上には上があった事実を考える
「もう他を弾くにならない!これぞ究極のプリアンプ!」と長年使っているジラウドJFDT-HA。
このプリがある事でどれだけの成長に繋がったか、人生に影響を与えたか、もはや音が良いとかどうとか超えた思い入れまである。
初めて弾いた衝撃を受けてから長い年月、全くライバルが現れなかった事実を考えても、本当にとんでもない存在だ。
しかし、上には上があった、まだ先があった、それを教えてくれたのは、またもジラウドだった。
電池駆動の【Speed Booster】まずこれに驚かされた後、さらに衝撃を与えてくれた【Dr.Sim】このジラウド最後のプリアンプには本当にやられた。
明らかにJFDT-HAより解像度が高い、情報がより高密度に飛び出してくる、よりシンプルに気持ちいい、こんな回路が存在するのか、ガツンとブッ叩かれた衝撃があった。
まぁ、これもすでに何年も前の話になってしまうのだけれど、改めてみるに、究極と思う物があってもやはり上がある、欲しい物は出てくる、何らかの欲はあるのだと、それに気付かされる。
言い換えれば、究極と認識しつつも実は不満が隠れている、手が届かない部分がある、先を求める発想が無くなっていたり、盲目的にもなってしまっている、そんな事を考えさせられる。
特にJFDT-HAの場合、「後は自分自身の問題だ!修行あるのみ!」みたいなストイックさ、自らの姿勢に酔ってしまう部分があったのも否定できない。
そうではなく、回路そのものとしてどうなのか、その根本をもっと冷静に見るのも面白い気がする。
そんなわけで、HAを超えるだろう物、異なる物を求めるなら何が良いか、欲しいか、要素をちょっと並べていってみたい。
①より強力な押し出し、レスポンス
これは前述したDr.Simのそれ。「これ以上はない!」と思ってたらそうじゃなかった、実際に経験もした意味は大きい。
完璧、究極なはずがそうではない、まだやれる事はある、実は妥協していた部分があった、向上の余地があった、それを事実として認識できる。
そもそもを言えば、Dr.SimはJFDT-HAのプロトタイプだと見る事も出来る。
であるならば、HAは汎用的に仕上げられていた、扱いやすいようアレンジされた物だったのだと、強引に考えられなくもない。
より生々しい、より押しが強い、より気持ちいい、より高密度、どういった要因からそれが生まれるのかは分からない。が、繰り返すように、HAより上があったのは確か。
Dr.Simと比較した場合、HAは大人しく聴こえる、引っ込んでるように感じる、なまった印象がある、この事実を確認できただけでも、大きなポイントになると思う。
②絶妙な歪み、艶、コシ、粘り、厚み、奥行き
どんなに強く弾いても腰砕けしない、歪まない、そのままクリーンに出す、そこを求めると最高に輝くHA。
一方、そればかりを求めるのではない、必ずしも正解になるわけではないのが楽器の世界、音楽の面白奥深さ。これについては、当のジラウドでも常に試行錯誤されていた要素だと思う。
実際、ネオパッシブやファンクグルーバーなど、より素朴だったりローファイな方向にも行けるような仕様、回路も発表されていた。
「歪み」と一口にしても、ただ露骨にクリップしてるだけなのか、奥行きや張り、艶、厚みなどの要素として働いているか、ニュアンスや種類が異なるところがある。
その意味では、HAも歪んだアンプと言えるかもしれないし、オーディオの世界からすれば酷い特性だと、当のジラウドで聞いた事もある。
だからこそ楽器的に美味しい、活き活きした音を出せる、そういう話だった。
ただまぁそうは言っても、本当に歪んで聴こえるわけではない。そのままの意味でのクリップな歪みを求めるなら、HA単体にそれを求めるのは現実的じゃない。音自体はクリーンそのもの。
この辺は塩梅や判断が非常に難しいが、歪むか歪まないかのギリギリ感、そこから生まれる音を操る快感、楽しさ、そこを求めた場合、HAそのままでやるわけには行かない。
根本の部分、楽器的に美味しい特性だけではなく、絶妙なクリッピングの両方を同時に追求するとなると、HA単独で実現するのはやはり不可能だと思う。
HAをギターで使っても美味しいか、最高に良いかって、そう単純に事は運ばない。
論点がずれてる、難癖のようでもあるが、確実にヒントはある気がする。
③ソリスト的に惹かれる訴え掛ける何か
これまた物凄く曖昧な話だが、前述した要素も含めて考えると、的外れではない感覚のように思えてくる。
分かりやすいイメージ、使用例を挙げるなら、ジャコなサウンド。その美味しさを追求するとなると、ジラウドでは難しい部分を結構感じたりする。
もっと分解して言うなら、リアPUの美味しさ、中域~中高域の押し出し、艶や張り、絶妙な歪み感など、そういった要素を求めていくとジラウドは少々、淡泊な印象を受けるかもしれない。
この辺り、福田さんも実は同じような感覚でいたんじゃないか、そう感じる部分、そんな話も結構あった。
前述したネオパッシブにファンクグルーバーなど、そのまさにジャコサウンドを出すのにおすすめしていたり、フレットレスに関してはそれこそ、パッシブそのままでも良いんじゃないかぐらいの感じでいた気がする。
クリーンな音にしすぎてしまうと淡泊で物足りなくなる。特にリア単体では薄くなってしまう感がある。そこをもっと詰めていこうとすると、アクセラレータ直やHAはスッキリしすぎてる印象がある。
想像だが、過渡特性の追求、それを至上とした場合、前述してきた艶や奥行きが希薄になってしまう面があるのかもしれない。
だからと言って、味付けがあまりに濃すぎるとか、閉口するほど鈍臭すぎるなど、そういうのは論外ではある。
一方、応答性の追求ばかりに寄りすぎてしまうのも、さまざま求めるとやはり、バランス良くない面がありそうだ。
ソリスト的に見ると「ジラウドのジョイントはハイポジションが弾きづらい!」ってのも合わない要因として大きそうではある。
加えて、決してそれだけとは言えない部分、弾き心地とはまた別の感覚、合わない面が存在してる可能性も考えられる。
音の伸び方や余韻、そういった部分での味わいなど、そういった要素にピンと来ない部分があると言うのも、頷けるところがある。
そしてそれと言うのは、ソリストに限定された感覚ではないとも思う。
ジェマーソンの研究を深く行っていた、それに合わせて機材も独自に厳選、そんな晩年の福田さんのスタイルを考えてみても、絶妙な歪みや音の膨らみを求めていたのは明らかではないかと。
そこで安易にビンテージ機材に行かない、あくまでオリジナルにこだわったのが、本当に素晴らしい。その姿勢をやはり、尊敬してやまない。
ただ、考えたい事はある。
そこに今は興味を持っている。
【雑感】
こうして考えてみると結構あるもんじゃないか、興味が湧いてくる事も多くて面白い。
「それなら違うアンプ使えよ!」ってのまぁ、その通りだとは思うし、HAに求めるところじゃないと言うのも確か。
ただ、その「求めるところじゃない」って感覚が事実としてあるのが、重要なポイントな気がする。
そこについて考えてみると、また一つ根本的な問題が見えてくる。
要するに、タッチ単独で音が作られるのではない、いくら大事な基礎だ重要だと言っても、それだけで全ての解決が出来るわけじゃない、手を出すには困難な面も多くある、その実感ができる。
クリーンそのものな特性と反応、その素晴らしさと恩恵をずっと受けてきた一方、それだけじゃ実現できないものへの理解、感覚が自分の中で希薄だったんじゃないかと思えてくる。
しかし、そうなってしまった要因として、多くの楽器用機材のそれに不満を抱いていた、納得できる物がなかった、その事実を無視するわけにはいかない。
こんなのを通すぐらいだったらHA直の方がいい.....何も通さない方がよっぽど良い.....音色は変わるけど全てが駄目になる......そんな事を多く味わい、絶望もしてきた。
だからこそ今、ジラウドを弾いているのだと、そこを安易に認識し始めたり、忘れてしまったら、また不毛な堂々巡りである。
JFDT-HAの先を考える...... テーマとして面白いし、自分でもめちゃくちゃ興味湧くけど、やはりと言うかまぁ、とんでもない難題だと改めて痛感する。
でも本当、イメージとしては持っておきたいし、刻んでおいて損は無いと思う。
HA単独では実現できない事がある。手が届かないところがある。つまりは、それだけまだ発掘してない部分がある、楽しみが眠ってるって事だ。
メタルをやろうが、歪みを求めようが、福田さんは本気で接してくれた。全く好みでない事だろうと、否定な感が強くなろうと、自己の確立、意志を尊重してくれた。
ジラウドだけが絶対の真実?絶対の結論?先に進む事、求める要素などもう存在しない?それだけ見てればもう全て解決?満足して終えるべき?
そんな風に染まってしまいそうな価値観を自ら切り崩してきた、前に進み続けたのも、あの人の偉大なる姿なんじゃないか、自分は強く感じる。
長くお世話になったからこそ、現実逃避的な依存はしたくないし、盲目的信仰を持つ気なども無い。そんな自己の放棄や思考停止は失礼にあたる。
可能性、希望、常に秘めておきたい。
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