オーダーメイド・底無しの恐怖と歓喜
フルオーダーとセミオーダーと合わせ、これまで五本作ってもらったことがある自分。
現物を確認できない以上、完全に博打的なのも否定できない、この世界。その熱さ喜びを知っている反面、同じぐらいの恐怖も味わっています。
使った金額で言えば、
『200万円』
「ええそんなに!?」と驚くか、「大したことないじゃん・・」と拍子抜けするかは、人それぞれ。
自分の場合、派手な木材を使用しなかったり、あまり無茶を言わない方だと思う為、それで安く済んでる面はありそうです。
とは言え、合計で考えれば、大金かけちゃったのは確か。手間も時間も相当かけてるのは、間違いないでしょう。
6弦三本、5弦二本、いずれも最高を求め、半端じゃないベースを作ってもらいました。
市場にほぼ存在してなかった楽器を所有する満足感もあったし、どれも素晴らしい仕上がりだったと自信を持って言えます。
しかし、何が恐ろしいって、
『嫌いだった4弦、しかもプレベに今はハマってる』
こんなことになっちゃってる、沼っぷり。
最上を求めてきた結果が、現在なのも確か。経験と結論を得ているからこそ、辿り着いた選択なのも間違いない。
でも、それにしたってこの流れはどうなんだと、正直、呆れます。
「4弦なんて絶対使わねぇ!」ぐらいの気概でいた多弦弾きが、シンプルなプレベにハマるとか、なんじゃそりゃと。
ジラウドのメビウスPB、聞いた話では定価16万、それを中古8万円で購入。
ずっと愛用してきた、ジラウドのブラッククラウドリミテッド(以下BC-LTD)は、全部入れれば、60万以上かけてきました。
それでも、そっちはお休み気味。今は、メビウスPBにがっつりハマってる、予測不能な事態。
BC-LTDは、このブログでも散々語ってた通り、「もうこれで終りだ!」ってぐらいの手応えで使ってきました。
2年もったメイン機など、ほとんど皆無。売っては買いを繰り返し、あれこれ乗り換え続けてきた自分。
それが、BC-LTDについては、10年間弾き続けてきたのだから、まさに驚異的な楽器。
プレベにハマってしまったとは言え、自分にとって、BC-LTD以上の5弦は存在しないと確信してるのは、間違いありません。
正真正銘、最高スペックを詰め込んだからこそ、同タイプはもう必要なし。このスタイルでの最終結論と言っても、過言じゃありません。
オーダー成功も成功、まさに最強の一本です。
それでもやっぱり起こっちゃうものなんですね。
好みの変化、想定外の事態、絶えず湧き上がってくる欲望、新たなる刺激の渇望、常に何かが起こり揺すぶられてしまうのが人生なんだなと。
本当にたった一本だけで問題ない人も当然いるかとは思いますが、自分はそうではない人間なんだとあらためて認めるしかありません。
振り返ってみればそのブレや芯のなさが仇になってきたのだろうと悲しくなるオーダーの記憶。
最上を求めたと言いつつ「やっぱりこれは駄目だったか・・」と嫌な予感が当たってきたのもオーダー実話。
妥協と言うか流されてしまったと言うか、本意じゃないことがそのまま後悔として返ってくるのが辛い。
例を挙げると、
店「このPUいいですよ!」
自「確かにいいけど俺にはどうかなぁ・・」
店「絶対あなたに合ってます!」
自「おすすめに従ってみるかぁ」
店「決まりですね!」
結果は敗北。最初は良かったんだけど不満がじわじわ溜まり最後はどうにもならない事態に。PUのクオリティ云々より好みに合わなかったのがやはり敗因でした。
やるなら好きなことを徹底的にすべき、自分を曲げちゃ駄目だと痛感。
このベース(ジラウドじゃない)について言えば、ペグもブリッジもピックガードもお任せした結果、「あれ・・これちょっと違うな・・」とパーツの選択にほぼ全て失敗したのがきつい。
クオリティ自体は素晴らしくても見た目や機能には納得しきれず。思い描いていたそれとは違ってしまったのが物凄く痛かった。
お気に入りのものに交換すりゃいいって単純に行ければ良いんですが、規格がまったく別物だとそう簡単にもいかず。
ネジ穴は残る、加工も必要になる、見た目も変わる、交換したところでトータルで良いかは分からない、とにかく面倒事の嵐です。
他にも例えば、
自「このベースだったらハムにした方が・・」
自「いや!シングルコイルで行こう!」
自「後に絶対正解になる!満足できるはずだ!」
これは自問自答ってか自爆パターン。変な意地張ったり気持ちを誤魔化したのがまずかった。「俺を貫こう!」と決意したはずが実にモヤモヤした結果になってしまったのが何とも皮肉。
シングルコイルも良かったけど相性と用途を考えたらハムの方が的確だったんじゃないか、ノイズ対策的にも満足してたんじゃないか、いまだにすっきりせず。思い切った舵取りをしたつもりが迷いまくっていたのだと反省。
他にも「弦間は広い方が本当は・・いやこれは弾きやすさ重視!狭くしよう!」ってのも失敗したり、愛機BC-LTDにしても「あえてプリアンプなしにする!全て俺の手で音を作る!」ってはずが結局はプリアンプ載せてもらったり、そんなことの繰り返し。
振り返るとどうにも苦い経験と記憶ばかりが残ってきたオーダーメイド。
フレットレス、フレッテッド、5弦6弦、アコースティック狙い、そうやって節操なくバラバラに作ってもらって分かったのは、
「徹底的に一つのスタイルを高めるべき」
ブレんじゃねぇってことですね。
アンソニージャクソンのコントラバスギターなんかは本当にその極致。やりたいこと求めていることをハッキリさせる。形ができたら後はそれをひたすら高めていく。
一回のオーダーに全力を込めるのが当然だとしてもそれ一本で終わりだとは思わない方がよい。常に先がありそれを追求していく覚悟をすべき。
そのためにブレない芯、絶対の柱の確立が必要になる。
一本完成させるだけでも大変なのにあれも欲しいこれも欲しいで様々手を出すのは本当に厳しい。
市場に存在しないものを作るから輝くのがオーダーメイド。だからこそ的を絞らないとボヤけてふやけて何もヒットしない可能性も高い。
全て1からやっていくほどの熱量も欲望もないなら色とパーツだけ選ぶぐらいが無難。そこだけ決まり事にするだけでも絶対違う。
沢山の楽器を所有したりオーダーで作ってもらって理解した事実、
こういった大手のとんでもないデータ量、研究量、そこから導き出された回答ってやっぱり凄い。
長年支持されていたり現場で活躍しているものには絶対理由がある、それだけの研究がなされ途方もない投資もされているのだと思い知りました。
実用性高くて当たり前を本当にやってのけてるのが見事。
それが分かっていても尚、この世に欲しいものがない、まったく満たされない、自分自身のみに特化した楽器が欲しい、どこまでも独善的に徹底的に追求していきたい、失敗上等、それが糧になる理想の肥やしになるんじゃボケ!って病気な覚悟があるならやっぱりオーダーメイド。
BC-LTD、メビウスPB、これらはジラウドさんが出した答えに手を出しての成功とも言えます。本気のフルオーダー、一から全部新しいことを突き詰めていくのとはちょっと違う。
裸そのもの一歩目から始める道は果てしなく遠い。世にないものが最初から完璧に完成してるとかそんなオーパーツなんか求めるのは非現実的。
作っては弾いて作りまくっては弾きまくり、そうやって突き進むしか道はない。
ゆえに最初の一本で諦めちゃつまらない。そこで終わっちゃその程度のもん。他人が出した答えに逃げ込み安心するなんて許されない。
オリジナルを確立したいのであれば恐ろしいほどの痛みも後悔も覚悟すべき。それすら感じない熱と狂気を身に宿している方がいい。
単純な好きってレベルを超えたドス黒い執念も必要。
『覚悟と歓喜と絶望のオーダーメイド』
また手を出したくなってきた危険なこの世界。ジラウド、プレベ、アンソニージャクソン、それらを自分なりにドロドロ煮込んだ一本が欲しくなってきた次第。
ちょいと夢見たくなってきました。
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