ネックと反り
ネックは頑丈で真っ直ぐであるべき
意外と賛否が分かれそうなのが、ネックの反りについて。
順反り、逆反り、どちらにも利点が存在しそうです。
ただ、そもそもの問題、設計を考えてみると、まずは完璧に真っ直ぐである方が理想的、それが前提であるべきではないかと思います。
フレットが打ってある位置、ピッチについて考えてみても、露骨な反りを条件に作るのは変かなと。
となれば、ぐにゃぐにゃ反って貧弱、トラスロッドもろくに効かない、調整不能なんてネックは論外でしょう。「
反りもなく真っ直ぐ」というスタート地点が存在している方が、良いに決まってますよね。
4弦の時点でさえ、80kg前後にもなる張力がかかってるのが、ベースのネック。狂いがない、強靭、安定してるに越したことはありません。
反らないネックは無い
「真っ直ぐであるべきだ!」と前述しましたが、これも一つには理想論と言いますか、現実はそう甘くないから困ります。
乾燥しすぎてれば、ネック(指板)は縮んで順反りになり、湿度が高すぎれば、膨張して逆反りに。
例えば、ネック材はメイプル、指板はエボニー。強度も密度も全く異なる、この組み合わせ。変化の比率が異なれば当然、それだけの影響が出るはず。
だからこそ、きちんと管理された材であるべき、落ち着いた安定した材が使われているべきでしょう。
今時はそうそうないと思いたいですが、ガンガンに暴れまくるネックに当たると、ま~、酷い目に遭います。
元々の乾燥が甘いんだか、管理が劣悪だったのか、そういう無神経な物の場合、とんでもない反りを起こしたり、使い物にならなくなってしまう可能性があるから怖い。
これは本当、値段が高いからと安心できる話ではありません。実際、定価20万を超えるような楽器でも、何本か酷い目に遭いました。
超トラ目で良さそうなネック+ウェンジ指板の組み合わせ。スペック的には大満足だったはずが、順反りしまくりでどうにもならず。
思い出深い一本でもあったんですが、自分の手には負えず、手放しました。
他にも困ったのは、アメリカ旅行の際に購入した、定番の有名なベース。最初はもうほんと、最高の買い物だったとウキウキ、超お気に入りで弾いてました。
ところが、徐々に反り始め、どんどん超順反り状態に変貌。最終的には、調整不能な状態に陥り、腕利きのリペアマンでも匙を投げる悲劇。
高級だろうが何だろうが、ネックの反りとは無縁とはならず。50万オーバーの楽器だって、当たり前のように反るものだと痛感。
無管理でビクともしない個体を手に入れられたら、それは本当に運が良いか、相当な目利きと言っていいんじゃないかと。
グラファイトネックだろうが、極端な温度変化や経年変化を積んでいけば、どうなるかは分かりません。
湿度などの影響を受けづらいとは言っても、不老不死みたいな期待をするのは、ちょっと違う気がします。
そう考えると本当、
『ネックは反るもの』
こう認識した方がかえって、気は楽かもしれませんよね。
反り方にしても、素直に綺麗に反ってくれるかどうか、その辺でまた話が違ってきそう。楽に調整できるかどうか、短時間で簡単に済むか、そこが凄く重要な問題ではないかと思います。
どんなに豪華だろうと、超強度であろうと、反って直らないんじゃ、長く実用するには苦しい。優れた楽器、道具としての条件を満たしているかは、微妙な感じになってきそうです。
弦の張力を完璧に揃えるのは難しい
完璧にストレートなネックの実現が難しい理由として、
『弦の張力の違い』
これも大きな問題として存在。
イメージ的には、低音弦の張力の方が強そうな気がしてしまいますが、データ的には明らかに、高音弦の方が強くなってしまうようです。
例えば、各弦の張力を揃えようとした、ダダリオのベース弦を参考にすると、
・1弦 050. 約23kg
・2弦 067. 約23kg
・3弦 090. 約23kg
・4弦 120. 約22kg
こんなゲージのセットになる様子。
驚くべきは、4弦-120という太さ。これってもう、ローBのライトゲージですよね。ここまで太くしないと張力が合わないとは、ちょっと衝撃的。
これでは、レギュラーゲージじゃどうしたって、高音弦側の方が強いことになってしまうでしょう。つまりは、高音弦側の方が張力がきつい、高音弦側の方が順反りしやすいと考えられそうです。
低音弦側と明らかに異なるのだから、真っ直ぐなネックを保つのも、それだけ難しいことを意味してそう。
生きているが如く、環境によって変化するのが木材。パーフェクトであることを前提にするのは、そもそもが難しい。
弦張力を揃えたからと言って、それが弾きやすいか、好みかは分からない。揃えたからって、理想的に反ってくれるのかどうか、それも不明。
「ネックは真っ直ぐであるべき」と最初に言っておいてなんですが、完璧なそれを求めるのはやはり、あまり現実的ではないと思うのが本音だったりします。
安定させたいなら湿度の管理はしておきたい
「細かいことなんかどうでもいい!」ってタイプの人もいると想像しますが、できることであればやはり、実現可能な範囲で管理、調整をしてあげた方が良いのは、間違いないでしょう。
自分のこれまでの体験からすると、
『湿度50%前後』
これが良い感じに落ち着く印象があります。40%まで行くと低い。60%を超えると高い。50%からプラスマイナス5%ぐらいが良いかなと。
それかまぁ、よほど極端に低いか高いのでもない限り、一定に保たれてさえいれば、それでも良いのかもしれません。
55%ぐらいでも、高いと言えばそんな感はあるので、もうちょっと低めでもそのまま安定、維持していれば、そこまでの問題は起きないことも考えられます。
よく言われていることですが、
「人間が心地よい空間」
これが一つの正解だとも思いますよね。
極端な変化もなく、楽に過ごせる空間であれば、自身にとっても、楽器にとっても、大きな問題なく過ごせる目安になるのかも?
順反りか逆反りか調べる
この話をするのが遅いだろって気もしますが、その是非についてはまぁ、とりあえず置いておきましょう。自分の場合ですが、必ずベースを普通に構えている状態でチェックするようにしています。
よく、色々な角度から見たり、細かく神経質に確認している写真などがあったりしますが、あれについてはちょっと疑問を抱くところも。
何故かって、
「弾く時に狂ってたら意味がない」
何をもって正確か、真っ直ぐか、おかしなことになりますよね。
どんなに真っ直ぐに調整したつもりでも、いざ構えた時にイメージと違うのでは、困ってしまいます。
実際にベースを弾く構えを前提にした上、そこでベストな結果を得られるようチェックした方が良いんじゃないかと、自分は考える次第。
具体的にどうチェックしているか?まずベースを構え、1フレットを押さえ、次に最終フレットを押さえます。
この際、最終フレットは右手の小指で押さえるようにして、ちょっとストレッチして親指か人差し指で、12フレット辺りを押して調べるのがポイント。
これで露骨に隙間があるようなら、順反り。全く隙間がない、弦とフレットが完全にくっついちゃってるような場合は、逆反りと判断。
順反りならトラスロッドは締めて、逆反りなら緩めます。
そして、次のチェックについて。また同じように1フレットを押さえ、今度は12フレットを小指で押さえるようにします。
ここで隙間があるか、それともくっついてしまっているか、同様に確認。各弦のチェックすることをおすすめします。
これで厳密に完璧に調べられるわけではないのと、厄介な反り方をしている場合、該当しなくなってくる可能性がある為、徹底的に向き合うのであれば、これはやはり、腕の良いリペアマンや職人さんに見てもらうが吉。
「12フレットにあまり隙間はない。でも7フレットだと超隙間あるんだけど・・・」
こんなネックは、ちょっとやばいかもしれません。
トラスロッドの調整だけで済むかどうか、自己判断に自信がないなら、素直にその道のプロに見てもらった方が賢明。
と言うか、自信があってもプロに判断してもらった方が、まずは無難ですね。
結局、真っ直ぐがいいのかどうなのか?
自分の好みを言うと、
「ほんの軽く順反り」
これが好きですね。
ローポジションにおける弦振動。その振幅というのは、非常に大きいもの。
だからこそ、その分の余裕が欲しい。弦がより自由に振動できた方が、音も太くなると感じます。
この場合、前述のチェック方法で言うと、
・1フレットと最終フレットを押さえた際、12フレット辺りに僅かに隙間があるようにする
・1フレットと12フレットを押さえた際、7フレット辺りにほんの僅かな隙間があるようにする
こんな感じの調整になりますね。加えて、ブリッジの駒を少し上げ目に調整すると、弾きやすさと鳴りと、非常に良い感じに仕上がってくれる印象。
逆に、逆反りネックに駒をベタ下げって状態にすると、音はかなり痩せる感じがあるかなと。または、順反りして弦高が上がった際、駒だけを下げてしまうというのも、良い印象なし。
極力、駒は動かさないようにして、まずはネックの調整から入るのを基本にしたい。その際、とりあえず、真っ直ぐにできることを前提にもしたい。
そこから自分の好み、スタイルに合った調整をしていきたい。
厄介なネック反りの当事者になってしまった場合、これはもう、繰り返すようですが、その道のプロに確認してもらい、お任せしちゃった方が良いでしょう。
今の世の中、【PLEK】なんてシステムもあったりしますし、具体的で精密な調整に興味がある人だったら、一度は体験してみる価値あり。
びっくりするぐらい、楽器が甦る可能性だってあると思います。
後はまぁ、逆に残酷なことを言うのであれば、苦労を強いられる楽器なんかには、早めに見切りをつけた方が良いとも思います。
それか、その苦労も含めての愛機に仕上げちゃうのも、一つの道。
かの有名なジェームス・ジェマーソンなどは、とんでもない順反りのネック、超高い弦高も武器にして、自分のサウンドとグルーブの素にしていたとも考えられます。
万人にとっての正解が、自分にとっても正解とは限りません。果たして何が正解なのか、それは自らの試行錯誤から見つけていくべき。
そういう意味では、弦のゲージも個別に選べればなぁって、思うところでもありますね。ネックの反り方に合わせ、ゲージを選択するなんてのも、面白いかもしれません。
今現在、自分のメインのゲージは、125+105~045。5弦ローBが130ではなく、125ってのがミソ。
で、欲を言えば、もうちょい弄ってみたいのも本音。前述した、張力を均一化したダダリオ弦とか、やっぱり興味湧きますよね。
マルチスケールの楽器なんかも増えてはいますが、自分には合わなそうな為、弦の選択によって詰めていけたら楽しそう。
バランスドテンション弦、もっと選択肢が増えてくれたら嬉しいですね。ネックの反り方や寿命にも関わってくるのか、非常に興味深いです。
DADDARIO EXL170BT BALANCED TENSION Light 45-107
DADDARIO EXL160BT BALANCED TENSION Medium 50-120
オリジナルマガジン
上達に悩んでる、退屈さに負けそう、何かヒントが欲しい、もっと捻くれてみたい、疑問も持ってみたい。
意味不明な思考、よく分からんけどアイデアが欲しい、たまには真顔になりたい、とにかくベース話に触れたい。
そんな方に読んでいただきたい、オリジナルのマガジン始めました。
関連&おすすめ記事