縦振動のタッチの研究 (13) 遅いアクティブベースへの疑問 

縦振動のタッチ (13)

  

アクティブは嘘っぽい音でパッシブは自然な音?

 

「誰が弾いても同じ感じがする」なんてことがよく言われていたりもするアクティブ。それに対する反論もあるし同意でもあるところ。

 

インピーダンスの面を考えるならパッシブそのままが理想とは言えず。パッシブだからと純粋で素直な音が出てくれるとは自分はまったく考えていません。痩せた元気のない信号にしておいてベース本来の音だと言うのは何だか滑稽。

 

ボリュームも何も付けずPUからジャックに直結なんてやり方なんかもあるけれど、これも疑問な点が多い。ケーブルが長かったりアンプの入力インピーダンスが低かったりした場合、それの何がピュアな音なのか誤魔化しがない音なのか?実際はかなり微妙に思えます。

 

高出力で癖の強いPUやタッチに寛容なハムに依存したり、癖の強いアンプやエフェクターなどを好むのも釈然としません。それで「パッシブ最高」なんて主張するのもやはり疑問。

 

粗悪なプリアンプは確かにきつい

 

パッシブそのままを称賛することに疑問がある一方、アクティブが最高と言うのもやっぱり違う。癖の強いプリアンプに辟易、特有の気持ち悪さに閉口、違和感を覚えるのは実に同感。

 

個人的な好みから言えば一番気持ち悪く感じるのは『タッチレスポンス』。音色、癖、操作が面倒など、人それぞれ理由があることかと思いますが、タッチに対する反応が悪い、音が曇って遅れてくるような違和感への嫌悪って半端じゃありません。

 

高速な応答を求めるプレイヤーにとってタッチレスポンスが悪いって本当に致命傷。音の出方に遅延を感じるレベルの楽器の気持ち悪さって尋常じゃない。常にストレスと隣り合わせもいいところ。

 

極論じみているかもしれませんが、「アクティブ=余計な部品を沢山通る」と考えれば反応が遅くなるのも必然と言えそう。信号の遠回りになってしまうのだとすれば当然、出音に遅れが生じても何も不思議ではない。

 

それに加え楽器本体の鳴りが悪い、反応も遅いと来たらさあ大変。おまけにアンプも悪いと来たらいよいよ救いがなくなってきます。出音は常に遅れて鈍臭い、全然抜けてこない、曇って音程感も微妙など、それで必死に解決しようと頑張るとかある種の地獄絵図。

 

音の違いとか速さなんて思い込み?

 

「そんなもの人間に分かるレベルの話じゃない!ぜんぶ思い込みだ!」

 

こういうツッコミもあるかもしれないけどそれは果たしてどうか?人間って動物をあまり甘く見ない方が良いのではないかと自分は考えます。

 

1mmにも満たない紙を認識できるしその感触もちゃんと分かるのが人間。ほんのちょっとの棘が刺さってるだけでも痛みや不快感を認識できるもの。

 

音楽にしても実はそもそもがとんでもない世界。 16分音符や32分音符など当たり前のように認識してるって何じゃそりゃと。無意識レベルで言えばさらにその上の細かい音符や感覚も認識してると考えれば、そう安易に否定できなくなってくるんじゃないかと思います。

 

演奏とはどれだけ短い時間と瞬間をコントロールして成り立っているものなのか?こうして言葉にしてみるとまた色々な意味で興味深くもなってきます。実際に演奏をする当事者の感覚とは恐ろしいほどに鋭敏。気のせいでは済まない事実も多く存在しているはず。

 

それを考えてみればアクティブに違和感を覚えるのも不思議でも何でもなくなってきそう。むしろ当然とすら言える感覚でもあるかもしれません。

 

「高域がうるさい=速い」ではない

 

アクティブは不自然とか遅いなど言われてしまう原因ってちょっと悲しくも思えるところ。それぐらい粗悪な回路が溢れている証明なんだと自分は感じます。真にレスポンスに優れている回路を知っている身としては「アクティブは遅い!」なんて断ずることはできません。

 

不自然にギラギラしたり特有の嫌な感じが出たり、それがアクティブの特徴とは考えたくない。でも実際、そう感じるものが存在するから仕方ない。まずいことにそれがスタンダードみたいな扱いになってるのも誤解の元だと認識。

 

・立ち上がりが悪く低域は特に鈍重

・音が引っこんで前に出てこない

・アタックもアクセントもはっきりしない

 

となると音抜けやアタックを意識してハイを足したくなるもの。ところがそもそもの特性がめちゃくちゃ、最初からおかしな状態になっているのでは困ります。根本的に音がおかしい中、それをさらに加工してしまうともうどうにもなりません。

 

だったらパッシブの方がいいと判断するのも必然。何も通さずシンプルに行きたくなるのも当然の選択。無理のある加工に加工を重ねるよりそのままストレートに勝負した方が良い結果を得られるのも納得。

 

レスポンスが良い、立ち上がりが速い、自然に音が抜けてくる等、そういった感覚というのは高域を足してなんとかなるというものではないと痛感。「音抜け=耳に聞こえやすい帯域がどれだけ出てるか?」って単純な話とは実は異なる問題のように感じます。

 

異常なハイなど出さなくとも抜けてくる音はあるし、特に加工せずとも存在感のある心地よい音というのが絶対に存在する。粗悪なプリでノイズレスに自然にハイをブーストできるとは思えないし、低音にしても実用的に変化させられるものは少ない印象。

 

基本特性が酷い・・・反応の遅さを誤魔化すために不自然な高域を追加・・・上がうるさいから低音を足したい・・・音がまとまらならコンプを通したい・・・こういうのは本末転倒。

 

もっと根本的な改善を図った方が絶対良い。

 

粗悪な回路による無個性化への疑問

 

アクティブにすることで積極的な音作りを狙ったり、独自のキャラを出すために使うのはよく分かる話。実際、自分もなんだかんだそういうの大好きです。

 

ただやはり、それが苦手な人も多いことだと想像。 瞬間的なアタックや立ち上がりに対して足枷になってしまうのだとすれば、そりゃ避けたくなるのも当然。タッチコントロールに対する影響が大きく出てしまうことを良しとしないのも凄く分かる感覚。

 

原型とは異なる音の加工。これが強制的にされてしまうような回路は色々な意味で問題。良い方に出ればいいけど悪い方に出るとタッチの無個性化にも拍車がかかっていくことになるんじゃないかと思います。

 

よく言われている「アクティブは誰が弾いても同じ感じ」「いつでもどこでも誰でもそれなりな音になる」なんて話にも頷けるところがあります。

 

音の初動の最も大事な部分。これが再生できなかったり露骨に反応が遅れるなど、そこに違和感があるとやっぱり気持ち悪い。タッチを大切にする人間からしたら致命傷になる問題でしょう。

  

縦振動のタッチの習得を志すのであればとにかくリアルタイム性が命。高速な特性の楽器を使った方が正解。変化が分かりやすければそれだけ上達も早く感じ取れることになります。

 

しかし残念ながら遅い特性のものが溢れていたりするのがこの世の中。通しただけで音が痩せたり遅くなったり、そういった印象を受けるものが数多く存在しています。

 

音痩せなんかどうでもいい、音が気に入ればそれでいい、使いこなしと音作りが全てなど、こんな意見もあることかと思いますが、これも方向を誤ると大変。

 

「一人だと良いけどバンドじゃ何か・・・」

 

こんな楽器に遭遇してる人も多いはず。根本的な解像度やレスポンスの良さ、音の飛び方や抜け方など、そういった要素に無頓着な場合、そんな事態に陥りやすい。と言うか痛いほど実感しています。

 

そもそも音が濁ってたり引っこんでたりするのは色々致命的。音が前に出てこない、抜けてこないって力んで疲れます。

 

それをEQで異常な加工をしたり後付けでなんとかしようとするともう泥沼。音はさらにおかしなことになり実用外。存在感もなく無個性にもなっていくという皮肉。

 

「個性を出すはずが無個性&実用性皆無へ一直線」

 

楽器の選択だけでなく回路の選択も使い方も誤ると悲惨。

 

無根拠なパッシブorアクティブ論にはうんざり

 

縦振動で弾いても反応がいまいちだったり、恐ろしいほどに鈍く遅い楽器も存在するこの世界。楽器本体の設計も材料も間違うとこうなってしまうのか? 本気で驚愕するほど酷いものがあったりします。

 

それに加えて癖の強いPU、鈍重で特性も悪いプリアンプを搭載するのだから救いがない。問答無用で粗悪な回路を通ることになるアクティブってやっぱり辛い。内蔵プリアンプの質が低いと想像以上に酷いことになるから恐ろしい。

 

ツマミがセンターならフラット?味付けも色付けもない?一番ナチュラルな状態?まぁ、そんわけはありませんよね。ツマミを使わないから自然な状態とはならず。残念ながら通すだけで音がおかしくなる回路があるのが現実かなと。

 

後、声を上げておきたいのは、「アクティブが駄目ならパッシブに切り替えればいい」ってのもそう都合良くはいかないってこと。小さなトグルスイッチすらも粗悪で無神経だったりもするのが楽器の世界。

 

良心のない回路やパーツが溢れていたり、音痩せやレスポンスの悪さの原因が様々な場所に潜んでいたりするから参ります。

 

また、パッシブに切り替えたところでそもそもの話、ローインピーダンスのポットを通ってしまっていては音的な致命傷にもなりかねません。下手すれば最悪な音痩せを招くことにもなってしまいます。

 

「パッシブ=ピュア!」とか「劣化のない本来の音!」だの、まったく説得力のない議論には辟易。インピーダンスのアンマッチングを放置とかその時点で納得できず。無根拠なパッシブ信仰みたいなものを持つのもおすすめできず。

 

ベースはベース ギターもどきになるのは寂しい

 

個人的に思うのは、ギター的価値観やサウンド基準による音作りをしている人が意外なほどに多いんじゃないかってこと。ギタリスト的視点からベースのレビューをしていたり、その感覚のままに音作りをするのは疑問。話が通じないところもあるように感じます。

 

そういうスタイルで行くなら必要なやり方だと納得もできますし、それも一つの表現方法、素晴らしいオリジナリティになると言えるでしょう。一方、世の中の多くのベーシストの悩みや悪戦苦闘を見るにどうもこう、方向性を誤ってる印象を受けること多々あり。

 

「太い音を出したい!」

「もっとベースに存在感を!」

「独自の音とグルーブを!」

 

こう志しているのにもかかわらず、やってることはギター的な音作り。機材もそういった方向のものを求めたり、ギタリスト的な音作りをするって変な話ですよね。反対方向に行ってどうするのかとやはり疑問になります。

 

そのギター基準にしたって過剰なエフェクトを良しとはしないはず。結局は弾き方、ピッキング、タッチにブチ当たるでしょう。ギターでさえそうなのに低い帯域が重要になるベースでそれをやってしまうのはやはり致命的である印象。

 

「中域こそが大事!」なんて意見も分かりますし、そこを中心とした音づくりもあるとは思います。でもだからと言って低音を軽視したり、音痩せを許容しすぎるのは納得できない話。

 

その低い音をいかに充実させるか実用するか?それが勝負どころであり、ベースならではの美味しさと魅力と言えるのではないかと。

 

あれこれ迷って困ったら思いきって一度シンプルにしてみるのがおすすめ。加えてタッチの向上を意識していけば絶対良い方向に音が変わります。

 

エフェクターを多用するスタイルを突き進むにしても元がいいに越したことはありません。より効果的な増幅を実現できるようにもなるはず。

 

音が細いからとツマミに触れる前にまずは弦を押し込んで弾いてみることを推奨。タッチを意識した方が音はより大きく太く成長していきます。

 

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