縦振動のタッチの研究 (43) 今まで失敗してきた事を振り返る

縦振動のタッチ (43)

 

 

積み重ねた失敗

 

「よし!いい感じだ!」

 

と調子に乗っては失敗してきたタッチの研究。

 

変な癖が付いただけで実際には使いものにならない。

そんな酷いことになる場合もありました。

 

良くも悪くも色々と試してきた自分。

長々と語ってるのもその積み重ねあればこそかもしれません。

 

今回はその失敗談について。

 

縦振動のタッチの習得を目指して勘違いしたこと、間違ってしまったことを振り返っていきたいと思います。

 

手首をひねって弾く

 

一番酷かった勘違いはこれかもしれません。

 

「指を長く使おう!」

「フォームをしっかり固定しよう!」

「もっと力強く弾こう!」

 

それを狙ってたどり着いたと思ったスタイル。

 

イメージ的には、

 

『ネック寄りでウッドベースみたいに弾く』

 

みたいな感じかな?

より太く重い音の実現を目指し、力を溜めて一気に弾こうとしていた記憶。

 

ま~、これは駄目でしたね。

いかにもニワカな判断だったと言うべきでしょうか。

怪我の恐れすらある、使いものにならない結果に終わった次第。

 

確かに音は太くなりました。

独特のサウンドは出せていたと思います。

 

しかし、手にあまりにも負担がかかってしまい、長時間の演奏は不可能。

滑らかに弾くこともできず、単音を限定的に太くするぐらいしか使い道なし。

本家ウッドプレイヤーのような弾き方ができるわけでもなく、完全にニワカ仕込み。

 

弾くポジションがあまりにもネック寄りだったためか、倍音構成やアタック感にも難がありました。

 

一聴すると太く聴こえるようでも、実用性はいまいち。

実際には全然抜けてこない、スピード感もない音でダメダメ。

 

自然な弾き方、理想の音とは程遠い、無惨な結末でした。

 

力任せに鳴らそうとする

 

上記の失敗とも被ってくるこれ。

 

「太い音=腕力!」みたいなイメージからの脱却は難しいもの。

 

「太い音」に限らず、「強い音」「抜ける音」「個性的な音」など、こういった理想を実現しようとすると、どんどん力んでしまいがちにもなるから皮肉な話。

 

実際、それでこそ生まれるサウンドが生まれるのも否定はできません。

 

しかし、大したこだわりも方向性もないパワー自慢みたいなのは大体、良い結果には繋がらないように感じます。

 

「縦振動のタッチ=太い音=力任せ!」

 

このイメージは明らかな誤りと勘違い。

 

あまりに貧弱、フィジカルが弱すぎるのはそもそも論外だけど、とにかく弦を一生懸命鳴らせばそれで太くて良い音になるという、その安易な先入観は外した方がよい。

 

自分が失敗した力任せ体験をもう少し言うのであれば、フラットワウンドを張ったOPB。

縦振動のタッチのトレーニングに最適な一方、実はこれには注意が必要な面もあります。

 

その理由は何か?

 

「それっぽく聴こえる」

 

これが問題。

 

OPBでトーンを0にして弾くと、それだけでいつもより太い音が出ているように感じてしまう為、そこを勘違いしないように意識すべき。

 

自分では力んでないつもりでも、どんどん力が入っていってしまうようになったり、高域がないのを良いことに乱暴に弾くようになったり、気付かない内に演奏が荒れていってしまうのが怖い。

 

それでいざシビアな楽器を弾くとさあ大変。

バズは出るわ、カチカチうるさいわ、音は潰れてるわ、実用外の結果に唖然。

 

粗を隠すように音をこもらせたり、ハッタリで音を太く大きくしようとしても駄目。

 

アポヤンド時の打音を大きくするのも気持ち良い弾き方なんですが、これも見せかけの音になりがちなので注意した方がよい。

 

・いかに自然な状態に持っていけるか?

・実のある凝縮された音を実現するか?

 

この意識が遠くなってしまうと特殊な奏法になって終わり。

 

力任せは悪い癖にもなりやすいので、その修正も大変です。

安易に得た結果に驕り高ぶらないよう、気を付けたいところ。

 

ドラゴンボールで言えば、パワー自慢の変身に陥ったトランクスみたいなもの。

その変身の欠陥にいち早く気付いた悟空は、スーパーサイヤ人であることを日常とするのを決意。

 

力に頼らず柔らかく自由にかつ、より強く、高みを目指しました。

 

縦振動のタッチ=単純な腕力的な認識というのは、トランクス的なその理想しか見えていない状態とも言えるかもしれません。

 

指を無理に伸ばそうとする

 

これも力み絡みの話になっちゃいそうなところ。

本当、それぐらい力加減の問題って難しいです。

 

指を伸ばすことで何を目指していたか?

 

・第三関節の利用を意識

・より長く強く指を使いたい

・綺麗に指が伸びてる方が理想なはずだ!

 

簡単にまとめるとこういった点になるかなと。

 

実際、指を丸めてせせこましく弾くより、こっちの方が強く使える印象があります。

タッチのスピードも生まれやすいし、長く大きく使おうとする方向自体は間違ってない。

 

一方、弦に触れる段階、それ以前、最初から指が伸びきっちゃってるようだと、問題が発生するのも事実。

 

とりあえず何がまずいかって、

 

『疲れる』

 

単純にこれがきつい。

 

人間、脱力してるのに指がピン!と伸びてることはありません。

それを維持するだけでも意外なぐらい大変な意識と作業になります。

 

また、この状態だと弦を垂直に押しこむのが難しくなる面もある。

 

最初から力んだ状態なのも問題ですが、カチカチになっているところからさらに力を入れる作業が加わってしまうという、これはかなりの問題ですよね。

 

力が入って弦に固定しようとしている分、指が離れずに引っぱってしまう可能性も高くなるし、そうなると残念ながら力任せのタッチと同じ結果や、横弾きからなかなか脱せなくなってしまうかもしれません。

 

また、理想実現のための皮肉、本末転倒になると言うべきか、

 

『加速できない』

 

この状態になってしまうのがまずい。

 

指全体をしなやかに使うことにより、瞬間的なスピードを得るのが一つの理想。

しなりを利用したり、指の構造を考慮したり、利用できる点は沢山あります。

 

しかし、そこで指が伸びっぱなしになっているようだと、動きが非常に制限されてしまうわけですね。

 

常人離れした領域まで鍛えることにより、実用レベルに高めるのも可能だとは思いますが、それは正直、茨の道か特殊奏法としての認識になってしまうように感じます。

  

本当に瞬間瞬間の勝負、確実で理にかなった力の出し入れを身に付けない限り、高みに達することは不可能だと痛感。

 

2013年に撮ったこの動画とか今では失敗例ですね。

指を伸ばしすぎ、アポヤンドの打音に頼りすぎ、親指で弦を押さえつけすぎ。

指のしなやかさ、瞬発力がありません。

 

www.youtube.com

 

弦を軽くこするだけ

 

「もっとスピードを意識!」

「脱力しなくちゃ駄目だ!」

 

と考えて陥るのがこれ。

弦を表面的にただこするだけって感じ。

 

『脱力』してるのではなく『貧弱』になってるパターン。

 

弦振動の方向を意識するのもいいですが、根本的に楽器を鳴らすことができていないんじゃ音が太くなるわけないし、しょぼい音質で音量もどんどん小さくなるだけ。

 

スピードを意識するのは分かるんだけど、指が張力に負けて弦を全然押しこむことができない、軽くなでてるだけでは良い音はしてくれません。

 

まず基本になるのはやはりこれ。

 

『弦を振動させること』

 

方向だけ意識、理屈だけで攻めようとすると、意外と失敗しやすいと感じます。

弱々しく弾いて小綺麗にまとまってるだけじゃ駄目。

 

これは本当に難しいですね。

 

『丁度いい力加減』

 

一生悩みそうな要素です。

曖昧な言い方だけど、たぶん、求められるものは具体的。

 

脱力を勘違いしたカス当たりみたいなタッチでは実現できない。

一方、力んでたらもっと実現は厳しくなる、実用性もなくなる。

 

・もっと根本的なパワーを身に付けるべきなのか?

・それとも無駄な力が多すぎるのか?

・あるいはその両方?

・足りないものと余ってるものが分かってないのか?

 

めっちゃくちゃ悩むポイントです。

 

考えすぎで結果が出ない

 

上でもちょっと触れてますが、頭でっかちがまずいのはどの世界でも一緒かなと。

 

やっぱりあれです。

 

『まずは練習』

 

とにもかくにもこれが基本。

 

あれこれ考えすぎで怖いのは、失敗を恐れること。

確実な正解だけを掴みたいと願う結果、行動しなくなるのが怖い。

 

「変な癖が付くのが怖い・・」

「今やってることが正解か分からない・・」

「そもそも何をやっていいか分からない・・」

 

こうやってトレーニングにすら怯えてしまうのは深刻。

 

楽器、音楽に限らず、「絶対に失敗したくない」というメンタルは、あらゆる状況において足枷になることも多いから厄介。

 

そう考えるのも当然だし、そうあるべきだとも思います。

 

一方、実は理想が曖昧、イメージもボヤけたままとか、そんな状況なのに苦悩してもたぶん、良いことってほとんど無いんですよね。

 

だったらもう、とにかくがむしゃらに練習。

理想だけ具体的にしておいて突っ走る方が、どんな形であれ結果が出るんじゃないかと。

 

ある種の理想論、ピュアすぎる姿勢だとも思うのも確かだけれど、やっぱり、文字書いてるだけ読んでるだけで極められるとか、そんな世界じゃないのは間違いありません。

 

理屈先行、情報先行、これは気を付けたいポイントですね。

表面的になぞって何も身に付かないという、それは本当に不毛。

 

精神論、根性論が嫌いと言っておいてなんですが、メッキで終わらせたくないのであれば、血のにじむような努力って絶対に必要。

 

それか、特に努力とも思わない。

全てが楽しみだと勝手に突き進めるのが望ましい。

 

考え悩むだけで終わるのは無力。

大した力にも実にもならないと痛感する次第。

 

縦が分かれば横にも音楽にも活かせる

 

色々と考えたり、実験、実践して分かってきたことがあります。

 

『全ては繋がる』

 

胡散くさいようだけど本当の話。

 

縦振動のタッチを目指して意識してきたことの例を挙げますと、

 

・脱力

・指を上手く使う

・無駄をなくす

・弦をしっかり認識する

・まずは一音一音を確認

 

簡単にまとめるとこんな感じ。

 

これって速弾きにも活かせますよね。

ロディックに弾くにも大切な要素。

音を長く伸ばすにも集中するにも使える。

 

より良い音を求める、演奏を自然で豊かなものにしようという、その意識が芽生えるだけでも絶対に違う。

 

「そんなことは言われなくてもやってる!」

 

と思うのも分かるんですが、これが全然そうじゃなかった、認識が甘すぎたと猛省したくなるのが、ジラウドの福田さんが叩き出すサウンドでした。

 

ここで勘違いしてはいけないのは、

 

「縦振動が絶対じゃない!音楽は自由だ!」

 

なんて安易に反感を持ったり、幼稚にアンチ化すること。

 

福田さんは縦振動しかやらない人なのか?

言うまでもありません。現実は違います。

 

ジラウドの製品ラインナップをちょっと見ても分かります。

弓で弾けるW-BASSのような楽器があれば、普通のフレットレスだって当たり前に存在。

 

ジェマーソンチューンのプレベにいたっては、縦振動だと逆に音が小さくなる、横に弾いた方が太く大きな音が出るという、そんな事実だってあるのだから面白い。

 

大切なのはやっぱり、

 

・何を実現したいのか?

・どんな音を出したいのか?

・どういう音楽にしたいのか?

 

これなんでしょう。

 

そういう意味では、

 

「縦振動が絶対じゃない!音楽は自由だ!」

 

これを深い領域で主張できるのもジラウドさんならではだと思います。

 

実に多種多様、音楽的であることを志しているから凄い。

厳格な面も多いのは確かですが、真にこだわりを持っている人ならば当然の話。

 

長くジラウドに通っていますが、いまだに勉強になることばかり、脱帽するばかり。

 

縦振動のタッチについて言えば、表面的な部分ばかりしか追えてないことが最大の失敗、自分の浅さの露呈とも見れるかもしれません。

 

とは言えまぁ、それだけ失敗してきたり、底も見えずに取り組むことができる分、ベースという楽器に触れるのが凄く楽しくなりましたよね。

 

『タッチコントロール

 

ここに目覚めるだけでもベース人生変わります。

絶対もっともっと楽しく自由に弾けるようになる。

良い音が出せりゃそれだけ幸せにもなれます。

 

音を変えたいならまずタッチを変えるべし!