縦振動のタッチ (40)
ローB弦の鳴らし方と実験 先日のおさらい
先日の記事の内容。
こちらでもあらためて触れておきたいと思います。
まずはこちらの動画をご覧ください。
タッチが酷いと音量も低音も出てくるのが遅くなるという実験です。
アンプのLEDを見ても明らか、最大音量が来るまでに2秒前後の遅れがあります。
この動画を見ても聴いても明らかな通り、音の出方がまったく違う場面がありますが、LEDが一瞬で点灯する方が縦振動を意識したタッチ。
低音の立ち上がりも良く、その密度も比較になりません。
終盤、4分音符を弾く感じで鳴らしていますが、こうすると問題がよりはっきりするところ。
・低音が出てる前に次の音を弾かなければいけない
・刻む場面ではコ~ンという貧弱なアタックが響くだけ
・音程感も微妙で音も細く存在感もない
・音量バランスも粒も揃わず不安定
簡単に考えるだけでもこんな問題点が挙げられます。
極太でありながら張りが弱いローB弦。
その力強そうなイメージとは裏腹に、タッチが悪いと出音は露骨に貧弱、アタックから何から頼りないことになってしまうから恐ろしい。
縦振動のタッチとローB弦
ローB弦の問題は張りが弱く、いとも簡単にたわんでしまうこと。
横に引っぱってしまったり、ひっかいてしまえば、それが音になって表れることになってしまいます。
動画の印象だけで判断した場合、縦振動を意識している方が強い力を使っているように感じられるかもしれません。
でも実際は逆なんですよね。
引っぱってひっかくように弾いている方が弦の余計な抵抗を受けているし、それだけ力も必要で負担もかかっている弾き方をしています。
一方、縦振動を意識して弾く方はと言うと、
・ほんの軽く垂直に押しこむだけ
・そこから指を綺麗に通すだけ
・力を入れず本当に軽く鳴らすだけ
大袈裟でも誇張でもなくこんな感じ。
めっちゃくちゃ軽く弾いています。
それでも弦が暴れずに良い方向に振動していれば、劇的なぐらい音は変わります。
ローBを力強いサウンドで実用的に鳴らしたいのであれば、とにかく軽く鳴らすことが重要。
36インチスケールや超極太弦など、そうなるとどんな張りなのかは知りませんが、一般的な34インチや張りが弱く感じるローBであれば、条件は一緒でしょうね。
ほんの少し弦を押しこみ、さらっと綺麗に鳴らす意識をするだけ。
それで出音も立ち上がりも別物になります。
ローBが弱いのは本当に楽器のせい?
動画の中での楽器のセッティングはほとんどパッシブ。
アンプ側のEQもスルー、ただボリュームを上げているだけ。
音の太さと立ち上がりについては、タッチのみで変化させています。
そう考えれば本当、
・プリアンプで低音をブースト
・コンプでびっしり揃えて補正
・PUやエフェクター選びで苦悩
こういう作業を真っ先に考えたり意識したり、それで悩むのがいかに不毛であるかが分かるというもの。
極論なようですがローBに対する悩みの多くは、
『タッチが悪い』
実はこれが原因である可能性も高いのではないかと想像します。
良い5弦を探すのが難しいことは身を持って知っていますし、楽器遍歴を考えると迷走ばっかりしていた自分。
だからこそ分かると言いますか、今の世の中にある優れた弦や楽器の流通を考えるに、ローBの音が致命的なぐらい細い、露骨に小さいなんてことがあるとは思えないのが正直なところ。
少なくとも、
・34インチじゃ話にならない!
・パッシブでローBとか有り得ない!
・ハイエンドじゃないと駄目なんだ!
みたいなことはないでしょう。
繰り返しますが、ちょっとした意識で劇的に音質も立ち上がりも向上します。
悩んでいる方は是非、タッチコントロールを試みてほしいところ。
右手優先のセットアップを意識してみる
弦の本数に限らず、これも意識すべき重要なポイントだと考えます。
そもそもの話、低音弦と高音弦で張りが同じになるわけがないし、振幅の大きさも同様になるわけがありません。
それを解消するために、低音弦側と高音弦側で異なるスケールに仕上げた楽器も存在していますが、まぁ、あれがスタンダードだと認識するのはちょっと厳しいところ。
つまり、その違和感をなくしたセットアップをいかにするか、どの弦を弾いても心地よい均一感を得られるようにするか、それが大切になってきます。
簡単に言うと、
・高音弦は下げ気味
・低音弦は上げ気味
この状態に駒を調整するのが早いですね。
右手のタッチと相談し、なるべく張りが均一に感じられるようなセッティングしていくことをおすすめします。
ただし、張りが欲しいからと低音弦を上げすぎてしまうと逆に音程感が悪くなったり、響きもおかしくなる為、極端な調整は推奨しません。
弦高を上げすぎると振幅が大きくなりすぎたり、かえって扱いづらく暴れや音痩せを生む原因にもなりかねないから要注意。
それでもまぁ、指板Rに律儀に合わせてベタベタに低いとかよりはマシなのかな?
・ローB弦の弦高が明らかに低すぎる
・振幅する余裕が全然ない
・押しこむとPUにぶつかってしまう
こういうのは論外と考えて問題ないんじゃないかと。
実際、こういう状態のベースが売っていたことがありますし、結構な値段でも未調整だったりする場合があるので油断はできません。
テーパー弦やエクスポーズド弦についても注意が必要ですね。
あれを張って駒の調整をしていないとなると、それは酷いことになります。
全部がその仕様ならともかく、ローB弦だけダラ下がりとか勘弁というもの
タッチの向上を志したり、その意識をするのであればこそ、楽器側がそれに応えてくれるように調整をすべき。
多弦を弾くなら尚更でしょう。
タッチに違和感がある状態を放置しておくべきではない。
5弦ベース、6弦ベース、4弦でも多弦でもタッチで音は変わる
前述の動画は極端な弾き方をしていますが、一方、ああなっているのも決して珍しくはないことだと思っています。
それぐらいローB弦の扱い方というのは難しいですし、縦振動のタッチというものが一般的になっているとも考えていません。
ローBの鳴らし方がどれだけ研究されているのか、それを唱えている人がどれだけいるのかそれも分からない。
でも本当、音だけ耳だけの問題ではなく、ああやってアンプの反応などを見ても確認できるように、タッチで音が変わる事実に間違いはありません。
『縦振動のタッチ』という、それそのものを意識するかはともかく、弾き方の工夫次第で音が変わることを否定するのは不可能でしょう。
現実逃避的に楽器のせいにするのも考えもの。
プリアンプやエフェクターなど足元で解決を図るのも不毛。
買っては売りの繰り返しは虚しい消費と時間の浪費になる可能性が高い。
楽器屋の対応や売り文句なんてのもテキトー。
一昔前は、
「34インチは厳しい!」
「33インチじゃ無理!」
「35以上じゃなきゃ駄目!」
こんなこと言ってたもんですが、それも今やどこ行ったって話です。
「33、32、いや30インチでも遜色なし!」
これですもんね。
こんな宣伝とか話に付き合ってないでタッチを磨いた方がよっぽど健全。
それだけ自分が信用もできるし、安心にも力にもなる。
多弦ベースを使いこなすのであれば、タッチの向上は必須。
縦振動のタッチを習得を志せば、ローBのサウンドも劇的に向上します。
動画にもある通り、電気的にも嘘偽りなく変化が起きます。