今だから分かるネオパッシブ
ジラウドが生んだネオパッシブ。
最初はその価値が全く分からなかったが、今になってその美味しさを本当に実感する。
EQなどは通さずバッファのみを搭載。パッシブの絶妙さを活かしたままローインピーダンス出力。
実に単純な話なんだけど意外と採用されない不思議な仕様。
とは言え確かに、商品として考えてみるとかなり渋めな方向性、どうしても地味な感じ、恩恵が分かりづらい印象になっちゃうのは間違いない。
派手な音がするわけじゃないし、コントロール系の操作感もパッシブのそれって感じ。その押しの弱さが仇になり、自分も最初は何だかよく分からなかった。
ジラウドと来ればスラッパーなどのインパクトの強さの方にまず耳が行ってしまう。
そのサウンドを聴いた後、ネオパッシブの方に心ときめくかどうかと問われたら、正直微妙になると言わざるを得ない。
そんな、いまいち不人気、名前がややこしい、謎に思われがちなネオパッシブ。
独断で分類して名付けてみたり、その仕様について考えていきたい。
①アクティブネオパッシブ
いきなりさらにややこしい、分かりづらさ全開に名付けてみたが、個人的には非常に分かりやすくなった気がする。
と言うのも【アクティブバランサー】と呼ばれるバッファ内蔵型バランサーを使用するのが特徴だからだ。
とにかく信号を劣化させたくないとして、そこで取る手段はPUから直接バッファに送る事。
ボリュームやトーンを介してからバッファに送るのではなく、まず最初にバッファに送るのがポイント。これによりクリーン極まりない出力が可能になる。
一方、それだとあまりに綺麗すぎる、直接的すぎる、そんな印象を抱くのも必然と言えば必然。
EQ・プリアンプを通してないとは言え、アクティブそのものなのは否定できない。
そこで、信号をバッファに送る前にパッシブトーンを通す。スイッチングにより任意でパッシブのそれを加えられる。
そうする事で「ネオパッシブ」と呼ぶに相応しい仕様になる。
アクティブでは実現できない絶妙なハイカット、パッシブトーンの美味しさを持ちながらも出力はローインピーダンス。
シンプルながら実にジラウドらしい狙いと魅力が詰まった仕様。
改めて考えてみても素晴らしいアイデアだと唸る。
②簡易ネオパッシブ
「パッシブトーンの美味しさが活きる!」と前述したが、純パッシブと比較した場合、それでもやり過ぎ感があるかもしれない。
やっぱり何かアクティブ臭いなっていう、そんな印象を持っても不思議ではない。
それぐらいジラウドのバッファは強烈、またはパッシブの再現不可能な魅力、謎な良さを感じさせられるとも言える。
となると、よりパッシブに近付けたい、もっと自然な甘さと太さを求めたくなるのは必然。
アクティブネオパッシブでは実現できなかった部分、それを目指して取る手段は何か?
アクティブバランサーではなくパッシブバランサーを使用。それでさらにパッシブに近い仕様になる。
パッシブトーンだけではなく500KΩ×2のポットを通す事によって、よりパッシブ的なクッションを挟める。
信号の順番としては【PU→パッシブバランサー→パッシブトーン→バッファ→マスターボリューム】という構成になるはず。
1ボリュームで済むというのも何気に便利なポイント。ジャズベースの扱いが非常に楽になって良い。
バッファを通った後、終段でのボリューム操作になる為、絞る事による音質の変化や劣化が無くて扱いやすい。
音量を下げたい曲や場面がある際、分かりやすく活躍してくれる。
ジラウドの場合、パッシブトーンをスイッチングによって任意でスルー出来る為、音抜けやレンジに物足りなさを覚えた場合、オフにすればそれだけで結構印象が変わる。
ポットを全開にしても漏れてしまう信号がある、そこに劣化が存在している、それを実感するにもネオパッシブは実に分かりやすい仕様だと言える。
③超簡易ネオパッシブ
アクティブネオパッシブと同様、公式にそう呼ばれているのではなく今この場で何となく命名。それぐらい分かりやすい簡易ネオパッシブなのがこれ。
ノーマルの簡易ネオパッシブとは何が違うのか?
【最後にバッファを通す】っていう、本当にそれだけ。
ある意味パッシブまんま、最強にシンプルな構成。
プレシジョンベースだったら1Vo1To。ジャズベースだったら2Vo1To。
いつものあれのまま、終段にバッファを配置して完了。
めちゃくちゃ単純な仕様だが、それだけにパッシブ派には嬉しい。極端な話、0距離でバッファを後付けしたみたいなもんである。
内部はパッシブのまま、出力だけローインピーダンス。でもそれが美味しい嬉しい。
自分的にも今では一番好みな仕様と言えるかもしれない。
「パッシブバランサーならジャズベも1ボリュームで使える!」と前述したが問題があるとしたら、そのボリューム操作の妙だと言える。
ボリュームを絞るからこそ生まれるサウンド、ニュアンス、それもやはりパッシブならではの魅力、絶妙な美味しさが存在する領域。
そこを行くと、すでにローインピーダンス化されたボリュームを絞っても、淡白にただ音量が下げるだけって感じで味気ない。
よりアンプをリニアに反応させる。うるさく不快に感じるところを絶妙に隠してくれる。歪み具合の調整を分かりやすくしてくれる。
それを狙うとなると、パッシブそのままのボリューム操作の方が優れてる面が多々ある。
そこに楽しみを見出しつつローインピーダンス出力も実現するなら、この超簡易ネオパッシブが最強に美味しい。
【雑感】
こうして解説するのも一苦労。なかなか厄介なネオパッシブ。
そりゃ売るのも難しいわけだ、不人気なのも仕方ないかと頷いてしまうところがある。
一通り説明したところで得られる効果は非常に地味なもの。
ローインピーダンス出力という、そこだけを見れば特に珍しくないただのアクティブだし、パッシブトーンの美味しさで押そうと言うのも少々無理がある気がする。
魅力を伝えるのが本当に難儀な仕様だ。
だからこそ、実に本質的、実用的、そのまま実直にアクティブやってる姿がこれなんじゃないかと思う。
パッシブそのままじゃ実現できない、どうにも厳しい事をハイクオリティに実現する、余計な物を通す事なくシンプルに納める、それがどんなに価値的な方法か今だからこそ本当によく分かる。
派手だったり多用だったり、その多くが役に立たないサウンドだったり機能だったり、そんなベースの姿にうんざりしてる人ほど、ネオパッシブは輝き出すはず。
ローインピーダンス化のメリットを捨ててでもパッシブそのままが良い、やっぱりそれが一番だ、それこそが至上だと言うなら、それも徹底していて良いと思う。
実のところ、凄く分かる話でもある。言ってしまえばたかが9V電池。極狭なスペース。そもそも条件的に厳しい、やれる事に限界があるんじゃないかと想像。
納得のいくバッファに出会えない、どうしても電池を載せたくない、ケーブルによる劣化も含めてのパッシブ、繊細さと豪快さを実感できる世界だと認識するのも、非常に高度な感性と好みを持ってると言える。実際、純パッシブってめちゃくちゃ良い。
ただ、それじゃ実現が難しい事がある、現実的に見て厳しい事がいっぱいある、もっと違う世界を見てみたいとなった場合、そこはやはり、アクティブに多くの利点があるのも間違いない。
そして、そこで濁ってしまう部分、誤解されてしまう面に堂々物申せるのが、ネオパッシブではないかと感じる。
EQによる多彩さや音作りなど、そういったところに注目するのではなく、ベースをもっと扱いやすくする、真なる多様性を実現する、その可能性を具体的に提供してくれる。
まずはちゃんとした本体があってこそ。タッチがあってこそ。アンプがあってこそ。
それがあるからエフェクターも活きる。プリアンプも活躍してくる。そして、その全てを繋げやすくなるのがネオパッシブの魅力。
話すとややこしいけど、操作性自体は単純明快、パッシブのそれという分かりやすくありがたいプレイヤー目線な仕様。
その美味しさと魅力に気付くと一気に輝いて見えるようにもなるのが面白奥深い。
本当に素晴らしいアイデアと実用性。
やはりジラウドは偉大だ。
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