【ベース談義】 太い音の出し方を考える (23) 弦の認識と静止について考えてみる

太い音の出し方を考える (23)

 

今回のテーマはどういうことかと言いますと

 

「振動してる弦にいかに触れるか?」

 

「振動してる弦をいかに確実に止めるか?」

 

この点について疑問が湧いた為、ちょっと考えてみようかと思った次第。

 

基本は弦に確実に力を伝える事

 

太い音を出すための基本として認識しているのが、弦に確実に力を伝えること。

 

どんなに一生懸命振りかぶろうが、必死に鍛えていようが、実際に触れて力を伝えなければ、弦に振動をさせることはできません。

 

これは(3)【指のスタート地点について考える】の項でも触れた通り、太い音を出したいのあればまずは、指と弦が触れている状態から力を加えることを意識した方が確実だと考えます。

 

弦が意思を持ち自発的に勝手に振動し始めるなんてことは有り得ない。

手をかざしたり念仏唱えてお祈りしても無駄。

プレイヤーが弦を動かし振動させなければ音は出ません。

 

力の溜めをつくるのは難しい

 

『弦に触れてから力を加える』

 

この点に間違いはないであろう一方、実際に演奏するとなったら、そうとばかりも言ってられないのが現実。

 

シンプルな刻みであろうと、次から次へと一瞬で音を出さなければならないもの。

 

長い音符、思いっきり音を伸ばすにしても、不自然な切れ目がないように鳴らしたいのであればやはり、ごく一瞬で音を出さないといけません。

 

一音一音いちいち右手を目視、よく確認してから弾くとか、大げさな溜めをつくるなんてことはやってられない場面がほとんど。

 

ほんの一瞬で確実に力を伝え、弦を鳴らさなければいけないという、非常に高度な作業が求められると考えてよいはず。

 

弦を静止させる

 

ここで今回の本題。

 

一瞬で弦に力を伝えることが難しいのが現実な一方、それをやらなければ音は細くなっていくばかり、小さくもなってしまうものでしょう。

 

弦が全然振動していない、生きた信号として届けることもできない、大元になるものが貧弱極まりない状態はいただけません。

 

エレクトリックベースと言いながらも、電気的に無理に増幅しようとするだけでは解決しきれないことが沢山あります。

 

では、そのしっかりした弦振動を実現するにはどうするか?

それを問われたらやはり、

 

『弦に確実に触れる』

 

これが大事なんだと答えが回帰しそうです。

 

たとえば実際に弦を鳴らしてみましょう。

 

その後、指先の方でおそるおそる超ゆっくり触れてみるのと、肉厚な部分でしっかり一瞬で触れてみるのを比較してみると面白い。

 

どちらの方が音がぴたりと止まるか、その先の動作をしやすくなるか、力を伝えやすいか溜めやすいか、試してみるとイメージが伝わりやすくなるはず。

 

弦がしっかり振動している場合、ほんのちょっと軽く当てるぐらいじゃ、綺麗には止まってくれません。

 

妙なびびり音が鳴ってしまったり、意図せぬハーモニクスが鳴ってしまったり、歓迎できない異音が鳴り響くことにもなりかねない。

 

次の音を出す準備もできないし、力を伝えることも難しい。

極論、「弦振動で指がはじかれてしまう」とすら言えるかもしれません。

 

一方、しっかり当てれば当然、弦は静止します。

弦にちゃんと触れて認識もしているのだから、力も伝えやすくなります。

 

太い音を出したいのにもかかわらず、まともに弦に触れることもできない、確実に止めることもできないのはまずいですよね。

 

「指を動かす軌道上になんとなく弦が存在する・・」なんて認識ではよろしくない。

弦がそこにあることをちゃんと理解し、確実に触れることもできなければいけません。

 

速く弾くにもゆっくり弾くにも弦を確実に認識する

 

弦にしっかり触れるのはよい一方、本当に一瞬で音を出せるようにしなければブツ切れになってしまいますし、まったくスムーズでない演奏になってしまう恐れもあるのが難しいところ。

 

触れている面積が大きいほど、いざ弦を振動させるその瞬間に邪魔になる可能性も高くなります。

 

力任せになったり、変な方向に引っぱってしまうことも考えられるから厄介。

 

だからこそ真に一瞬で鳴らせるタッチのスピードが必要、超瞬間的に弦に力を伝える能力を磨く必要があるのではないかと考える次第です。

 

そのためにもまずは弦にしっかり指を当てる。

すでに振動している弦ならそれを確実に止める。

一瞬で静止させた後、力を伝えて振動させる。

 

この技術を磨いていくべきなのではないかと。

 

超が付くほどの速弾きでも説得力がある人と、何だか音が団子になってハッキリしない人と、実はこのあたりに差があるのかもしれませんよね。

 

速く弾くに、いちいち弦を掴む意識をしてる暇なんて本当はないんだけれども、実はそうとばかりも言えない。

 

超高速の中でもしっかり弦を認識しているからこそ、説得力のある速弾きの実現が可能になると見ることもできそうです。

 

また、これは右手に限った話ではなく、左手のコントロールも超重要になるのは言うまでもないことでしょう。

 

弦を鳴らすにしても止めるにしても、右手だけに任せる仕事ではありません。

両手を絶妙なタイミングで使用してこそ、良い演奏が成り立つというもの。

 

ほんの軽く触れているようにしか見えないタッチでも、歯切れよくパンチもあるサウンドを叩き出す人がいますが、それで左手の使い方が甘いなんてことは有り得ないと考えます。

 

左手が弱いのでは実現不可能。

どんなに右手を鍛えても無駄とすら言える。

 

前述の話と共通させるのであれば、押弦してから浮かすスピードが甘いのでは、それだけバズが響くことにもなりますし、その逆もしかり。

 

押弦途中の段階でもう右手は鳴らそうとしまっているなど、それではせっかく鍛えたタッチも活きてはこない。

 

ごく軽いタッチにせよ、ろくに弦に触れることもできていないのと確実に弾けているのでは、まったく意味が異なります。

 

音の立ち上がりにも粒立ちにも影響が出るのであれば、タイトに歯切れよく弾くにも状況は大きく異なることになってしまうはず。

 

スタッカートで弾くにしても、押して離す工程にするのか、離すだけで済ますようにするのか、その違いでも話はかなり変わってくる印象。

 

・超速くかつ太い音で鳴らすならゆっくりしっかり時間と弦を捉える

・ゆったり長く響かせ続けるなら限りなく一瞬で音を鳴らす

 

こんな逆めいたことも言えそうだから奥が深い。

 

とても一朝一夕、一筋縄でいく話ではありませんが、高めていくことができれば実はやるべきことも意識することも一緒、全てが繋がり一つになると覚醒することも可能かもしれません。

 

まぁ、それは机上の空論か絵空事みたいなようですが、いずれにせよやはり、我々が弾くのは弦楽器であるという事実に間違いはありません。

 

ならば弦をちゃんと認識することが大事。

動かすことも止めることも自由にコントロールできた方が良い。