サムピングとプル研究 目次
※とりあえずの動画。
サムピング
打音と弦振動
スラップと言うと基本動作は「弦を叩くこと」になるでしょう。弦を撫でるようにぬるっと弾いてもスラップらしくはなりません。
一方、音程をしっかり出すためにはやはり、弦を振動させなければいけないわけです。どんなに強く叩きつけたところで、指が弦にくっつきっぱなしでは実音は出ない。
そう考えると「ガチッ!」と鳴る部分と「ブン!」と鳴る部分は実は別物であり、それを一瞬と言うか同時に出すための奏法がスラップだと考えることもできるのかもしれません
演奏方法・表現方法として自然にやってるのであまり実感がないですが、異なる二つの音がひとかたまりになって聴こえるという、それぐらい超高速な処理を実はやってることになるではないかと。
言葉だけだといまいち伝わりにくい気がするので、試しに極端目に弾いた実験動画を撮ってみました。
今持ってるカメラでは変にリミッターがかかることに加えて低い部分は拾わない為、ちょっと不本意な内容になってはいますが、それでも言ってることは分かりやすくなるはず。
弾いている順番は今回の見出しと同様になります。
【振り抜き型サム→押し込み型サム→ホットサム→ファンクフィンガー】
これを考えると、打音を出してからの処理が遅くなってしまうほど、弦は振動しなくなるものだと想像します。そして当然、音のキレも悪く音程感もなくなってしまうことが予想される。
いくら強力な打音が出せてもバンドの中ではいまいち存在感がない、ボトムがないから軽くなる、ドラムに食われてしまうか邪魔になる、そんなことが起きる可能性が高くなってしまいそうです。
振り抜き型サム
動画の最初のパターンでやっているのがこれ。叩いた後、そのまま弦を押し込むなり親指を通過させて鳴らす方法ですね。
打音の強さはほどほどに弦を振動させるようにする場合、このタイプのサムが活躍するのではないかと思います。
ただ叩くだけではないパーカッシブなだけではない、メロディックなアプローチもやりやすいはず。
ただその分、歯切れよく弾くのが意外と難しい面があるのかもしれません。
前述の通り、打音と実音のバランスを考えたり、高速に同時に鳴らすようにしないと「ガツ!」と「ブン!」が分離してしまうことになる。
細かいテクニックやスピードばかりを意識してると音も軽くなりがちだし、電気的な味付けと加工が過剰にもなりやすい。
アップダウンも使用するならなおさら、音がひとつの塊となって出ないといけません。
叩くことばかりに気を取られてしまうとなかなかスラップは上手くいかないから奥が深い。
このあたりのコントロールについては、以前にも話したレフトハンドミュートの活躍も期待できますし、実際、スラップの達人は握り込むフォームの使い方が上手い印象があります。
楽器本体のブレを押さえることでより強力な打撃を叩き込む意味もあるのだと想像しますが、不要な音のミュートや歯切れの良さを出すためのコントロールがやっぱり大事ですよね。
スラップで良い音を出したいのであれば、不要なブレや弦振動の暴れを押さえる強力な左手も必要だと考えるべきでしょう。
押し込み型サム
弦を垂直に押し込み、そのまま真上に戻すようなサムピング。
強烈な打音+縦振動による重低音を得られる為、キレ良くかつガツン!と弾くには最高なんじゃないかと。
ミュートしたサウンドでも重い音がバンバン前に出てきますね。 分かりやすく言うとバスドラみたいな感じ。
動画じゃぜんぜん聴こえませんが、実際はスピーカーがやばいってぐらいに低い音が出ています。
しかし、一瞬で弦を押し込むのだけでも難しいところ、そこからがまた難関。
弦が元の位置に戻ろうとするスピードよりも速く、一瞬で指が弦から離れなければいけないという。
弦をおそるおそる軽く叩くだけじゃろくな音にはならないし、強く叩いても深く押し込んでも、そこから指がモタモタと弦に張り付いてるんじゃ音にならない。
弦を押し込むのと指が離れるのとを超高速に同時にやる、それがこのサムピングのポイントでしょうか。
そういう意味では叩くスピードもさることながら、離すスピードと引くスピードが問われてくるとも言えそうですね。
奏法として発展させるならば、打音はほどほどに弦を瞬間的に押し込み、そして一瞬で戻して重低音を得るという方法もできるのかもしれません。
ただ、小さな音で重い音・迫力のある充実した音を出すのは本当に難しい。あまり深く考えるよりもイメージとサウンド先行でやった方が良い気がします。
ホットサム
親指を弦とを平行にするような形ではなく、親指を下に向け弦と十字になるようなフォームで叩く方法。
たとえば、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーなんかがこのスタイルを用いる代表格ではないかと。
正式名称とかは知りませんが、レッチリから取ってこの場ではとりあえず、「ホットサム」と呼ぶことにしようかと思います。
このホットサム、ストラップの位置が低い人などがスラップをやろうとするなら、必須のテクニックとフォームになるはず。
楽器を構える高さによっては振り抜き型のサムが物理的に不可能になってくる為、こちらの方がむしろ自然な奏法になるとも言えそう。
そして、親指を振り抜くことができないとなると、必然的に押し込み型のサムと同じタイプの振動方法になるのではないかと想像。
親指を弦にぶつけて高速で押し込みそのまま戻すという、非常にパワフルでガツン!と来るスラップスタイルをつくりやすい。
また、このスタイルの場合、サムだけでなくプルの方もパーカッシブで独特のサウンドになる印象。
腕を「ぐっ!」と構えず、脱力したフォームのままスラップしやすい点も魅力かなと。
3弦~1弦を叩くのにはコツが必要そうな為、オールラウンドという形にするのは難しそうですが、ロックを感じさせるようなガッツと熱さが自然と出る奏法ですね。
ファンクフィンガー
勝手に適当につくった言葉。前述の動画の最後にやったのがこれです。人差し指で叩いていますが、まぁ、「もう音が出りゃ何でもいいじゃん!」ってことで。
これも押し込み型と同じく、弦を垂直に押し込んで一瞬で戻すというタイプ。
要するに、ちゃんとアタックを出して弦も振動するようにすれば、それらしいサウンドになるんですよね。
試行錯誤すれば振り抜き型のようなタイプにすることも可能だと思います。
『スラップ』と一言でまとめてしまうと、一種類の奏法や一種類のタッチに限定しがちになるんじゃないかと想像。
でも、それも結局、弦をどうやって扱うかというのが問題なわけで、タッチコントロールのひとつだと認識すれば、「特殊な弾き方」とか「派手な人専用」みたいに考える必要もなくなってくるはずです。
「才能のない自分にはできない弾き方だ・・」とか思う必要も考える必要もない。
スラップサウンドが好きだったり強い憧れががあるならば、まずはいろいろ試してみるのが一番でしょう。
世の中には右利き用の弦の張り方のまま、レフティスタイルで親指を使わずにスラップする人なんかもいたりしますし、 諦める必要なんかありません。
言葉にするよりこの動画を見た方が早い!
「何でもいいから叩いて引っぱって音出せ!」って感じ!
スラップと言ってもこのブログでやること考えることは同じですね。
「いかに弦を振動させるか?」
指弾きでもピックでも一緒。
ベースは弦楽器なんですから弦をどう扱うかが勝負。
振り抜き型と押し込み型をアルアイレとかアポヤンドみたいに考えたり分類しても面白いし、全部まとめて「ファンクフィンガー!」とかって感じに済ますのも有りかもしれません。
プル
多用すると色々軽くなる
最近はダブルプルなどのテクニックも標準になりつつあるのか、進化というものをひしひしと感じます。
ただ、あまりにもプルの手数が多すぎると肝心のボトムの方が軽くなったり、リズム的にもあまりに細かくなりすぎて詰まった感じになったり、そんな印象を受けるのも正直なところ。
言葉にするとたとえば、
「ドンペペ・ンペッペ・ンペンペ・ドンペペ」
みたいな感じですかね?
圧倒的に「ペ」の方が多かったりするとちょっとくどいかなと。
これで音が軽い場合、「ドン」が無くなって「ウン」とか「トン」になってしまうと言うか、やってることの割に迫力がいまいちになってしまう感がある。
「ドン」の方が休符的扱い、間になってしまうとでも言いますか。
ベースの技巧的にいくら凄くても音的に説得力がなくなってしまうのは勿体ない。
手数が多いにしても、まずは確実に「ドン!」が出せることが、プルを活かすポイントにもなるはず。
プルの音が大きすぎる弊害
スラップをするとなると、ついつい気合を入れてしまいがちな人も多いかと想像。
自分も実際、ライブで思いっきりブッ叩きすぎて指が真っ青になった経験があったり。感覚もなく動かくなっちゃったんであれはほんと、指が折れたかと思いました。
まぁ、それはさすがにやりすぎって話ですが、それぐらい気持ち良い弾き方なのは確かですよね。スラップソロがバシッ!と決まって盛り上がったりすると、そりゃ病みつきになるのも分かります。
ただ、冷静に考えた場合、音質的に前に出過ぎたりそもそもの音量も大きくなりすぎたりなど、アンサンブルを壊す可能性が多分に潜んでいるのも事実でしょう。
特にプルの音なんてのは言ってみれば「破裂音」みたいなものです。ただでさえ尖がってて耳に痛くなりがちなサウンド。
無理矢理にコンプやリミッターで抑えてしまうという手もありますが、それが原因で「音が抜けない・・何が悪いんだろう・・・」なんて悩むことになったら本末転倒。
プルが強すぎるからサムも強くするとか、それでバランスが壊れたから今度は電気的に揃えるとか、そうやって後付けが延々と続くことが良いとは思えません。
目立つためにプルのテクニックを磨いたり気合入れて引っぱるのも良いけど、まずはやっぱり、ボトムをしっかり出すことを意識、サムとのコンビネーションを磨いてこそではないかと。
サムが弱いんだったらサムを強化する、プルが強すぎるんだったらちょっと加減してみる、それだけで驚くぐらい変わる可能性もある。
強すぎるタッチでしか成立しないサウンドというのは、用途も美味しいポイントも限定的になりがちだったり、不便な面も多いと感じます。
ダイナミクスを落とした際、弾き方が分からず一気にスカスカになるとか、あれは怖いですよね。
楽器の演奏の技術、表現力としてひとつ目安をつくるならば、「小さな音量」でも充実した良いサウンド、安定したリズム・グルーブを出せることはかなり高度な話。
プルの音を小さくバランス良く鳴らせたら、それはかなり凄いことですね。
左手のコントロールも大切
スラップの基本と言えばオクターブのパターン。要はバスドラとスネアのコンビネーションみたいなものですね。
「ドンパンドンパン」のリズムだったら「パン」の方を担当するのがプル。で、個人的に凄く嫌なのが、この「パン」の方の運指を小指で担当しなければいけないこと。
要はレフトハンドミュートが困難になるわけです。困難と言うか不可能なぐらいの話だから困るぞと。
「ドン」の方は人差し指で押さえて中指でミュートを加えてコントロールできるんですが、どうもこの「パン」の扱いが苦手だったりします。
前述のように、プルが強すぎると色々とアンバランスになってしまう印象が強い。コンプとか通すのも好みではない為、奏法としてこのあたりの操作に課題を感じるところ。
音を伸ばしっぱなしだったりすると、ベタっと間抜けになったりキレも悪くなったり、それって凄く嫌なことですよね。
例えば、
「ドッ!ペッ!ドッ!ペッ!」
と弾きたいのが、
「ドーペードーペー」
になったらものすごく格好悪い。
もちろん、後者が活きる場面もありますし、どっちが良い悪いかと一概に決めるものではありません。
ただ、小指の運指で「ペッ!」とタイトに歯切れよく決めるのって意外と難しいから困るわけです。
歯切れよくしようとプルが強くなりすぎると前述のように張り出しが過剰になったり、アンサンブルに馴染まなくなったり、そのあたりのコントロールというのはなかなか奥が深い。
基本テクニックであるハンマリングやプリング、スライドなども確実に実践できるとスラップは本当に変わりますね。
左手のテクニックを使用した際に露骨に音量が落ちてしまうのでは問題ですし、やはり、強力な左手と右手のコンビーネーションが命。
弦を乱暴に叩くだけのスタイルを身に付けようとか、そうやって鍛えようなんてするぐらいだったらむしろ、左手の方を重点的に強化した方が先を見る意味でも良いんじゃないかと思います。
スラップはもちろん、指弾きでもピック弾きでも絶対に役立つことでしょう。
ピックガードの重要性
指を深く入れるのが好みかそれとも浅い方が好みか?どちらにしてもピックガードの存在はプルとの関連性が深い印象。
なんでそんな重要アイテムになるのか具体的に言うならば、
「弦とボディとの間隔、感覚を決める為」
と言えるでしょう。
スラップってけっこう機械的な動きになる面も多いから、あんまり不確定要素が入って来てほしくなかったりします。
パターンやフレーズの流れなどすべて含め、それをひとつの動作にしちゃった方が弾くのは楽になりますよね。
指の入り方やその距離が一定になるほど、音質も音量もリズムもキープしやすくなるし、その実現のためにピックガードの存在が意外なぐらい重要になってくるわけです。
実際、道具の調整をちゃんとすることでスラップってびっくりするぐらいやりやすくなります。
ジョークではなく、ピックガードの上にさらにピックガードを付ける人もいるぐらいですし、こだわる人にとっては本当に想像以上の存在になる。
ピックガードひとつで奏法の悩みが解決する可能性すらあると考えれば、大袈裟ではなくスラップ専用アイテムとして考えてもいいぐらい。
ちなみに自分の場合、メインベースの塗装がオイルフィニッシュな為、楽器を保護する意味でもピックガードはありがたい存在。
蓄積って凄いですね。使い続けてると本当にそこだけ削れていったり、容赦なくえぐれていきます。
こういう場合はその名の通り、正しく「ガード」として役に立つアイテムになると言えますね。
ギター的にピックガードって呼ぶんじゃなくて、いかにもベースとして「スラップガード」って認識でいいんじゃないかと思えたりして?
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