小さく太い音を
基音という存在
『太い音』
この定義も感覚も実は曖昧なもの。
何をどう持って太い音と言うのか難しいのも確か。
そこで今回、物理的な面から考えてみたいと思います。
ベースという楽器は倍音が豊富なもの。
しかしそれと言うのもまず、
『基音』
これがあってこそ、それが元になるべきはないかと考えます。基音がしっかり出ている方が当然、それだけ低い帯域が出ていることにもなるでしょう。
4弦の開放で言えば、約40HZにもなるかなりの低音ですね。5弦にいたっては約30Hzという、耳で聴くようなところではなくなってもきます。正直な話、縦振動で弾こうかなんだろうが、この帯域をちゃんと再生するのは厳しいのが現実。相当なクオリティのアンプシステムがなければ、まずまともに出てきません。
スペック上は再生できるようにできていても、立ち上がり悪く音が団子になっていては意味がない。いかに重低音をキレ良く再生できるか、実用的なものにすることができるか、アンプの責任は重大です。
そしてもちろん、それをコントロールするのはプレイヤー側であり、タッチから音づくりから何から、相当な研究と修練を積んでいく必要があるでしょう。低音に関心がなくシステムもタッチも悪い場合、下手すると一生ベースの音を知らず、そのまま過ごすことにもなりかねません。
倍音ばかりを目立たせる弾き方の疑問
以前から話していることでもありますし、今回のタイトルでもあるこの問題。
「太い音を出すぞ!」
なんて頑張れば頑張るほど、基音は目立たなくなってしまう可能性がある。つまりは太い音から遠ざかっていくかもしれないから難しい。弦が豊かに振動した方が音量は大きくなりますし、それだけ音も太く聴こえるでしょう。最初の方にも話したことであり、それが基本という認識にも変わりはありません。
ただ問題は、その気持ちが行きすぎて弦が不自然にたわんだり暴れたり、さらに極端になるとフレットにぶつかってしまったり、そういった事態が起こること。ベースの基音はただでさえ再生が難しく、立ち上がりを良くすることも至難の業。にもかからわず、それをより小さく目立たなくしてしまうのでは完全に逆効果。
頑張って太い音を出そうとしているのに、実際やっていることは反対。張りきるほどに音は潰れてしまい、低い音が出てこなくなるという皮肉。かえって低い帯域をカットするような弾き方になってしまうわけですね。第二回で話した『怒鳴り声みたいな弾き方』とはまさにこういうものかなと。
スタイルや好みの問題と言えばそれもそうですが、しかし、意図せずそうなってしまっているのだとしたらそれはやはり、ちゃんと1から見直した方が絶対に良い。力任せだとなかなか綺麗に基音も倍音も出てこないから難しい。
派手なアタックや煌びやかな音色を求めるのも良いですが、そればかりというのもベースとしてはちょっと寂しい話。
弦を綺麗に確実に振動させる
とにかく弦を暴れさせず、綺麗な倍音構成で鳴るように弾く。それを実現できる良いタッチの基準をひとつ考えるのであれば、
『ピアニッシモで良い音を出す』
これが一つの理想であると感じます。
要は、
『ものすごく小さな音でも太く充実した音を出せる』
ということですね。
ただ単に小さく貧弱な音は誰でも出せますが、ごく小音量でもまったく問題なく太い音とグルーブを実現するのは並大抵のことではありません。
純粋な弦振動によるディープなサウンド、本当に低く太い音を手に入れたいのであれば、自然とここに行き着くのではないかと思う次第。これさえできるようになれば、音を太くするのも音量を上げるのも自由自在になるはず。凄まじいレベルのタッチコントロールが身に付いていることにもなるでしょう。
これは「頑張らない」とか「鍛えない」という話とは違うものですね。そこは勘違いしないようにしたいところです、脱力とは集中力のない手抜きや惰性を意味するものではない。
そしてもちろん、
「ぶっとくしてやる!」
「思いっきり弾いてやる!」
「パワーで勝負だ!」
こういう力任せな思考・意識ではたどりつけない領域です。それをさらに求めるからこそ、小さな力のコントロールもできている方が良いとも考えられます。
めっちゃくちゃ難しいですが、力の抜けた海外のトッププレイヤーなどを見ているとやはり、このピアニッシモのタッチコントロールというのが非常に重要であると痛感しますね。
・いかに脱力して自然に弾けるようになるか?
・いかに弦を綺麗に振動させるか?
・いかに無理をせず力強く音楽的に演奏するか?
この実践を心掛けていきたいところ。
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