パッシブベースと上達の思い出

パッシブベースと上達の思い出

音楽学校時代の敗北感

 

メインで使っていたのはアクティブ

 

音楽学校に通っていた当時、完全にアクティブのベースをメインに使っていました。

 

アクティブ至上主義といかないまでも、

 

「もうパッシブとか時代遅れだろ!」

 

ぐらいには思っていたかもしれません。

 

多機能な方が色々なことができるしインピーダンスの面でも有利。

 

「わざわざ非効率な楽器選んでどうすんだよ!」

 

なんて息巻いていたような気もします。

 

しかし結局、遊びで買ったバッカスのジャコモデルみたいなやつが一番評判が良かったり、実際に結果も出ていたのが何とも悲しい。

定価で言うと20~30万はするものばかりの中、新品5万円ぐらいで買ったパッシブジャズベの方が圧勝しちゃってた現実。ま~、ショックでしたね。

 

その結果も今でこそ当然だと思いはしますが、

 

「アンチフェンダー」

 

これを公言してた人間としては素直に認められるものではありませんでした。そのバッカスにしても、ジャコが好きでなかったら絶対に使ってなかったでしょう。

安いから買った、フレットレスだから手を出したものの、パッシブを弾き続ける気なんて心底皆無でした。

 

パッシブ使いの仲間達に嫉妬する

 

アクティブをメインにしていた一方、ずっと悩んでいたことがあります。

 

「くそ・・こいつ良い音出しやがるなぁ・・・」

 

そう思ってた仲間はみんなジャズベを使っていたり、パッシブにこだわっていたり、そこに凄くモヤモヤしていました。

先生は先生で、ごく普通のアメスタのジャズベとかで強力な音を叩き出します。それで当たり前のように仕事までしてるのだから困惑。

 

ベースマニア気取ってたり上手いつもりでもいた自分。

 

「人と同じなんか嫌だ!」

 

こんなことをずっと考えてました。

 

しかし現実は厳しい悲しい。個性派を気取ろうとした自分の方がバンドでは埋もれてしまう。存在感もまったく発揮できず、それがとにかく悔しかった。

アクティブベースのメリットを本当のところでは理解していなかったり、EQの上手い使い方を知らないのもありましたね。

タッチなんかもまだまだ全然意識しておらず、音作りもめちゃくちゃ下手だった自覚があります。

 

手は速く動く方でしたし、理論も真面目に勉強してました。授業で器用に色々なジャンルも弾けて「お上手」と思われることは沢山あったでしょう。

でも恐らく、その心象は良くない、心根は冷たいものだったと想像。

 

「こいつのベースなんかいいな!」

「ほんと良い音出すよなぁ~!

「あいつじゃなきゃ駄目だ!」

 

みたいに思われたことなんて恐らく、

 

一度もない。

 

自虐や謙遜、被害妄想なんてものではなく、これが事実なんだろうなと。自分でもその違和感が分かっていただけに、常に落ち込んで苦悩していました。

 

「なんで俺の音ってこんなんなんだ・・」

「高い楽器使ってるのに・・」

「練習だって沢山してるのに・・」

 

とにかく悩みました。

でも出口は見つかりませんでした。

 

「先生・・やっぱベースってパッシブがいいんすかね・・?」

 

こんな相談をしたことなんかもあったり、次第にアクティブへの疑問を抱くようにもなっていきます。

 

弾きたくなるパッシブベースとの出会い

 

四六時中と言ってもいいぐらい常に落ちこんでいた自分。そんな中、帰宅中にふらりとよった楽器店。そこで発見したのが前述したバッカス。ジャコモデルなパッシブジャズベース。

 

・フレットレス

・コーティング指板

・ラッカー仕上げ

・新品特価5万円

 

この有り得なさに負けてしまい、アンチジャズベもクソもなく即決。考えてみるとあのベースを手に入れたことが、自分の一つの転機だったような気がしますね。

 

実際、あらゆることが急激に変化していきました。

 

手にして分かったパッシブの魅力と上達の実感

 

初パッシブ初フレットレス

 

二つの意味で自分の中で初めてのベースだったバッカスのジャコモデル。

 

「弾き方でこんなに音が変わるものなのか!?」

「パッシブってこんな楽しいものなのか!?」

 

嫌って避けていただけに反動が凄かったかもしれません。感じ入ることが一気に押し寄せてきました。

ジャコが好きなのも良かったのでしょう。タッチの種類や音色が少ないプレイヤーと比較し、あれほど自在に弾き分けられる人はなかなか存在しません。

 

ちょっとコピーするだけでも本当に勉強になることが沢山あります。

「これこうやってんのかな?」とか「いやこうじゃね?」と、自然と弾き方を変えるようになっていったのが面白い。

 

・柔らかくゆったり弾きたい時はフロントPU付近やネック寄りで弾く

・歯切れのいい音を出したい時はリアPU付近やブリッジ寄りの位置で弾く

・普通に弾きたい時は両PUの真ん中あたりで弾く

 

タッチやポジションを使い分ける感覚になんとも新鮮さを覚えました。

 

周囲の反応が変わり結果も出る

 

面白いものでジャズ至上主義みたくかぶれてた嫌味な同級生も、「お、なんかやっとベースらしいベース買ったじゃん。」とか言い出したり、個人的にはこれが結構驚きでした。

 

「エレキなんかやめちまえ!」

「早くウッドやれよ!」

「楽器じゃねぇだろそんなもん!」

 

顔を合わせる度にこういうこと言ってくるような奴だったので、皮肉でなく素直に褒めたのはかなり意外でした。

フレットレス自体をあまり知らない人もいましたし、ベースでメロディを弾くってのも珍しかったのか、その辺の反応も面白い。

 

「へぇ~!面白いな!」

「ベースでそうやって弾けるんだ!」

「良い音するんだね!」

 

こうやって明らかに周りの評判も変わっていった記憶。

 

ジャズ系の先生からも、「前よりスウィングするようになったじゃん!」と褒められたりもしましたし、それだけ急激に演奏が変わっていったのを自覚できたのも凄い話。

 

学校のフェスなんかでも優勝、準優勝と取ったり、ず~っと悩み続けていた分、自分が上手くなっていく感覚をはっきり実感できたのが嬉しかった。

 

パッシブで変わっていったベース人生

 

練習はもちろん、バンドで使ってても今まで弾いていた楽器と明らかに違ったパッシブベースの手応え。

フレットレスだったこともあり、ジャズスタンダードのテーマを弾くのにも良い感じでしたし、そうやって自分の演奏にも音にも自信が生まれていきました。

 

機材に迷いがあるなら一回はパッシブで勝負してみるのがおすすめ。そうすることで凄く大きな意味が生まれる可能性があります。

大袈裟に言ってるドラマとかではなく自分の実感だからこそ語れます。

 

省エネか効率的か理に適ってるかどうかは一先ず置きたい。

 

「俺の手で音を作る!!

 

この意識が芽生えれば自然と変わっていきます。

 

自分の場合、周囲の反応はもちろん、音楽学校のイベントで優勝という結果が出たのはやっぱり大きかったですね。

盲目的に「パッシブ最高!」となるのではなく、客観的な事実としてもパッシブの強さと魅力を知れたのが良かった。

 

アクティブベースだけを使ってたのから一転、パッシブベースを使い始めたのが上達の大きなきっかけになったのは間違いありません。

その経験から言うならば、風変りなベースやアクティブのベースばかり使っていたり、パッシブ未体験なのはまずいぞと主張しておきたい。

 

特に音作りやグルーブに悩んだ場合、シンプルなパッシブベースに切り替えてみるのは絶対おすすめ。最初はきついことも多いけど、弾き続けていけば必ず変わってきます。

 

「どうにもならない行き詰まり、成長のストップを感じる日々が辛い・・・」

 

これを打ち破るための突破口になる可能性が十分あります。

 

高級ベース信仰・木目信仰の崩壊

 

ジャズベ嫌いの根っこは変わらず

 

アンチな方向から一転、すっかりお気に入りになったバッカスのジャズベフレットレス。ただ、そこはフレットレス、やりたいことに対してちょっと限界がありました。

いくら良い楽器だとは言っても、スラップをやりたい時なんかにはピンと来ません。そういうスタイルも面白いものだとは思いましたが、マーカス・ミラーとかやりたくなるとやはり辛い。

 

しかし、アンチフェンダー野郎が普通のジャズベなんか持ってるはずもなし。多弦ベースが好きだったこともあり、スタンダードな楽器への抵抗がどうしても抜けなかったのも大きい。

 

「ジャズベを買えば解決? いやいや・・」

 

って感じなわけです。

 

とは言え現実問題、所有していたベース達ではどうにもしっくりこない。フェンダー嫌いが災いしてか、楽器選び、音作りに再び困り果てることになった次第。

 

ジャズベの驚愕

 

迷いを抱えるそんな中、「そういや兄貴の家に埃かぶったジャズベがあったよな?」と思い出し、連絡を取ることに。そして「もう使わないし持ってっていいよ」とあっさり譲り受けることができました。

 

受け取ったのはフェンダージャパンのジャズベース。

何年ほったらかしだったのか分からない汚い状態。一見はそれこそジャンク品。その為、ほとんど期待しなかったのが本音。

少しでもそれっぽい音が出たら儲けもんぐらいなノリ。正直に言って、「ジャパンだしなぁ・・」みたいなのもありました。

 

そんな偏見もありありに、とりあえず家に持ち帰ってまずは簡単な掃除。そして、何の気もなしに音を出してみたところ・・・ま~、超がっかりですよ。

 

「今まで弾いてきたベースは何だったんだ!これが一番いい音しとるやんけ!ずっと欲しかった音じゃん!」

 

あまりの衝撃に気が抜けしばらく放心。

絶望と希望と両方、一気に味わう事態に。

 

遠回りと無駄遣いに気付く

 

とんでもないショックを受けたフェンダージャパンのジャズベース。自分が音楽学校へ行く前どころかベースを始める前から知っていたものなのが腹立たしく情けない。

 

要するに、

 

『いつでも手に入れる事が出来た』

 

その気になればこいつからベース始めることもできたのが凄まじい皮肉。

 

あれこれ悩んだり高いベースを買う必要もなかった、これを早くもらっていればベースの出費はバッカスの5万円だけで済んでいた可能性もあります。

フェンジャパの同モデルを買うにしても、当時の定価で7万円前後だったかという実に恐ろしい話。

 

「最初からこれ弾いてれば・・」

「こいつだったらもっと上手くなってたんじゃ・・」

 

こんなことを考えてしまうのも結構きつい。

 

「俺がやってきたことって・・」

「何が個性だよ・・こだわりだよ・・」

 

心の底から打ちひしがれました。

 

アンチフェンダー、アンチスタンダード、個性派ベーシストみたいなのを気取っていたのもここで終わりを告げることになった次第。

 

「良い物は良い!」

 

素直に認めようと。

 

ジャズベへの敗北を認める

 

圧倒的な衝撃をプレゼントしてくれたフェンジャパのジャズベ。今考えてみても「その値段は有り得ないだろ!」と言いたくなる楽器です。

ほったらかしなのにやたらと状態が安定。弦高も所有ベースの中で一番下げられる。やたら作りが良くてびっくりさせられました。

 

『ジャパン』ってのがポイントなんでしょうかね?

それも時期によって異なるのかは分かりませんが、いずれにせよ、当時の自分が所有していたベースの中で一番レベルが高かったのは確実。

 

・高級の意味ってなに?

・ハンドメイドの意味ってなに?

・派手な木目の意味ってなに?

・ラミネートの意味ってなに?

・スルーネックの意味ってなに?

・アクティブの意味ってなに?

・大出力とかハムの意味ってなに?

 

もう混乱の極み、ぐっちゃぐっちゃです。

 

作り上げたはずの価値観はいとも簡単に砕け散り、大金を無駄にしていた事実に気付いたのもショック。 

大袈裟でも何でもなく、あのジャズベとの出会いも一つの転機だったと確信します。

 

持っていた他のベースはすっかり弾かなくなってしまいました。

 

バンドで大不評だったアクティブジャズベ

 

マニア気取りオタクこじらせ大失敗

 

食わず嫌いのアンチを反省、ジャズベを手に入れたことによって変わったベース人生。ただ、そこで素直に綺麗に終わらず、再び沼にハマってしまいました。

「やっぱりジャズベースは良い!凄い!これだ!」と目覚めたまでは良かったんですが、ちょっと痛い勘違いをしてしまうことに。

 

ちゃんと認めたのはいいけれど、まだまだ未熟だったんですね。

 

「ジャズベースであれば何でもいい!」

 

こんな風に思いこんじゃった悲劇。

 

アンチジャズベからは解放された一方、どうにも抜けられなかった呪縛、

 

『アンチフェンダー』

 

これが失敗の元になってしまいました。

 

フェンジャパに感動した後、手に入れたのは某社のアクティブ5弦ジャズベース。

「これ知ってるやつなかなかいねーだろ!」みたいな見栄もあって手を出してしまったハンドメイドベース。こいつは完全に道を間違えました。

 

このベース、作り自体はものすごく良かったのは間違いありません。状態が安定してるのはもちろん、とにかく弾きやすくて素晴らしかった。

あれだけ真面目に作ってるベースはそうそう存在しないでしょう。

 

しかし大問題だったのは、

 

『パンチが全然なかった』

 

大人しく弾いたり綺麗めな曲をやるならいいんだけど、ちょっと音が大きいバンド、盛り上がったアンサンブルになるともう駄目。

露骨なぐらい存在感がなくなっちゃうのが丸分かり。

 

当時やってたバンドからは本当に不評の嵐。自分でもよく分かるだけに辛かったですね。いくら自覚があっても楽器を悪く言われて良い気分はしません。

事実だとしても繰り返し言われたら憎悪が湧くし、意固地にもなってきてしまいます。

 

「いや!それは違う!」

「これが俺の音なんだよ!

「変えちゃ駄目なんだよ!」

 

こんな感じに楽器も価値観も守りに入ろうとしました。大失敗の選択をしたなんてとても認められませんでしたね。

 

・・・高かったし・・・

 

バンドで知るパッシブジャズベの実力

 

高いお金を出して手に入れたハンドメイドの5弦ジャズベース。でもその結果は散々。しかしそれを認められるほど強くはなかった当時。

 

「絶対これは最高の楽器なんだ!」

「俺が未熟なだけなんだ!」

「間違ってないって認めさせてやるぜ!」

 

こんな風に思い込もうとしていた当時の自分。

 

ただ・・・それを完全にブッ壊してしまったベースがあります。

 

『フェンジャパの普通のパッシブジャズベ』

 

もはやトラウマ製造機な例のあいつ。

 

5弦ジャズベ君の方をリペアに出した際、バンドで使う機会があったのですが、ま~、ここで心底参りました。

あまりにもフェンジャパの方が良い感じにハマってしまう恐怖。血の気が引くぐらい真っ青な気分に。

 

・バンドに馴染んで混ざる

・自然と存在感も出てくれる

・弾いてて明らかにみんな良い感じ

・自分も気持ちいい

 

もうほんと、

 

「またかよ・・」

 

愕然としましたね。

 

定価40万円もするようなベースの方が完敗してしまった事実。こだわり気取って無駄なことをやってた現実を叩きつけられる悲しさ。

 

「ハンドメイドとか職人のこだわりって何やねん・・ってか俺って何なんだろ・・いくら無駄にしてきたんだろ・・どんだけ分かってねぇんだよ・・・」

 

絶望した次第。

 

バンドに貢献しなかった幼稚さも失敗の要因

 

フェンダーのジャズベが持つバンドでの心地よさは本当に衝撃的でした。

 

「それだよ!その音が欲しかった!」

今度からそいつ使ってくれよ!」

「アクティブなんか全然駄目だわ!」

 

メンバーからこんなことを凄い勢いで言われたのが未だに記憶に残ってます。

 

ただ、そこで素直になれる器はなかったし、バンドのために尽くすって発想も全くありませんでした。とにかく自分を通そう、守ろうと意固地になっていました。

その為、 不評なままアクティブ5弦ベースの方を使い続けることに。

 

音的には完全に負けていたのは事実。しかし自分が憧れてた存在、高い楽器だったこともあります。どうしたって敗北なんか認めたくなかった。

 

また、そのフェンジャパを避けた大きな要因がもう一つ。

 

「4弦なんか使わねぇ!」

 

これも自分の中の強烈なこだわりでした。

 

アンチフェンダーの呪縛、多弦への固執、そこからどうやっても解放されず、フェンジャパの使用は断固拒否。

折れるぐらいならバンドやめる、ベースやめるってぐらいの構え。

 

そして、ベースサウンドの手応えも方向もあやふやなまま、そのバンドは解散。 素直に使い分ければいいのに、つまらない意地を張っていてそれができなかった。

何も貢献しない、ベースとして存在する意味がない、何ともガキだったなぁと反省する実体験。

 

音楽学校時代もそうですが、パッシブベースの拒絶でどれだけ損をしてきたか、フェンダーの拒絶でどれほどのものを失っていたのか、振りかえると恐ろしい話ですね。

 

損ばかり選択していたようにしか思えません。

 

100万円ぐらい楽器に使って分かった事

 

ジラウドで知った更なる敗北

 

このブログではお馴染みのジラウド。自分の今現在のメインベースもジラウド。所有ベースのほとんどもジラウドが占めています。

前項に出てきたバンドをやっていた当時、実はすでにジラウドのことは知っていましたし、たまに行っていたりもしていました。

それこそ買おうと思えば買えたのも事実。実際どうしようか悩んだこともあります。

 

しかしいかんせん未熟。タッチも耳も何もかも全てが甘かった。弾きやすい方、楽な方を求めて失敗してしまいました。

 

当時の自分の中でのジラウドは、

 

「凄いワイドレンジで派手な音がするベース」

 

これぐらいの判断しかできず、その価値にもまったく気付けずにいました。

 

「電装を変えればいいんじゃないか?PUとプリの交換で劇的に良くなるんじゃないか?」なんて安易に考え、例の5弦ベース君を持ち込んだこともあったりします。

ただ、そこで改造をお願いするに至ることはありませんでした。

 

ジラウドのMobius 5と比較したら自分の5弦ベース君、

 

オモチャ同然』

 

一気に冷めたのなんの。

 

せっかく手に入れた憧れのベースだったけどもう庇うのは無理。見切りがついて手放すことを決意。悲しい思い出だけが刻まれたベースで終わりました。

せっかく高いお金を出して手に入れたのに結果は無残。全く比較のしようがないしょぼい楽器を選んでいたのだとついに観念。

 

おまけに何が嫌だったかって、

 

『定価はジラウドの方が遥かに安かった』

 

この事実もショックで仕方ありませんでした。

 

ジラウドどころか10万円もしないものに負けてしまう高いだけのベース。

電気的に比較にならないのはもちろん、生音から何からそもそも勝てる要素なんか一つもなかった虚しさ。

 

高いから良いなんて図式は成り立たない。

こっぴどく思い知らされた次第。

 

定番のアクティブ回路に不信を抱く

 

いくらあのフェンジャパが当たりだったと仮定してもこの結果は悲惨すぎ。そう簡単に納得できるものではありませんよね。

定価10万円もしないよう量産品。それに工房系の高級なベースがあっけなく敗れるとかそりゃないだろうと。

 

「世の中どうなってんだよ・・」

「アクティブって何なんだ・・」

「高級な楽器の意味って・・」

 

もういくらでも疑いたい、価値観も崩れて当然。

 

スペック上はほとんど同じ。フェンジャパも5弦ベース君もジャズベースタイプ。ボディはアッシュ。メイプルネックにメイプル指板。

本体のスペック的にはほとんど同じにもかかわらず、それがどうしてこうも音が違ってしまうのか?評判から何からなぜ安い方が勝ってしまうのか?明らかに作りの良い方がなんで音で惨敗するのか?

本当に不思議でした。

 

「アクティブは効率的!」

どこでも安定して使える!」

「レンジが広くて抜けてくる!」

「ジャンル関係なく幅広い!」

「とにかく便利で扱いやすい!」

 

こんなことがよく言われている世の中。

 

そんな価値観、先入観、常識、

 

全部崩壊。

 

何が正しいんだか良いんだか分からなくもなりますよねそりゃ。

 

度重なる失敗を繰り返し結論を出す

 

愚かなもので、それでもま~だ学習しきれなかったわたくし。アクティブの6弦ベースとかにも手を出したり、表面的な多様性や利便性を求めていました。

で、例のごとく、これまた大失敗。大して長くも使わず愛着もなく手放すことの繰り返し。

 

音楽学校にも行きました。

100万円ぐらい楽器にかけました。

遠回りしまくりました。

 

それでようやく気付いた結論。

 

『楽器はシンプルでいい』

 

迷ったらこれに尽きます。

 

学習したことと言えば、

 

・変な形してたり凝った物は失敗する可能性が高い

・フェンダーとか定番のベースを侮ってはいけない

・形は同じようでも全然鳴らない楽器もある

・トラ目とか木目にこだわっても無意味だった

・あれこれ接着剤で張り合わせた楽器は必要ない

・変なアクティブなんか使うぐらいだったらパッシブの方がマシ

・むしろパッシブの方が遥かに良い可能性がある

・シングルコイルだから音が細いなんて事はない

・使えない音が100個あるより使える音が一つあればそれでいい

・ジャンル関係なく弾けるかどうかなんて本人次第

 

後悔しまくってようやく少しは賢くなれた気がします。

 

楽器を始める前から知ってた、最初から手に入れることもできた、そんなベースが手持ちの中で断トツで良かったのが現実。

そんなもんだから、当時買ったベース達はもう手元に一本もありません。

 

遠回りしまくってお金も無駄にしまくって振り出しどころか、それ以前に答えがあった実に馬鹿馬鹿しいお話。

悲劇と言うか喜劇と言うか、もはや言葉では表現できません。

 

思い出すと泣けてきますねこれ。

 

ジラウドOPBの衝撃とトラウマ

 

縦振動のタッチ

 

この研究こそがこのブログの主題と言っても過言じゃない。ジラウドの福田さんに教えてもらったその衝撃と言ったらありません。

実際に習って研究を始めてもう軽く10年以上になりますが、いまだ完成になど至らず先はどこまでも長いと痛感します。

ベースは本当に奥が深い。そしてもちろん、それだけ面白い楽器だと実感する日々です。

 

ただまぁ、ここだけの話、縦振動のタッチとの出会いとそのショックを考えると、「明るい希望に溢れてる」とか「夢中で楽しく取り組んできた」って感じでもないんですよね。

 

最初はどちらかと言うと、

 

「トラウマ」

 

この部類に入る体験でした。

 

ジラウドのパッシブ開発への疑問の思い出

 

究極とも言えるラックプリアンプ【JFDT-HA】がジラウドから発売されてから程なくのこと。完全パッシブのOPBとジャズベが発売されることにもなったと記憶しています。

 

しかし当時、この発表は自分の中でどうも腑に落ちないものでした。

 

「あんな凄い音出せるのに?」

「今さら何でパッシブ?」

「わざわざ性能落とすの?」

 

こんな反感すら持ったのが本当の話。

 

例の5弦ベース君をまだ持ってたか手放したか、時期についてはちょっと曖昧になっていますが、とりあえずジラウドを絶対視するようなことがなかったのは確かですね。

同社のアクティブベース、その圧倒的なサウンドに惹かれることはあっても、OPBみたいなパッシブの方には興味が湧かない。試奏なんかもまったくしませんでした。

 

パッシブやフェンダーへの抵抗は薄れつつあった一方、

 

「今は絶対6弦ベースの方が欲しい!」

 

この欲が出ていたこともあり、パッシブ4弦を求めることなんて皆無だった次第。

 

OPBは全然良くなかった

 

ジラウドに遊びに行ったある日。当たり前のように同社のアクティブベースの試奏をしていた際のこと。

 

「あれ?縦振動のタッチって教えてなかったっけ?」

 

と福田さんにたずねられ、「・・え? なんですかそれ?」とちょっと困惑した記憶。

 

そこで初めて今回のタイトルにもあるOPBを弾くことになりました。

いわゆる『オリジナルプレシジョンベース』。今プレベって呼ばれてるやつのさらに前のスタイルのベース。実にシンプルの極み。パッシブそのもの。シングルコイルPUが一発。

故に、小僧の身では魅力なんか全然感じませんでした。試奏なんて全くする気にもならなかった楽器。

 

実際、音を出してみても、

 

「うわ、なにこれ最悪・・」

「ぜんぜん良い音しないわ・・」

「古くさ・・・」

 

ガッカリどころではなく、もはやムカつくレベル。

 

「なんであんな凄いベース作れるのにこんなの出したんだろ?」

「懐古なのかな?意味分かんないな・・・」

 

首を傾げました。

 

悪かったのはOPBじゃなく根本的な部分だった

 

いくら弾いても何もピンとこないOPB。「あ~・・古い事やりたいならいいんですかね~?こういうのも?」なんて感じに福田さんにお返ししました。

ま~ほんと、「こんなベース絶対必要ない!」って印象しかありませんでしたね。「何やってんだよジラウド」「一気に魅力なくなったわ」と失望までしていたかもしれません。

 

そして、人生を揺るがす瞬間がやってきました。おもむろに福田さんがそのOPBで音を出したところ、

 

「ブンッ!」

「ドンッ!」

「バンッ!」

 

これが全部、

 

同時に聴こえる

 

そんなサウンドが飛び出てきて超絶驚愕。

 

今まで聴いたことのない低音、アタックの固まり、エネルギーの集合体。目の前で起こってる全く別次元の出来事にひっくり返りそうになりました。

あの音を言葉だけで表現するのは不可能。とにかく低音も一切の遅れなく全てが同時に出てくるのが完全に意味不明。

 

自分が再びOPBを持って弾いてみると、

 

「ボゥ~ン、ボゥ~ン」

「ゴイ~ン、ゴイ~ン」

「ぽへ~ん、ぽへ~ん」

 

こういう情けない音しか出ないんです。

 

ところが福田さんが弾くと上のようなことになってしまう。別次元のベースサウンドが飛び出てくる。何が起きてるのかさっぱり分かりませんでした。

 

「なんか隠しスイッチでもあるんじゃないの?」

 

疑ってしまいましたね本当。

 

太い音を出す為にタッチの研究に目覚める

 

いくら疑おうと現実は残酷。OPBにも福田さんの手に種も仕掛けも何もありません。

 

ただただ、

 

『タッチの差』

 

この事実を突きつけられ思い知ることに。

 

そこでようやく分かりました。

 

「なぜジラウドがパッシブを作ったのか?」

 

回路を気にするだけでは決して至れない領域、違いを実感するため、ベースとより深く向き合うために作ったのだと理解。

 

それと同時に、

 

「俺、ゴミじゃねぇか・・」

 

落ち込み泣きそうになりながら店を後に。

 

今思い出してみても、あんな悔しく絶望的な気持ちになった体験はなかなか存在しないですね。「俺はベース上手い!」なんて調子に乗ってたところもあっただけに、その反動が凄まじかった。

 

なんと言いますか、まるで楽器を始めた頃のような、

 

『純粋で綺麗な心』

 

これを取り戻した気もします。

 

この体験があまりに衝撃的すぎたゆえ、基礎の見直しをすることになったのは当然、縦振動のタッチの習得に本気で挑むことを決意しました。

 

縦振動のタッチの習得を目指し環境を変える

 

頼ったのは結局、本家のプレベ

 

縦振動の実感をするにはジラウドのOPBを弾くのが一番分かりやすい。あれを弾いて何も分からないってことはまず有り得ません。

とは言え正直、それだけのために20万円クラスの楽器を買うのは厳しいのも事実。自分の場合、まずは普通のプレベで練習を開始しました。

 

でまぁ、これまた皮肉と言うか、このプレベもフェンダージャパン製と来ました。しかも人様からの頂きものなのが何とも複雑な心境。

 

要するにタダ。

 

自分で選んだ楽器がことごとく駄目だったのに対し、定番を弾くことが一番の練習、成長も実感できた悲しい事実。それがバンドでも強かったりするからまた辛い。

 

100万円以上かけて学んだことは失敗ばかり・・・

やっぱり言ってて悲しくなりますねこれ。

 

弾き方の違いが分かる環境作りが大事

 

「アクティブは駄目!パッシブだからいい!」と考えるのはちょっと待った方がいい。それはこのブログでよく話していることでもあります。

「パッシブがいい=無策でいい」なんて話ではなし。それを活かせるシステムを持っているかどうか、そこをちゃんと考えたい。

 

フェンジャパのプレベでタッチを鍛え始めた後、古いフェルナンデスのOPBを手に入れた自分。それを利用した練習と積み重ねがあって今があると確信します。

 

しかし、こいつがなかったらその効果も大して期待できなかったかもしれません。

 

【JIRAUD JFDT-HA】

 

ジラウドが作った最強プリアンプ。

 

パッシブ楽器をしっかり弾くとこんな凄い音が出るようになるのか、それが本心から分かったのはこのHAのおかげ。

アンプシステム、練習環境の見直しを本格的にやったからこそ、パッシブの性能をフルに発揮、その素晴らしさを実感できたのは本当に大きかったですね。

 

これでちっこいアンプだけで練習、インピーダンスもアンマッチングも起こしてるとかだったら、タッチの差なんかろくに出ません。いくら弾いたって何も面白くならなかったでしょう。

練習して上手くなるから楽しいのであって苦行なんか積みたくない。成果を全然感じられないんじゃいつやめたっておかしくない。

 

縦振動の練習をする場合、低音の出方やその量感が分かりやすいよう、とりあえずは楽器本体のトーンを0にするのがおすすめだと言えます。

どう弾いたら音が太くなるか?どうしたら立ち上がりが良くなるか?それを意識して一音一音じっくり弾いていきたい。

 

ただ、前述した通り、ここでアンプが酷いと色々悲惨。そもそもろくに低音が出ない、モワモワこもった音が出るだけ、いくらやっても退屈が続くだけ、何したって大した違いが出ないんじゃやってられません。

ブーブーモーモー言うだけでは良い積み重ねにはならない。自分のタッチで音が太くなる実感を得られてこそ、取り組む意味も価値も出てきます。

高速な特性のアンプがあった方が効率は格段に上がります。

 

と言うかそうじゃないと本当、

 

「意味がない!」

 

断言しちゃってもいいでしょう。

 

変化が分かるから楽しい。上達も実感しやすい

 

ろくに変化が起きない、成長を実感できない、何やっても面白くない、そんなんじゃすぐ飽きちゃって高められない。

変にこじらせたパッシブ信仰みたいなのを持っちゃうことには反対。ちゃんと再生できるシステムを持っていると認識も世界も変わります。

「パッシブが良い!パッシブが絶対!パッシブこそ真実!」こんな感じに盲目的になったり思考を停止してしまうのは推奨できません。

 

「せっかくパッシブ弾くなら良いアンプで鳴らしたい」

 

これが絶対おすすめ。

 

縦振動はもちろん、タッチコントロールの楽しさを実感したいのであれば、それに適した環境を整えることが物凄く大切。

逆に言えば、優れたアンプシステムや環境を知らないから楽器選びに苦労したり、タッチに対して無関心になってしまうことも考えられます。これを話している自分がまさにそうだったと痛感。

 

どんなベースを弾いてるかは言うに及ばず、普段どんなシステムに触れているか、それで自身のスタイルや行く末を左右する可能性だってあるから怖い。

今まで持っていたアクティブのベースにまったく価値を感じなくなった自分。実際、ジラウド以外のアクティブベースは全て手放しましたし、ベーアンなんか全く使っていません。

 

「もうこれじゃ無理!」

 

一切未練なし。

残酷な決断でしたが本当に正解でした。

 

タッチを鍛えて太い音を出したいなら、それに正面から向き合えるシステムを揃えるべき。「ただしんどいだけ」ってんじゃやってられません。何も面白くない。

 

良いアンプシステムの重要性

 

縦振動の練習の為にアンプを変えた

 

自分が縦振動の練習に本格的に取りかかった時のアンプシステム。

 

・プリアンプ 【JIRAUD JFDT-HA】

・パワーアンプ 【ART SLA-1】

・スピーカー 【Epifani T-110】

 

この組み合わせがスタート。

 

スピーカーについては以下のように変更もしていきました。

 

・Aguilar GS112

・Epifani T-310

・Cerwin-Vega PAスピーカー

・Bagend S15X-D

 

これ以外にも実験で頻繁に色々手に入れてはいましたが、大まかにはこんな遍歴。確実に言えるのは、ベース用のヘッドやコンボなど、見向きもしなくなっていたこと。

 

上記のシステムの場合、一般的なベースアンプと比較するとレスポンスもレンジも全く比較になりません。ちょっとしたタッチの差もニュアンスもしっかりと再生してくれます。

 

パッシブでよくあるイメージ、

 

「温かい音がする」

「レンジが狭くて丁度いい」

「音づまり感が逆に良い」

 

こんな価値観がひっくり変えるシステムが世の中には存在します。

 

理想的なフルレンジのシステムでパッシブを鳴らせば、

 

「こんなにハッキリ音が出てくるの!?」

 

驚愕すること間違いなし。

 

反応がシビアだからこそ上達を早く実感できる

 

ちゃんとしたシステムであれば無理なブーストなんか不要。パッシブでもかなりワイドレンジに凄い音が出せます。

前述した自分の失敗談のように、変なアクティブベースを使うぐらいだったらスタンダードなパッシブベースを弾くの方がおすすめ。アタックから音抜けから何から遥か上に行ける可能性だってあります。

 

高速なタッチレスポンス、ワイドレンジなシステムの場合、弾き手の粗や下手な部分がそのまま出てしまうリスクがあるのも確かに事実。

 

でも逆に言えば、

 

『上達の実感』

 

これがよく分かる、正直に再生してくれるシステムでもあるわけですね。下手が分かるからこそ練習の成果の実感も得られる。こんな楽しい話はありません。

 

自分のタッチがゴミカス同然だった分だけ、日に日に音が太くなっていくのは心の底から楽しかったですね。自然と練習にも熱が入りました。

 

ネットとヘッドホンだけじゃ分からない世界がある

 

バッカスのフレットレス、フェンダージャパンのジャズベにプレベなど、パッシブベース自体は前から所有していた自分。パッシブの良さは一応分かってるつもりでした。

でもそれはごく浅い表面の話だったんだと思います。アンプシステムを改めること知らない世界が一気に広がる、感覚も明らかに変わったと実感。

 

練習に使いまくったのは古いフェルナンデスのOPB。ジラウド製ほどではないにしても反応はやはりシビア。良いアンプシステムならタッチによって音が別物に変貌。

違いがはっきり分かるからこそ、練習の成果もそれだけ実感できる。やればやるほど自分の音が太くなる。タッチを鍛えることがめちゃくちゃ楽しくなっていきます。

 

一方、鈍臭いしょぼいシステムを使う場合、こういう感覚がまったく理解も認識もできないままになってしまう可能性があるから恐ろしい。

「縦振動のタッチ」なんて耳にしただけでオカルト視、宗教臭く感じる、タッチコントロールが信じられない、それを堂々と言える人も実際に存在するこの世の中。

それというのは実は凄く悲しい話ですよね。

 

差を実感できるものに触れたことがない。試したことすらない。教えてくれる人もいない。それをあらわしているのだと思います。加えて言うならば、酷いものが世の中に溢れている証でもあるのかなと。

 

「ベースアンプが嫌い」と記事にしたこともありますが、そのベースアンプにすら辿り着けない、音を出すのが許されない環境だけで過ごし続けるのもあまりに辛い。

ヘッドホンとシミュレーター漬けで練習するとか自分的には勘弁願いたい話。

 

環境によっては当たり前なのかもしれませんが正直、

 

『拷問みたいな生活』

 

自分はそう感じてしまうかなと。

 

あれこれ試したって実感のしようがない。何を言っても無駄になってしまう。それではタッチで音が変わることがオカルトに思えるのも無理ないことなのかもしれません

いくら良い楽器を手に入れたとしても、音の入口も出口がしょぼいのではどうにもならない。タッチによる音の差を実感したいのであれば、一度はしっかりしたシステムを体験しておくべき。

 

意識すると変わるのはこれ。 

 

『タッチレスポンス』

 

物凄く重要にもかかわらず、恐ろしいほどに放置されている問題のようにも感じる要素。

 

耳にうるさい帯域、高域がよく出てればレスポンスが良いって話ではなし。本当に優れたレスポンスを持つ楽器は低音の立ち上がりも素晴らしい。タッチコントロールによって実に活き活きと自在に反応してくれます。

この感覚が分からないままでいるのは想像以上に深刻な問題。オカルトだの宗教だの胡散臭いだの、小賢しく格好つけてないでとっとと良いパッシブベースを手に入れるべき。それを良いアンプでちゃんと鳴らすべき。

 

誰でも実感できます。

 

6弦ベース用のPUに絶望 そして・・

 

メインだったのは実は6弦ベース

 

4弦歴の方が短かったベース人生。6弦こそを主軸にしたかった自分。パッシブベースでタッチを鍛えたのは事実ですが、それをメインにすることはなかったんですよね。

今まで経験したことを踏まえ、某所にてシンプルなパッシブの6弦をオーダー。ジラウドさんに依頼してネオパッシブにもしてもらったり、より自分好みの愛機として仕上げていきました。

 

ま~、この6弦ベースは本当に良かったですね。失敗を積み重ねてきた甲斐があったと言うべきか、当時の自分にとってまさに理想の一本になってくれました。

世の中になかなか存在しないものを作ったと自慢したくなるベースです。

 

自己満足ってだけではなく周囲からの評判も良かった楽器。間違いなく高いクオリティと存在感。それで実際に仕事もしましたし、「完璧!」と言いたくなるぐらいの出来でした。

 

「やりたい事が自由にできるようになった!」

 

そんな感覚が嬉しくて仕方ない。

まさに集大成って感じの一本でしたね。

 

PUに不信感を抱き始める

 

すでにお気付きの方もいるかと想像。ことごとく過去形であるのが示す通り、現在はこのベースはもう手放しています。

レベルが上がっていったからか?自分の求めるものが過剰になりすぎてしまったのか?

ヘッドデザインをもっと考えるべきだったとか、ボディ材の選択をミスったとか、多くの不満を抱えるようになって困り果てることに。

 

何より致命的だったのは、

 

『ピックアップ』

 

セラミック系とかモダン系とでも言いましょうか?ビンテージな材料や構造とは真逆なPUだった為、タッチに対する反応が希薄だったり、それが許せなくなってしまいました。

 

良いPUだったのは確か。ネオパッシブにしたらかなりレンジも広い。6弦ベースとは思えぬスラップサウンドなどにも対応可能。ハイクオリティだったのは間違いありません。

しかし、致命的なぐらいにタッチへの反応が悪い。縦振動のタッチが身に付いていったとしても、楽器がそれに答えてくれない。

タッチを鍛え自分が上手くなるほど悪い点が気になっていく皮肉。

 

もう本当、悲劇としか言いようがありませんでしたね。弾けば弾くほど、上手くなれば上手くなるほど、どんどん嫌いになっていく感じ。

 

6弦ベースのPU探しという落とし穴

 

「このPU気に入らない!」となれば当然、別のものを使ってみることを思い付きます。もちろん、自分も本格的に検討した次第。

 

ところがまずい。

 

『6弦ベース』

 

この世界、ま~、選択肢が少ないこと少ないこと。

 

シングルコイルサイズのPUが激減するのも致命的。その条件を当てはめる時点で世の中にほとんど存在しなくなることが確定。

 

さらに言うならば、

 

『アルニコ+エナメル線』

 

昔ながらのフェンダースタイル、それが欲しい。でもありません。自分が求める6弦ベース用PUなんて心当たりが一つあるかどうか、そんな話になってしまいます。

 

オーダーして作るにしても絶対に安くは済まないでしょう。試作を繰り返したら数十万円は平気で飛ぶのも容易に想像できます。海外製になると恐ろしく時間もかかること間違いなし。

実際、最初に載ってた気に入らなくなったPUの時点で、すでにメーカー側とトラブってたりします。

平気で納期は遅れるわ、そもそも作る気があるのか疑問になるわ、意味不明な言い訳してくるわ、穏やかな気持ちでいられるわけもない事態に遭遇しました。

 

となるとまぁ、

 

「オーダーなんかやってらんねぇ・・」

 

絶望します。

 

絶対に揺るがない結論を出す

 

この一連の失敗の流れ。ある意味、自分の中ではお約束感もありましたし、「諦めてまた次行けばいいじゃん!」ってなれば良かったんですが、さすがに今回はちょっと事情が違いました。

 

「オーダーメイドでも駄目なのか・・・」

 

もう本当、心を病むぐらいに落ち込みましたね。実際、ストレスで体を壊して救急車で運ばれたり、心身共に結構な状態に追い込まれた嫌な思い出。

何をやっても上手くいかない、理想通りにならない、また無駄遣いをしたのか、精も根も尽き、6弦ベースを弾くのも他社に期待するのも全て諦めることに。

 

そして決断しました。

 

「ジラウド弾こう!」

  

もう他に期待するのは無理。もういい。もう素直になりたい。タッチレスポンスについてこれ以上の存在はありえないと絶対的に確信。もっとタッチを鍛えて上手くなりたいならジラウド以外の選択肢はない。

 

それが何らかの掲示か転機だったのか? 

丁度、ホンジュラスマホガニーで5弦のブラッククラウドを製作するという話が浮上。それが自分の思い描く理想のスペックだった為、迷わずオーダー。

 

貯金も何もない状態だったけど、

 

「これしかねぇ!」

 

人生かけるぐらいのノリだった次第。

 

ようやく落ち着いた楽器選び

 

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恐怖のブラッククラウド

 

これこそ自分の求めていた理想、ジラウドのブラッククラウド。今まで使ってきたベース、触れてきたものとは全て次元が異なりました。

 

となれば、

 

「ブラッククラウドを手に入れ全て解決!」

 

こう結論できそうなものなんですが、ところがどっこい、実際はそう簡単には行きませんでした。ここからも結構な迷走、悪戦苦闘の日々を送ることに。

今でこそ自由自在な音作りを可能にするベースになっているけれど、オーダー当初の仕様は違ったんですよね。

 

「EQには頼らない!」

「俺の手で音を作る!」

「絶対太い音にする!」

 

そんな強い意気込みの下、あえてプリアンプは載せずにバッファのみ。ジラウドならではのネオパッシブで作ってもらうことにしました。

しかし悲しいかな、自分のタッチではあまりに細い音しか出せず困惑。ある程度は覚悟はしていたけれど、現実は想像以上に過酷。

 

信じられないぐらいイメージ通りの音が出ない。次元が異なる超高速レスポンスに対応できない。やっぱりバッファだけだと音作りが厳しい。理想の音が出るどころか頼りない出音に愕然。

新しいベースを手に入れて嬉しかったのは間違いない事実。でも、演奏の悩み苦しみからは解放されず、むしろ道が遥か遠くになった感じ。

念願のPUを搭載してるのはいいけど、まさかここまで難しいとは想定せず。やはり本気のシングルコイルを使いこなすのは一筋縄ではいきません。

 

正直な話、心が折れてしまった時期なんかもありまして、一時期は本当にわけ分からなくなってましたね。

極太のフラットワウンド張ったり、弦高もめちゃくちゃ上げたり、そうやって楽器の方向性を変えようとしたり、スタイルチェンジを試みていたことがあったりします。

 

もう無理矢理にでも楽器を鳴らしてやろうとか、力任せでもなんでも太い音を出せるようになろうとか、かなり迷走したのも本当の話。

 

他責ではなく自責が芽生えるベース

  

相変わらず苦しみ続けていた自分。ただ、そうやって色々試すにしても、以前と大きく異なっていたことがあります。

 

以前の自分がよく考えていたのはこれ。

 

「楽器のせいだ!」

 

要するに言い訳ですね。

 

安易にこの方向に考えなくなり、逃げなくもなったのはブラッククラウドを手に入れてから。これが心境の変化として物凄く大きかったと実感。

 

それまでは自分に出来ないことがあったら、

 

「楽器がもっとこうだったら・・」

「なんでこう応えてくれないんだよ・・」

「このスペックじゃな・・・」

 

みたいな不満をずっと持ち続けて弾いていたわけです。それが本当、驚くぐらいネガティブなことを考えなくなっていました。

 

「もっとタッチが良ければ!」

「もっと弾き込んでいけば!」

「もっとこいつの事を知れば!」

 

こんな風に思える楽器を持ったのはこれが初めてでしたね。

 

楽器のことを信頼するようになったと言いましょうか、ネガティブな思考や発言は役に立たない、それがただの言い訳にしかならない感覚が芽生えるって凄いこと。

 

「出来ない事がある」

「至らない事もある」

 

「でもそれは自分が未熟なだけ!」

 

こう変換して素直に練習も演奏もできるようになりました。

 

絶対の愛機の誕生

 

入手からもう10年。今でもずっと弾き続けていますし、これだけ長く同じ楽器をメインにしたのも初めてのこと。これまでは長くてもせいぜい2年ぐらいが限界だったのが本当の話。

楽器に愛着も持たない方だった為、気に入らなければすぐ手放していました。軽く数えるだけでもメインベースは軽く10本以上は変わっています。

 

だから弾き込むこと(エージング)に関しても、このベースがあったらからこそ、はっきり実感できたと断言できますね。最初の音を知っている身からすると、そのあまりの別物感に笑ってしまいます。

自分のタッチが変わっていったのはもちろん、それに比例するように楽器本体の鳴りも驚くほど変わっていったことを実感。

 

宗教?オカルト?気のせい?思い込み?そりゃ新品のジラウドベース10年弾いてから言ってみろって話。

少なくとも自分はやってきたし、間違いなく体験済み。これだけ弾き甲斐があって面白い楽器は他に知らず。

 

本当に長く様々な悩みに直面してきましたが、それもすっきりしました。ブラッククラウドを手に入れたことにより、実に多くの答えが出たと確信します。

 

弘法筆を選ばずで思考停止する疑問とパッシブのすすめ

 

パッシブで使える楽器は絶対に知っておきたい

 

「パッシブとアクティブのどちらが良いか?」

 

こんな議論は個人的にはもう馬鹿馬鹿しくなっていたつもりでした。実際、このブログでもよく話してきたことだと思います。

 

「いつの時代まで続けんのこれ?」

 

こうツッコミたくなるぐらいうんざりな話。何十年やってるんだか悲しくなることすらあります。

  

しかしまぁ、こうして色々思い出してみると確実にパッシブで鍛えられてきたのだと改めて気付かされたかもしれません。

「良いアンプあってこそ!」だとも主張したいのも間違いないけど、それ以前の根本的な問題も大きいと感じました。

 

要するに、

 

『パッシブで使えない時点で何か問題がある』

 

こういうことになるんじゃないかと。

 

実用的に使える仕上がりであれば本来はそれだけ完結できます。パッシブのままで問題ないベースはそこからさらに可能性を広げることも可能。

元々がしっかりしているからこそ足すのも引くのも楽だし無理がない。

 

一方、電気的な力を借りないとどうにもならないようだと、それはもう何をしても厳しい気がしてしまいます。

特にタッチレスポンスを求めるのは絶望的な印象。いくら電気的に高速な仕様にしても生音が酷いと大して改善されないのが現実。

 

それで痛い目を見てきた実感があるからもうこりごり。「回路をジラウドにすれば最強になるぜ!」は通用しませんでした。

エレクトリックと言えど弦楽器。元々の部分がお粗末なのでは大した増幅も加工もできない。弾き方に対する反応も微妙で終わる。

 

これは声を大にして言いたいですね。

 

高級=良いとは限らないし筆は選ばないのが正解とも思わない

 

ハイエンドな方向に凝っていくものほど、タッチへの反応が悪くなっていく印象が強いベースの世界とその不思議。

それこそフェンジャパに普通に負けちゃったり、5万円前後の楽器にすら勝てなかったり、実際に痛い目を見てきました。

 

・高出力のハムバッカーに癖の強いプリアンプを組み合わせる

・ボディをガチガチに固めて鳴らないようにする

・木目とかでアピールしてとりあえず贅沢な感じに見せておく

 

こういうスタイルの楽器はもう絶対弾きませんね。

それなら本当、フェンダージャパンでいいです。

むしろそっちの方が遥かに良い可能性が十分にある。

 

自分が嫌いな言葉、

 

 「弘法筆を選ばず」

 

この言葉を使いたがる人も多いこの世の中。大体はつまらないお説教のために使ったりそれで思考停止させようとする印象。

その弘法の域にまで辿り着くにはどうしたらよいのか?その過程をちゃんと考えたり話せる人がほとんどいなかったからいまいち伝わってきません。

 

「駄目なもんは駄目!」

 

こうハッキリ言えること、判断できることも大事でしょう。

 

筆を選んでるつもりが大失敗。でも選ばないままじゃ何も分からない。

結局、頼りになるのは自分自身。経験を積んで分かっていくしかない。

誰々が使ってるからとか値段が高いからとかそんな基準で生きていくのは面白くない。

 

納得いくものをとことん選ぶ方が姿勢として自分は好きですね。 

 

長く使える愛機を手に入れよう

 

アクティブ前提の楽器には疑問を抱くものが多かったのが自分の実感。

もしそういうものしか知らないなんてことだったら絶対もったいないと考えてしまいます。パッシブ楽器と良いアンプの組み合わせを是非とも体験してほしい。

音作りに悩んでいたりグルーブについて悩んでいるなら尚更おすすめしたい。タッチを鍛えていけばそれだけベースがどんどん面白くなっていきます。

 

後は変な話、それだけ経済的になるとも思いますね。パッシブで鳴る楽器があれば10年は戦えます。それどころか一本だけで一生やっていける可能性もあるかも?

弾き込まれた楽器ってやっぱり良い。自分が成長した分だけ良い音がしてくれるのだから他を求める必要もなくなります。

 

あと数年もすれば所有から10年になる自分の愛機。アクティブで失敗を繰り返しパッシブで鍛えてきたからこそより強く確信。

 

「最高の愛機!」

 

これからまたさらに成長して良い楽器になっていくことでしょう。

 

自分が成長した分だけ良い音が出るようになってくれる楽器。そんな存在に出会える可能性が高くなる意味でも、パッシブのベースを弾いてみることを強くおすすめします。

結論としてアクティブに落ち着くにしても、とりあえず一本、パッシブの楽器を持っておくのは推奨したい。

時間が経った後、いきなりその魅力に気付くこともありますし、そんな時に大いなるヒントや助けになってくれます。

 

「パッシブだから良い」ではなく、

 

「パッシブでも最高!」

「全部そのまま出す!」

「これが俺の音!」

 

こう言えるベースを見つけておけば間違いありません。タッチも絶対に鍛えられます。

 

今日良い音がしてくれるもの、インスタントな付き合いを求めるのではなく、10年先も弾いてる自信がある楽器を見つけたい。20年後、30年後、さらに良い音がしてくれる楽器と出会えたら最高。

 

より深くベースと向き合い楽しむ為にパッシブ弾き込んでみましょう。

 

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