■本ページはプロモーションが含まれています。
一本指奏法
グルーブに悩んだら1フィンガー
メインで使うのは人差し指。
読んで字のごとく、一本の指で弾く方法。
非効率、メリットなんかないと思われそうな1フィンガー。実際、一本指のみで弾ききるのは困難もいいところ。普通に考えて、2フィンガーで行くのが正解だと誰でも思うでしょう。
しかし、グルーブに対する探究心、悩みや葛藤を持つならば、挑戦してみる価値は絶対にあります。効率云々の問題を超え、真面目に取り組むべき奏法だと自分は実感。
グルーブを求めるならむしろ1フィンガー。その方が合理的な印象すらあるのが本当の話。一本指で全部やれとまで行かなくても、そこで得られた感覚が他の奏法においても大いに役立ちます。
多くの指を使ったり高度な技巧を身に付けたり、それも確かに素晴らしい道。けれど、一度冷静になって考えたいこともある。
『奏法の複雑化』
自ら問題を難しくしてしまう、多種にわたる高度な動作を肉体に要求してしまう、それってどうなのかと疑問が湧くところ。結果、出音やグルーブに悩むはめになるのは、本末転倒と言えるかもしれません。
まずはゆっくり簡単な8ビートでも何でもやってみれば分かります。一本の指と二本の指で弾くのでは明らかにノリも音も違う。やることもやれることもシンプルになるが故、そこに違いが生まれる。
「グルーブとサウンドを磨くなら1フィンガー!」
大袈裟ではなく、心からそう思う次第。
アップストロークを入れると世界が変わる
ピックで言えばダウンオンリー。1フィンガーに対してそんなイメージを持つ人もいるのではないかと想像。実際、前述した内容はまさにその通りのものだと思います。
一方、自分の考える1フィンガー奏法というのは、それとはまたちょっと違う弾き方。爪側によるアップストロークも使用するのが醍醐味。これがグルーブ作りに大きく影響。
実音を鳴らすにしても、タッチミュート(ゴーストノート)を鳴らすにしても、たとえば裏拍にこのアップストロークを加えると、それだけでグルーブが変わってくるから不思議。
「裏を感じろ!」なんてことがよく言われたりしますが、それを曖昧な感覚に終始させるのではなく、非常に具体的に実感できるようになるのが美味しい。特に、16分系のノリを出すのに絶大な効果を発揮。
1フィンガーが上達するほどに、2フィンガーだと鈍臭く感じるぐらいにもなってきます。
一本指と言えばレイキングも外せない
2フィンガーにおいても重要な奏法。これが1フィンガーにおいてより重要、生命線にすらなってくると実感。
「レイキングとは何ぞや?」を簡単に説明しますと、『1弦を弾いて2弦に指がよりかかった後、そのままの流れと勢いで弾く』そんな感じの弾き方だと言えます。
人差し指で1弦を弾いた後、2弦を中指で弾くのではなく、人差し指のまま2弦を鳴らす。その流れのまま3弦を弾いてもいいし、それこそ4弦まで弾ききってみるのも面白い。
人差し指と中指と交互に弾くのではなく、指の動きの流れと勢いを利用。それにより、一本の指でもスムーズに高速に弾くことが可能になる。
もちろん、無理に高速に弾く必要はないし、自然な流れで効率的に音を出すことをまずは目的とした方が良いでしょう。
超テクニカルにも使えるけど、独特のノリとサウンドの為、効率的なプレイの為のポイントとしてまずは習得したい。
レイキングはジャズのウォーキングベースなどでも大活躍するテクニック。4分音符を淡々と弾くだけではなく、時にはレイキングで三連系のニュアンスや勢いを加える。
そうすることで独特のスピード感、パーカッシブなニュアンス、細かく具体的なノリが出てくるから面白い。
高音弦から低音弦へ下っていくようなこの弾き方。
研究する価値が大いにあります。
アップストロークの強化を目指す
問題点はとにかく貧弱な事
ギターチックに軽く弾くなんてことならともかく、アップストロークで充実したベースサウンドを実現するのは、困難なんてものじゃありません。
正直、不可能な印象さえあります。太い音を出すにはあまりに理に適ってない。
しかし、そこで折れてしまっては、オルタネイト1フィンガーの実用に至れない。その素晴らしい魅力を知らないままにもなってしまいます。
「いかにしてアップストロークのサウンドを強化するか?」
奏法、機材、総力戦で考えていきたい次第。
弦を持ち上げない
『縦振動のタッチ』や『太い音の出し方』の記事の方などで触れている内容と同じく、弦の振動のさせ方がとにかく重要。
「アップストローク」と言うと、指を持ち上げようとイメージしたり、それに伴う動作で弦の方も持ち上げようとしてしまうかもしれません。
でも、それでは弦はろくに振動してくれない、ボディ鳴りもPUの反応も希薄なものになってしまいます。
スラップのプルのようなサウンドを出すならともかく、なるべくなら通常のベースサウンドとして使いたい。にもかかわらず、弦を必死に真上に持ち上げようするのは矛盾、無駄な努力とすら言えるでしょう。
「アップ」と言いつつ、それそのまま弦を持ち上げるのは違う。なるべく横方向や斜め方向の弦振動を加えることが望ましい。
理想を言えば弦を垂直に押し込み、縦振動で弾きたいところですが、これは机上の空論、そもそも物理的にほぼ不可能と考えた方が現実的。挑戦すること自体は悪くないけど、あまり必死になるのもちょっと違うかなと。
後述しますが、横振動をいかに拾う楽器を使うか、それも大事なポイントではないかと認識しています。根本的にタッチが大事なのは言うまでもないけれど、それだけの問題で解決しようとするのは無謀。
縦振動に対してシビアに反応するベース + 弦を持ち上げてしまうアップストローク、この組み合わせで行くのは相当に厳しいと痛感。
過剰な溜めを作らない
強力なアップストロークを実現しようとした場合、人差し指と親指によるデコピンの要領で力を溜める弾き方も考えたくなります。指を弦に当て、ググッ!と力を入れて鳴らす、これで太く強い音が出せると期待する。
しかし、それそのままデコピンのように指を曲げたり、丸めて弾くことを主とするのは現実的ではありません。親指をストッパーとして使って人差し指に力を入れ、溜めた力を解放する、そんな弾き方をするのは難しい。
一音だけガツ~ン!と鳴らす目的ならいいかもしれないけど、やりたいことはそうじゃない。2フィンガーでは出せないタイミング、ニュアンス、グルーブのために1フィンガーを用いたい。
「16分のフレーズで使用したい!」と思うのであれば、求められるのはとにかく高速な処理。いちいち長い溜めを作って弾くなんてのは不可能。スムーズに音を繋げたいのであれば尚更というもの。
「力を入れよう!」「溜めを作ろう!」そうするあまり、肝心の出音はアンバランスでガタガタ、1フィンガーならではのスピード感が損なわれてしまう、2フィンガーの方が遥かに良いなんてことでは意味がありません。
一方、当然ながら、「指を当てるだけ」という感じで弾いたってまともな音は出てくれず。ただでさえ、爪も当たって軽い貧弱な音になりがちなのに、弦をろくに振動させることもできないのでは話にならない。
メリットが計り知れないのは確か。しかし、そのシンプルさとは裏腹に難題も山積しているのが1フィンガー奏法の厄介さ。いきなり完璧を目指してもすぐ心が折れてしまうこと間違いなし。
相当な鍛錬が必要になると考えた方が無難でしょう。
まずはダウンあってこそ
「太く長い弦をいかに効率的に弾くか?」
これは1フィンガーだけに留まらず、ベースを弾く際の基本と考えます。「効率=スムーズに綺麗に」とは限らず、乱暴にラフに弾くにしても、より強い力を生む箇所を使った方が良い。
指を短く丸めたり指先だけを動かして弾こうするよりも、第三関節・指の付け根の方を動かす意識をしたり、より強い力を自然に楽に扱えるようにすることが重要。
強いアップストロークを作ろうとするのはいいけれど、その代償として肝心のダウンの方に悪影響が出てしまうのでは本末転倒。
前述したデコピンの話ではありませんが、指を深く折り曲げ力を溜めて解放する、そうすることアップが強くなったとしても、それが本当に実用的な奏法になるのかどうかは別。
まずは違和感なく納得できるダウンがあってこそ。バランスがめちゃくちゃ、音も悪い、体力も激しく消耗、怪我故障と隣りあわせなんて弾き方をするのでは意味がない。
アップストロークのために犠牲にするのではなく、両者をいかにスムーズに繋げるか、擦り合わせを行っていくか、試行錯誤していくことにより、実用的なアップストロークが生まれると考えます。
肉厚で良い指を作る
これも基本中の基本。それだけに何より重要なポイント。
その場しのぎ、一夜漬けでどうにかなるものではありません。人体の構造上、アップストロークではどうやっても爪が当たってしまうのが宿命。
しかし、だからと諦めては先に進めない。何とかして指の肉も当てられるようにしたい。
となると必要なのは体作り。とにかく鍛錬あるのみ。練習を積み重ね、地道に指をつくっていくしかない。
爪から先に1cmも肉があるような指を実現できるとはさすがに思いませんが、弾き続けることで指の形が変わってくるのは紛れもない事実。
楽器を弾くための体、演奏するための指、それは確実に存在するもの。
1フィンガーだろうが何だろうが、楽器を弾くってことは自分の体を使うってこと。肉が足りないと思うなら肉を付ければいい。まずは体作りが第一。
一朝一夕で身に付く技術だとは考えず、長い目で見ることが大切。特殊な技術と認識するのではなく、ごく自然で当たり前な奏法として使いたい。
ひたすら練習あるのみですね。
理想を実現する為なら何でも使う
横振動を拾うPUを選ぶ
前述しました通り、アップストロークで縦振動を実現するのは、ほぼ不可能だろうと言うのが自分の見解。たとえそれが出来たとしても、とてもスムーズに繋がるとは思えず。
となると、PUの選択が非常に重要になってきます。弦の振動方向に対してシビアなPUを選択した場合、オルタネイト1フィンガーの実用はそれだけ困難になっていくと痛感。
昔ながらのシングルコイルのジャズベースはもちろん、シンプルの極致であるOPBなど、アップストロークで鳴らすのは至難の業。2フィンガーでも良い音を出すことが難しい楽器を選択するのは無謀。
では、どんなベースを選ぶべきか?
1フィンガーを実践する意味でも、先人に学ぶ意味でも、一番分かりやすい楽器を選ぶなら、まずはプレベがおすすめ。
または、磁界の広いハムバッカーを搭載している楽器でも良いですし、軽く弾いても太く抜けてくる特性を持っているとやりやすい。
アップストロークを活かしたいのであれば、様々な振動方向に対応してくれるPUを選択した方が無難。
弘法筆を選ばず!なんて言ってないで、素直に相性の良い道具を選ぶべき。達人目指すのもいいけど、その前にあっけなく潰れてしまって意味がありません。
コンプ=悪!なんて考えは捨てる
見解や好みは分かれそうですが、「コンプ=誤魔化しだ!」みたいに断じてしまうのは自分は嫌い。通した方が実用的で良い演奏ができるんだったら、べつにそれでいいじゃないかと。
もちろん、そもそもの音が貧弱だったり、まったく抜けてこない、音像がぐちゃぐちゃに潰れて遠いなんてのは論外。
しかし、大した意味もなくイメージだけで否定、拒絶するのはどうかと思います。
我々が弾いている楽器は、
『エレクトリックベース』
電気的な力を借りることに対し、過剰な抵抗を持つのは違う。
どうしても足りないところを補ったり、不安な部分の解消を図ったり、そうやってトータルで考えていくのも大事。
奏法、表現方法として成立させるポイント、立派な試行錯誤。逆に言えば、それだけ素の状態での実践が難しいのが1フィンガー。
その厳しい現実に対峙しなければならない。アコースティックを絶対視、それを正義とする価値観では色々厳しい。
理想の実現の為に必要なら、それは迷わず使うべき。
ブーストした信号をコントロールする
「ブースト」と一口に言っても、単純に音量やEQを上げろというだけの話ではなし。軽く弾くだけでも十分なサウンド、絶妙な実用状態を実現できることが重要ではないかと考えます。
そして、それをコントロールできるタッチを身に付けることが重要。アコースティック面で上手いからと言って、エレクトリック面でのコントロールが未熟なままでいいとはならないし、その逆もしかり。
アコースティックな面だけではなく、エレクトリックな要素もしっかり理解したい。やはりトータルが大事。なんでも気合根性で解決とはいきません。
「ダウンだけやたら強くてアップが貧弱・・」それでは困るわけですが、その解消を図ったにもかかわらず、奏法も意識も以前のまま進歩がないのではまずい。
・アップを強化したつもりなのにダウンの方がさらに強く出てしまうようになった....
・完全に均一になるようにしたら面白みがなくなって抜けも悪くなった....
・機材に頼らないようにしたら実用から遠くなった....
これではアンバランスな状態なんかクリアできない。
アコースティックもエレクトリックもバラバラなままでは正解なんて掴めない。単純なブーストや無理矢理な音のまとめ方では限界がある。
課題が明らかで分かりやすいからこそ、それだけ解決が困難。実用に大きな壁が存在する1フィンガー。指も電気も総動員して身に付けたい奏法。
「耳に入る音は全てアコースティック」
アンソニージャクソンのこの言葉を心に刻みたいですね。
PUフェンスを付けてジェマーソンの真似をしてみる
1フィンガーと言えば思いつくのはこの人。
【ジェームス・ジェマーソン】
プレイもサウンドもユニークの極み。フォームについてもまさにオリジナルの塊。
普通は外してしまうか、スラップがしやすいように付けてあるPUフェンス。それを1フィンガーに利用してしまうのだから面白い。
中・薬・小指をフェンスに乗せて弾くのがジェマーソンスタイル。1フィンガーを研究していると、その全てがどんどん興味深くなっていきます。
親指を弦に乗せたり支点にしても、そこで手首がふらふらしているのはいただけない。安定感を欠けば、それだけ音は細く痩せてしまいがちなもの。
はたから見れば安定していそうな指弾きでもご用心。実際には弦に上手く力を伝えられていないパターンが多いと感じます。
そこでジェマーソンスタイルに注目。このフォーム、1フィンガーにおける安定感が段違い。簡単かつ劇的に変わるから驚き。これは本当、実際にやってみるべき。
ジェマーソンの真似をするだけで弦を押し込みやすくなる=縦振動のタッチ的な弾き方になる=太い音が出しやすくなる。効果がすぐ分かるから凄い。
1フィンガーにおいては力強いアップストロークの実現にも貢献。手首もフォームもぶれにくくなるのが分かるはず。
また、「ジェマーソンの音がなぜ太いか?」をアコースティックな面から考えるのであれば、これは単純な話、ネック寄りのポジションで弾いていることが大きいのも間違いないでしょう。
そのネック寄りで弾くポジションの維持、フォームの安定にも貢献してくれるのがPUフェンス。それを利用したジェマーソンスタイルなわけですね。
加えて、極太のフラットワウンドを張り、ブリッジ付近にスポンジを詰めるのがジェマーソン。
「頑固な昔の人!」ってイメージだと根性論的な見方をしてしまいそうですが、実際には非常に合理的な面も強い人だと自分は感じます。
アップストローク抜きにしても、ジェマーソンスタイルには強い魅力があるので是非ともやってみてほしいですね。
・PUフェンス付きのプレベ
・ネック寄りのポジションで弾く
・使い込んだフラットワウンドを張る
・ベースをブースト、コンプもかける
・大口径のスピーカーを遠慮なく鳴らす
これで1フィンガーでやると超絶気持ちいい!
高速ダウンの習得を考える
オルタネイト1フィンガーは色々厳しい
1フィンガーで16分系のフレーズを弾こうとした場合、やはり、アップストロークの習得が必須になるでしょう。
実践するのは非常に難しいけれども、そこに美味しさが詰まっているからこそ、2フィンガーでは出せないスピード感や独特のグルーブが生まれると実感。
やっている人が少ない分だけ、オリジナリティの確立にも繋がってくるはず。
ただ、繰り返すようですが、実践は本当に困難な奏法だと断言できます。 フレーズによってはどうにも馴染まない感じになってしまったり、ダウンとアップを緻密に計算する必要も出てくるから難しい。
ダウンでどっしりと確実に鳴らしたいのにもかかわらず、順番を間違ってそのポイントにアップの方が来てしまうと悲惨。
いくら強力なタッチを身に付けようが、電気的に強化しようが、どうしてもアップストロークは弱い。その現実からは逃れらない。
アップ側で強力なサウンド、太い音を得ようするのは、人体の構造的に無理があるのは間違いない。
極端な話、爪側オンリーでベースを弾こうというのは無謀もいいところ。これを否定する人はいないと思いますし、自分は挑戦する気にもなりません。
ダブルストローク
自分が勝手に付けた名前、まだ完成にも至っていない弾き方。簡単に言えば、高速ダウンストロークの実現。爪側を混ぜると合わないフレーズを一本指で弾くにはどうするか?
「ダウンのみで弾く」
肉側で弾ければそれに越したことはない。
机上の空論のようですが、ほんの一瞬、瞬間的にであれば、そうとばかりも言えなくなってきます。速いフレーズでもダウンオンリーで弾けるようになる。より実戦的で強力な奏法になることを期待し、取り組んでいる次第。
なんでわざわざ大袈裟に名前を付けたかと申しますと、2回目のダウンの力の使い方と意識が通常とはちょっと異なるため、必殺技的な感じで認識した方が頭の中でも理解しやすく思えたから。
実際、名前を付けて取り組むようになってからの方が上達は早くなった印象。「体のどこを使うか?」という意識を強める意味でも、何となくで弾くのとは異なります。
人間ってやつは本当、そういったちょっとした意識や考え方の違いで、不思議なぐらい変わったりするから面白い。
同じ指で弾いてるのに「指弾き」と言うか「スラップ」と言うか、それを考えるだけでも認識の面白さが分かるというもの。
ダウン後に指を使わず弾く
何とも誤解を招きそうな言い方ですが、自分としては本当にそんな感覚。最初のダウンはいつも通りに弾き、問題はそこから。
通常のダウン後、間髪入れずに脱力し、今度は腕・肘・肩を引く感じで弦を鳴らすようにします。指の動きに頼るのではなく、体の他の部分を使って弾く感じ。
もちろん、結局は同じ指を使うことに変わりはない為、完全に脱力させて動かしもせずまま弾けるわけはありません。しかし、ただ指を使うことだけを意識して弾くより、演奏が圧倒的に楽になるのは確か。
レイキングにおいても大きな効果を期待できますし、このダブルストロークとアップストロークを組み合わせることで、1フィンガーをより的確に柔軟に使えるようになると考えます。
指だけ使って弾くわけじゃないのは2フィンガーでも同じ。上手く体を利用することは常に意識していきたいですね。
正しい唯一絶対の方法があるとは考えない
ダブルストロークに利点を見出す一方、指以外の力を意識するあまり、それが変な癖になってしまう可能性もあるのが困りもの。
あまりに動作が大袈裟になってしまったりすると、肝心のフォームがぶれたり崩れたり、通常のダウンの方にまで影響が及んでしまうことも考えられます。
アップストロークの方にまで過剰に腕の力を使ったり、無理に体重を乗せようなんてしてしまうと、どんどん演奏が崩れていくのではないかと想像。かえって余計な力を使う事態になってしまうのはいただけない。
一切の揺るぎなく音もフォームも整え、それを維持したいということであれば、力の使い方も奏法も完全に統一した方が、本当は理想的なのでしょう。
ただ、何と申しますか、それって人間の機械化とでも言うか、サイボーグのような理想を過剰に求めるのも、ちょっと違う気がしますよね。
人体の構造や安全性を無視するのであれば、テンポ200以上でもダウンオンリーで弾けるとか、16分のフレーズでも人差し指一本でこなせるとか、その方が望ましいのかもしれません。
でも、それはどう考えたって無理がある。しかも、全部統一した動作、完璧な力加減で実現しろとか、無理難題なんてものじゃない。そうなるともう、完全に機械の仕事か、または素直に違う奏法で攻略すべき話でしょう。
やってることも音もバラバラすぎるのは確かに問題がありますし、曖昧さや緩さが適さない場面も音楽も数多くあるのは承知しています。
だからと言って、人間に機械的な性能を求めることを正しいとするのは疑問。
1フィンガーのユニークな点、それは、
『ギリギリの見極め』
充実したサウンドとグルーブをキープできる限界点、それを把握しやすくなるのが非常に大きいと自分は感じる次第。そのギリギリを攻めることにより、機械では真似できないニュアンス、フィーリングが自然と生まれる。
人が演奏する意味、心地よさ、素晴らしさ、それを実感するためにも、1フィンガーに取り組むことは凄くおすすめ。絶妙なタイミング、生きた音を出そうとするのであれば、一本指奏法を試してみてほしい。
実にストレートで分かりやすくかつ、ものすごく奥深い世界が存在しています。
1フィンガー動画
実際にやってみた
話しているだけでは何なので、実際に1フィンガーで動画を撮ってみました。時間は短いですが、レイキング、アップストローク、ダブルストローク、全て使っています。
使用しているのはあえてエデンのミニアンプ。そして愛機、ジラウド・ブラッククラウドの5弦。
本当はPUフェンスが欲しかったり、フラットワウンド張ってスポンジも詰めたいところなんですが、このベースでそれはあまり求めていないのが本音。
もっと1フィンガーがやりやすいベース、エフェクター、セッティングも詰めていけば、アップストロークも確実に使えるものになると実感。
1フィンガー専用のシステムを仕上げると本当、ハマる人はとことんハマると思いますね。かえってこっちの方が楽、ストレスがない、そんなレベルに高めることも可能なはず。
実際に取り組んでいる印象、速度の面においても、2フィンガーや3フィンガーに大きく劣るとは感じないようになりました。人差し指一本でもかなり速く弾けるのは間違いありません。
フォームの違和感を確認する
1フィンガー熱が高まるとやりたくなるのはジェマーソン仕様。極太フラット弦、PUフェンス、スポンジをかませて挑戦したくなります。
で、そいつらかまして動画を撮ってみたところ、これがま~、がっかり。もっと綺麗に指を使えているはずが、まったくイメージ通りではない。どうも手を斜めに捻っちゃっててよろしくありません。
中指、薬指、小指をもっとフェンスにちゃんと当てて安定させるべきなのに、ほんの軽く触れる程度か浮いてしまっているように見えるのも違和感の一つ。
頭の中ではビシッ!と格好良く弾けてるつもりが、
「全然アカンやん!」
出来てるつもりが現実は残酷。
いや本当、こういうのヘコみます。
違和感を生む正体は親指の位置と使い方か?
落ち込むだけじゃ先はない。
考えるべきはやはり原因。
何度も確認してみて気付いた違和感の正体は、
『低音弦のミュート』
これが違和感を生む原因なのではないかと考えた次第。
・弦に親指を当てて安定させる
・同時に不要な音のミュートをする
基礎も基礎、当然のようにやってきた方法。無意識レベルで染み付いている動作、必須のはずの技術。皮肉にもそれが裏目に出てしまっているように感じました。
フェンスがなければもっと自然な角度、いつもの感覚にも戻るのだろうけど、今求めているスタイルとやりたいことはそれではありません。
しかし、前述した動画のままだとPUフェンスを活かすどころか、邪魔者として扱ってしまっている印象。手首の妙な捻りは怪我にも繋がりかねません。
このまま放置するにはリスクも高い。弾いてて違和感があるのもまずい。自分で見てて気に入らないのも致命的。
こんなことで「俺のスタイルだ!」と納得できるわけもなし。
試しに親指を浮かしてみる
1フィンガースタイルの理想形はやはりジェマーソン。写真も映像も少ないのは残念な一方、僅かな資料からも分かるのがその凄さ。フォームの安定感。指の使い方の美しさ、本当に素晴らしいですね。
そこで思い付いて実験してみたのは、
『親指を浮かす』
今までやってきた2フィンガーの常識からかけ離れた方法。こちらも試しに動画を撮ってみましたが、いや、これは自分でびっくりしました。
斜めに捻っていたのと比べたら一目瞭然。
どちらにも利点はあるとか悩む必要なし。
「こっちだ!」
即決に至った次第。
長く険しく甘くない1本指道
自分が1フィンガー奏法にハマるきっかけになったのはジラウドベースセンター。実に奥深い考察を聞いてきましたし、実際に教えてもらいもしてきました。
でもやっぱり、甘くないですね。何となく出来るようになったつもりで終わってる、実際には全然分かってなかった、至らぬことばかりなのだと痛感させられます。
今回のフォームにしても、理想的とか決定打とはまったく考えていません。いくらスポンジを詰めているとはいえ、100%鳴らないようにしてくれるわけではない。
余計な弦振動は極力ミュートしておきたいし、完全放置を決めこむのも現実的ではありません。
正直なことを言えば、このスタイルで行く場合、ローB弦の存在は蛇足にも感じるのが痛い。きつくミュートをかましていてなお、「ぶわ・・」「ボワン・・」と言った余計な響きが出てしまう印象があるのがローB弦。
「4弦Eの開放音が最低音域であるべき!」そんな風に認識を改めたくなるところでもあります。
フォームを良くしたい意味でも、もっと歯切れよく低音のかたまりを前に出したい意味でも、4弦である方が思い描く方向としては理想的な気がしてくるなと。
『人差し指を最高に美味しく活かす』
この目的の為に、様々な要素を凝縮する必要を感じてきます。
何度も挫折し続けてきたけど、その度にまたやりたくなる、戻ってきてしまう1フィンガー。その奥深き世界。究極にシンプルがゆえの果てしなさと楽しさにやられます。
ロックでも大活躍の1フィンガー
8ビートの刻みに効果絶大
ダウンピッキングで押し通すのと同様、1フィンガーでもダウンだけで弾ききるとグルーブは確実に変わります。
オルタネイトピッキングや2フィンガーとは異なる選択として持っておくと、一味も二味も違ってくること間違いなし。
どんなに凝った音づくりをしようがコンプで揃えようが、なぜかあのノリは出せない。人体の反応速度の問題なのか何なのか、別物になってしまう不思議。
いや本当、今になってミスターダウンピッキング、松井常松さんの偉大さが分かる気がしますね。あの鬼のピック弾きには脱帽するしかありません。
自分は指弾きがメインの人間ですが、あの方の姿勢には非常に憧れます。
人差し指一本でゴリ押したくなる!
実際にバンドでやった人差し指オンリー
あるバンドをサポートした際の話。
テンポ170~180ぐらい、8ビートでの刻みを求められる曲がありまして、そこで実際に1フィンガーのダウンオンリーで攻めたことがあります。
「なんでわざわざ?」とも思われそうな気もしますが、これはすごく単純、自分の2フィンガーでのプレイが不評だったからって理由。
今でも覚えてるやり取り、
「何か合わないよね~?ロックじゃないんだよなぁ」
「勢い無いよねぇ・・やりづらいわぁ・・」
「もうちょっと重い音でタイトにさぁ~?」
「綺麗に弾くんじゃなくてダサかっこいい感じでもよくない?」
休憩時間の間、主にドラムからこんな感じのダメ出しを食らった次第。
もう何と申しましょう?あまりに的確、もはや怒りなんて湧いてこなかったことも覚えてます。「うわぁ、全部ばれてんなこれ・・」と、その指摘に納得するしかありませんでした。
自分が持っていた違和感、弱いポイントを完全に把握されてしまってたと言いますか、自覚があっただけに「うるせぇなこいつ!」とはならないんですよね。
加えてドラムだけではなく、サポートの依頼主からも、
「ポンさんさ~、今回ぜんぶピックでやってくんない?」
「何か指だと違うんだよねぇ~。」
なんて言われてしまったもんだから、完全に退路を断たれました。
もう逃げ道なんかない。
「クソ!やるしかねぇ!絶対認めさせてやる!」
ま~、燃えたのなんの。
色々言われて悔しかったこともありますし、良いバンドにしたい思いも当然あります。きついのは分かりきってたけど、だからってお茶を濁して逃げるわけにはいかない。人差し指一本で挑むことを決意しました。
正直、尋常じゃないぐらいしんどい弾き方なんですが、だからこそ効果は絶大。それを裏付けるがごとく、バンドの中でも評価が一変。
「おぉ!今日いいじゃん!」
「すげーしっくりくる!」
「何か変えたんか!?」
前回の酷評とピリピリムードもどこへやら。二回目のリハでは笑顔の好評。自分自身の手応えもあり、その確かな効果、充実の手応えを実感。
言葉にするとこんな感じ。
「どでどでどでどで・・」
こんなベタ~っとダラダラしたノリが一変。
「ドドドド!ドドドド!」
明らかにタイト、勢いもドライブ感も出るのが1フィンガーのダウンオンリー。論より証拠。能書きはいい。やってみれば分かります。笑っちゃうぐらい変わります。
それぐらいダウンオンリーの威力は強烈!
まずは一本指で刻んでみるべき
これまでの実体験、活かせる場面だったら1フィンガーは本当、2フィンガーより圧倒的に気持ち良いグルーブが得られますね。
アップストロークを抜きにして考えてもおすすめ。ダウンオンリーだけでもその魅力が味わえること間違いなし。
3フィンガーや超絶技巧のイメージがあるビリー・シーン、実はシンプルに刻むのも凄く上手いのがこの人。
それこそ、フレーズやノリによっては一本指で通したり、ダラダラべたっといいかげんに弾くベースとは一線を画しています。
凄まじいばかりの技巧に憧れるのもいいけれど、それをより輝かせるのが豊かなボトム、グルーブ、ベースならではのサウンドあってだと自分は思う次第。そこに説得力があるのとないのでは、技巧の栄え方も勢いもまったく別になってしまうと痛感。
1フィンガーによって生まれるストレートの魅力、ドライブ感、力強さ、どの場面においても活躍してくれます。
「一本指を笑う者はグルーブに泣く」
ちと大袈裟なようですが、割とまじめに一つの真理かもしれません。ロックだけでなくジャズ弾くにしても同じ。強靭な一本指で弾き切れると絶対違う。
鍛えて損なし1フィンガー。
一生使える武器になります。
1フィンガーと2~3フィンガーの複合
中指をさらっと混ぜるのもおすすめ
「ダウンオンリーだ!」と偉そうに語りましたが、実のところ、かっこつけが入ってるのも本音。ライブ本番でも本当に一本指のみで通せるかと問われると、
「いや無理!」
ダウンオンリーとか尚更きついと白状します。
何が起こるか分からないのがライブ本番。力みすぎてあっと言う間にスタミナを使い果たすことも想定。ちょっとしたインチキも保険で用意してあるのが本当の話。
『2拍目か4拍目の頭を中指で弾く』
スネアが鳴るタイミングでは中指で鳴らし、そこで人差し指を休ませる。それでも十分な効果がありますし、ダウンオンリーがきついならこの弾き方も選択肢に入れておくと良い。
まぁ、これもそこまで楽な弾き方ではない為、結局は困難な方法になってしまうのですが、それでも1フィンガーオンリーで行くよりだいぶマシになるのは間違いありません。
8分刻みとして言葉にしてみるとこういう感じ。
「ドドダド ドドダド」
上記の「ダ」のタイミング時には中指で弾くやり方。
ちょっと余裕があるなら、
「ドドドド ドドダド」
4拍目だけ中指なんてのもあり。
「やべぇ!手がつりそう!」って時に体はもちろん、精神的にも楽にできる弾き方を用意しておくと、やっぱり違いますね。軟弱と言ってしまえばそれまでだけれど、備えあれば憂いなしってのも事実。
馬鹿正直に一本指オンリーで行くのも最高にかっこいいですが、備えがあるから思い切ったことができる、選択肢があるからこそ迷いなく投入できるとも考えられます。
力の抜き方、体の休ませ方、一瞬の回復力、1フィンガーに挑むなら、こういった能力も必須に身に付けたいところ。
3フィンガーとの組み合わせもおすすめ
高速な刻みなどが求められる場面でも、威力を発揮してくれるのが1フィンガー。
速いダウンストロークと2フィンガー、3フィンガーを組み合わせるのも強力。ハイスピードでメタルな刻みが求められる場合などで大活躍します。
簡単に言うと、8分部分は人差し指ダウンオンリー、16分など細かい音符を2~3フィンガーで弾くのがおすすめ。
「一本指奏法」と言ってしまうと、興味が湧かない人も多いかと想像します。しかし、それはかなり限定的か、先入観の強いもったいない見方だと思います。
実際、メタルのバンドをサポートした際など、これ以上ないぐらいに効果を実感しました。
これまた言葉にしてみますと、
「タンタンタタタン」
という感じの刻み。
このパターンを自分がやる場合、最初の「タンタン」のところは人差し指で刻み、後の「タタタン」を3フィンガーで弾く流れになります。
この最初の「タンタン」を2フィンガーで弾いたり、3フィンガーでやろうとすると、指使いがかなり複雑化してしまう為、かえって難易度が上がってしまう印象。
一本指だけによるシンプルな刻みも入れるからこそ、3フィンガーもやりやすくなる、一連の動作としても分かりやすくなると考える次第。
動画にするとこんな感じ。
1~3フィンガーを複合するなら動作を単純化し脳を整理する
3フィンガーの場合、薬・中・人差し指の順番で弾くのが自然な印象。この流れをなるべく維持したくなる奏法だと認識しています。
不思議なもので、人・中・薬指の順番だと上手く弾けないんですよね。上記の流れを維持する意味でも、1フィンガーによる8ビートの刻みを習得しておくと、非常に役立ってくれます。
人差し指一本でシンプルに弾くことにより動作が単純化、いったん脳がリセットされると言いますか、複雑な指使いをスムーズにまとめ上げるのに貢献してくれると実感。
例えば、もう少し複雑化させた刻み。前述した「タンタンタタタン」に加えて「タータタタタタン」という刻みを弾くとしましょう。
ここで使用する3フィンガーはなかなか複雑です。前者については説明した通りですが、後者がちょっと難しい。
最初の「ター」が人差し指でそれに連なる「タタ」が薬・中指。最後の「タタタン」は人・中・人差し指でここは2フィンガーになるというやり方。
これを指の順番関係なく弾くのは自分的には辛い。マルチフィンガー、複合させまくるのは難しい。だからこそ、そこで1フィンガーが役に立ちます。
『ど頭を絶対に人差し指で弾くようにする』
これで「今どこを弾いてるのか?」が分かりやすくなること間違いなし。ドラムと合わせるにも、アンサンブル的にも、タイミングを取りやすくなりますね。
「タンタンタタタンタータタタタタン」って刻みをずっと繰り返していくにしても、最初の「タンタン」を1フィンガーにすることにより、自分の中の意識をスムーズに整理することが可能。
指の使い方がバラバラになったり迷子になっても、人差し指による「タンタン」があれば、そこでまた確実に修正できるようになります。
例えば「タンタンタタタタ」の刻み。
これを1フィンガー、3フィンガー、2フィンガーを組み合わせて弾くと聞くと、物凄く複雑なことをやるように聞こえるかと想像。
でも、シンプルな1フィンガーのダウンがあれば、それを分かりやすくすることが可能。弾いている感覚としても、どこをどうやって弾いてるのか、簡単に把握できるようになります。
他にも例えば、『3フィンガー+人差し指アップストローク』なんて弾き方をするのも面白かったですね。
一本の弦に対し、4音のフレーズを弾く場合、3フィンガーだと他の弦に移った際、頭に来る指がずれてしまうのが泣き処。
4弦は薬・中・人・薬指、3弦は中・人・薬・中指、2弦は人・薬・中・人差し指など、これで弾くのはかなり大変。
そこで登場するのがアップストローク。『薬・中・人・アップ』の順番で弾くことにより、指順を崩さず1弦4音のパターンを弾きやすくなります。
動画にするとこんな感じ。
2フィンガーで問題なく自由に弾けるのであれば、それが無難なのも確かではありますが、刻みのパターンによっては3フィンガーの方が的確だったりもするのも自分の実感。
特に6連系フレーズなんかの場合、スタートは薬指からの方がスムーズだったり、速度的な意味でも動作としても、自然に弾ける印象があります。
単なる技巧自慢やハッタリではなく、3フィンガーはちゃんとした実用性を持っている奏法。1フィンガーと組み合わせることにより、それを強く実感できる。
複雑なことをもっと複雑にしていくのではなく、なるべくシンプルにまとめて理解するのも非常に効果的。無理のない自然な運動、当然の感覚として弾けることが重要。
一本指の限界を鍛えておくと、他の奏法に対しても良い影響を与えられますね。
どの場面にどの奏法が合ってるかは自分で決める
理想を言えば1フィンガーだけで通すか、または2フィンガーなら2フィンガー、同じ弾き方で通す方が望ましいのかもしれません。
統一したグルーブとサウンドにする意味でも、なるべくシンプルにまとめ、規則正しく弾いた方が安定するのは確か。
でも、こういった組み合わせやタイミングを真剣に考えるというのも、楽器の面白いところ、奥深いグルーブに繋がるもの。何かを試してしっくり来ないなら、また他の方法を模索すればいい。
ニワカ止まりではなく徹底的に1フィンガーを鍛えるもよし。そうやって試行錯誤を重ねることで見えてくる何かが絶対にある。
1フィンガーがしっくり来るなら1フィンガー。2フィンガーで弾きたいなら2フィンガー。3フィンガーが必要なら3フィンガー。
または限定せずに複合してみたり、自分なりのやり方、個性、オリジナリティを生んでいくのも非常に楽しい。
それらを正しく実践する意味でも、まずは指一本で強力なサウンドとグルーブを実現できるに越したことはない。
ど頭の音すらハッキリ出せない、なよなよした音しか鳴らせない、それでは発展性がない。何本の指を使えようが、どんなに超絶技巧を駆使しようが、何の説得力もなくなってしまう。
例えばの話、
「超速く叩けるけどバスドラとスネアがクソ弱いロックドラム」
こんなイメージをしてみると良いかもしれません。どこがどこだかまったくハッキリしない、音圧もプッシュ感もクソもない、自分だったらそんなドラマーにはなりたくないし、一緒にやるのもちょっと勘弁というもの。
1フィンガーを真剣に鍛えていくと、音に対する意識もグルーブも自然と変わっていきます。難しいことに挑戦にするにも、確かな基礎として役立ってくれますね。
知っておきたい・ジェマーソンとチャックレイニー
James jamerson
【Marvin Gaye - What's Going On】
ワールドスタンダードとして外せないこのアルバム。ジェマーソンと来ればまずはこれって感じ。
「ジェマーソンが人生をかけて挑んだプレイが聴ける!」とか言いたいところなんですが、これがま~、事実は全然そうじゃないみたいなのが面白いし、困った話でもあります。
ドキュメンタリー映画などによるとジェマーソン、
「べろべろの酔っぱらい」
レコーディング当日、泥酔状態であらわれたとか何とか。
もはや椅子に座ることすらままならなかったらしいジェマーソン。それでも「奴じゃなきゃ駄目だ!」ってことで演奏を強制、録音を強行した模様。
これまた酷い話、床に寝転がりながらベースを弾いたらしく、名盤としてだけではなく、そのおかしなエピソードも伝説として語り継がれているようです。
全編通して酔っぱらってたかどうかは定かじゃありませんが、いずれにせよ、そんなしょーもない状態で演奏した作品が歴史的名盤、生涯の代表作みたいな扱いになってるというのだから、世の中ってのは不思議なもの。
アレンジとサウンドの問題なのか、酔っぱらってるからなのか、ものすごくグルーブしまくったジェマーソンを聴けるわけではない印象もあるのが本音。
ジェマーソンにしてはちょっとルーズな感、ダラ~っと弾いてるかなと。
それでもです。
1曲目であり、タイトル曲でもある【What's Going On】
この曲のド頭のベース、その説得力に圧倒される他ありません。4弦の開放を鳴らし伸ばしてるだけなのに感動させられてしまう。
「俺もこんな音出してえなぁ・・」
自分も含め、世界中の多くのベースプレイヤーが憧れたであろうサウンド、どうやっても真似できない唯一無二のその音に痺れます。
最初に聴いたのが17歳の時だったか、当時はその良さが全然分かりませんでしたが、今では本当、ジェマーソンの魅力にやられっぱなし。
「これがベースだ!」
全てが響いてきてしまいます。
で、このアルバム、実はジェマーソンのベースじゃない曲もありまして、そこをあえて調べず比較してみるのも面白いんじゃないかと思います。
いまだに続いてるだろうこの議論。
「モータウンのベースは誰が弾いていたのか?」
この作品でも事実、【ボブ・バビット】が弾いてると思われる曲が存在。
ちと無駄にマニアックな話になってしまいそうではありますが、ジェマーソンとのサウンドの違い、その発音、タイミングの差、グルーブの研究、より深くベースのことを知る意味でも、このアルバムは必聴と言えるでしょう。
それと併せておすすめしたいのがドキュメンタリー映画、
【永遠のモータウン】
ジェマーソンのことを知る意味でも、このボブのエピソードとプレイを堪能する意味でも、この映画は超おすすめ。
モータウンをヒットに導きながらも、徹底して影の存在だった【ファンクブラザーズ】
モータウンの曲を知りながらも、彼らについては全く知らない人が多いのは映画にもある通り。
そんな中、さらに影の存在だったであろう、「本命はジェマーソン!」という扱いを受ける人生を歩んできたと想像するボブ・バビット。
その彼が、モータウンを代表するベースプレイヤー、ファンクブラザーズの一員として表舞台で堂々と弾いている姿というのは、かなりくるものがあります。直球で熱く込み上げてきます。
1フィンガー云々を抜きにしても必見!
Chuck Rainey
1フィンガーのレジェンドと言えば、チャック・レイニーも外せない。
ジェマーソンといいチャックといい、音符だけ真似しても全然良くなかったりするプレイヤーの筆頭。
簡単なフレーズのようでも何故か同じようには弾けない、不思議なぐらいに「らしさ」が出なかったり、とにかく奥が深い。音色の問題だけではとても済まない。
そのタイミング、グルーブ、ノリをどうコピーしたものか?自分も含め、世界中のベースプレイヤーが苦悩しているであろう姿は想像に難くありません。
研究していくほど、
「これ2フィンガーじゃ無理だ!」
こう判断せざるを得ない面に数多くぶち当たります。
そんなレジェンドのチャック・レイニー。
そのグルーブに触れるとしたらこのアルバムがおすすめ。
【Marlena Shaw Who Is This Bitch Anyway ?】
マニアな方からすれば、自分なんかニワカもニワカ。
しかし、そんなやつでも衝撃を受けてしまうのが、チャック・レイニーの恐ろしさ。グルーブの具現化とでも言うべきそのサウンドは必聴
【Street Walking Woman】
極論、この曲を聴くだけでも価値があります。「どうやったらこんなノリ出せるの!?」と声を出したくなるベースプレイはまさに圧巻。
ギターのカッティング、ハイハットの刻みさながら、ベースでこんなに16分のフレーズを軽やかに弾けるのか、怒涛のグルーブが凄まじい。
そして、圧巻のプッシュ感から一転、ゆったりした4ビートへの切り替わりがめちゃくちゃかっこいい。
エレクトリックベースでウォーキングするとダラ~ッとした感じになりがち、それを見事にはずませることができるのがチャックレイニー。
ダラダラ重くひきずらない、それどころかグイグイ引っぱっていける、自在なグルーブで攻められる、それはやはり、1フィンガーを主にすることよって生み出されているのだと確信したい。
譜面上、音符的に考えると、特に大したプレイはしてないことになってしまいそうですが、これがそうじゃないわけですね。明らかにモノが違う、ノリが別次元、根本的な差を感じる凄味にやられます。
マジで超かっこいい。
理想のベースプレイ、グルーブの具体例と言えるでしょう。
チャックレイニーについては、雑誌記事に触れるのもおすすめ。可能な限り、バックナンバーなど集めてみることを推奨。
1フィンガーに取り組むにあたり非常に驚かされたチャックの発言、
「親指の筋肉を使うんだ」
これは本当、衝撃的な発想でしたね。該当する指ばかりに意識を向けるのではない、どの筋肉、神経を使うべきか、どう連動して利用すべきか、考えられることが一気に広がります。
チャックレイニーの言葉は感覚的な部分はもちろん、知性にもうったえてくる素晴らしいものばかり。どれも必見、必読、為になる深さ満載。
ジラウドに学んだ1フィンガー
フェンダーのヴィンテージプレベの謎
ジラウドで実際に聞いた面白い話。
60年前後の無改造のものに限るみたいですが、同じプレベでも配線が後続品とは異なるらしく、それが1フィンガーで効率よく弾くのに大きなポイントになる様子。その配線をすることにより、何故かPUの反応が変わると言うから興味深い。
なんと、縦振動で弾こうとするほど音は小さくなり、横振動になるように弾いた方が太く大きくなる、そんな不思議な現象が起こるようです。詳細は分かりませんが、なぜか磁界が変わっているそうな。
プレベの時点で弦振動に対して寛容な面がありますが、それをさらに上回り、横方向の振動を強く拾うようになる。つまり、アップストロークに対して非常に有効なのがヴィンテージプレベ、その配線方法だと考えられます。
ジェマーソンチューン
ハイファイ、超ワイドレンジで知られるジラウドですが、実はローファイ方面の研究も凄い。それに代表されるのがジェマーソンの研究。機材、弾き方、多くの面から深い世界をのぞけます。
ヴィンテージプレベをヒントにしたジラウドの配線方法、加えてPUフェンスにブリッジカバーも搭載、極太のフラットワウンドを張り、ブリッジにスポンジを詰めるジェマーソン仕様、こいつが本当に強力。
とかく色々と加工したくなってしまうエレクトリック楽器。しかし、ジェマーソンチューンの施されたベースを弾くと思います。
「もうこれでいい!」
何も加工をする必要性を感じない、超濃密でシンプルなベースサウンドを堪能したくなってしまう、あれこれ弄るのは野暮だと満足してしまう。
「ぶっとい音がするベースにぶっとい弦を張ってぶっとい音が出るように弾く!」
これが最高だと。
ただまぁ、あまり徹底すると、大抵の人はまともに弾けない状態になってしまう為、完全ジェマーソンチューンはちょっとハードルが高いのも確か。もう少し普通の感覚で弾きたい場合、その独特の配線だけをやってもらう方がたぶん正解。
または、様々な振動方向を拾うジラウドのハムバッカーにこの配線を施すのも面白い。
ジェマーソンチューンのプレベの場合、横方向への反応の方が強くなってしまうのですが、ハムバッカーなら縦振動も別の意味で有効になり、それでまた独特なサウンドが実現できます。
まさにジラウドならではの研究。本物のプレイヤーの試行錯誤から生まれた素晴らしい成果。ぶっとい音出したいならジラウドを知るが吉。
ジャズベの磁界を変更できる謎
これは実際に弾いた経験がない為、噂に聞くだけになってしまいますが、ジャズベースでも横方向の振動を強く拾うようにするのは可能な様子。
通常のジャズベの場合、縦振動で弾かないと太く充実した音を得るのは、なかなか難しい。PUの幅が狭く、磁界もよりシビア。ハムバッカーのベースに慣れた後、シンプルなジャズベを弾くと、演奏の粗が目立ってしまって驚きます。
その難しいはずのジャズベース。そこにジラウドならではの改造を施すことにより、弦振動への反応が大きく変わると言うのだから凄い話。
これの何が面白いって、1フィンガーにのみに限らず、ピック弾きなどに対しても大きな効果を期待できるのがポイント。
横方向の振動が強くなりがちなタッチや奏法でも太い音を出しやすくなるし、アップ側のサウンドとも揃えやすくなる。
1フィンガー=プレベと限らず、ジャズベも選択肢に入れられるのは素晴らしい。
どう弾いても同じような音が出る、面白味のない楽器になってしまう可能性も考えられますし、タッチにこだわる人には逆効果になる可能性もあるのが難しいのは確か。実際、ジラウド側でも積極的に推している改造というわけではなさそう。
ジラウドベースだけでも相当な本数を弾いたことがある身ですが、その改造が施されたベースは一度も弾いたことがありません。
でも、そういった選択肢が存在する、弾き方に合った磁界や特性を理解する、闇雲ではなく意識して楽器を選ぶ、その意味と効果について考えるだけでも大きいと自分は考えます。
それを実体験として学べるのがジラウド。
ベースを弾くなら一度は行く価値があります。
やっぱりジラウドは面白い
こういったベースの研究をしている所を自分は他に知りません。店主自らが真剣に奏法の研究をしているというのも、なかなか考えられない話ではないかと思います。
自分が縦振動について知ったのも、1フィンガーに対して興味を持ったのも、ジラウドの福田さんから教えてもらってのこと。
タッチコントロールを深く研究している方が作っているのだから、当然、楽器の方もそれに答えてくれる。そして、その方向性や狙いもしっかり説明できるのが素晴らしい。
ベースを作っている人はもちろん、プロミュージシャンでも1フィンガーを研究している人なんてほぼ存在していないと感じますし、こういった奏法、それに合った楽器に興味があるならば、まずはジラウドを訪ねてみることをおすすめします。
【Funk Groover】なんてエフェクターもありますが、これがまた実に強力。
とりあえず分かりやすく言うと、「問答無用で音をぶっとくする!」そんなペダル。古くさ~いファンクなサウンドとか歪みが好きならハマること間違いなし。
20年近く通ってるけど、いまだに飽きないのがジラウド。次から次に何かを起こしてくれ、その度に驚愕しています。実際にお店に行けば必ず得るものがあるでしょう。
※店主福田さんの逝去によりジラウドは閉鎖。現在は改造を依頼する事もお話を伺う事も出来ないのが残念でなりません。長きにわたり多くの学びを頂いた事を感謝申し上げます。