとも素晴らしく気持ちいい。異常な加工をせずともそのままで済んでしまえばこんな楽なことはない。
言葉にすると難しいようだけど、実は多くの人が感覚的に理解している、それこそ本能的な実感が可能なのだと思います。
楽器でもオーディオでも同様、より人間的、動物的な部分を追求するのであれば古いものの方が優れている面も多くある。
懐古の一言では済ませられない問題に踏み込んでみると多くのことに気付けます。
『過渡特性』
意識して損なし。
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