縦振動のタッチ (22)
ベース座って弾く際
まず楽器を右脚の付け根か太腿のあたりに乗せ、今度は右腕を乗せる。そして当然、左手はネックを支えるか弦を押さえようとする。もちろん自分もやりますし、楽器を安定させるために本能的にそうするはず。
ヘッド落ちなどするものなら尚のこと左手だけで支えようとはしません。右脚、右腕、体を使って無意識にでもバランスを取ろうと行動するでしょう。
問題は立って弾く時
座っている時にはそれで安定させることができたとしても、立って弾く場合は状況が一変してしまうかもしれないから厄介。
楽器を脚で支えることができなくなる為、これに頼った弾き方に慣れてしまっている場合、いつまで経っても立奏時の違和感がなくならない可能性があります。せっかくの練習の成果が上手く出てくれないことも考えられるでしょう。
・立って弾くとどうも安定しない
・音が軽くなる
・思ったように弾けない
ストラップの高さや質に関係なく、そんな心当たりがある人も結構いるんじゃないかと。
楽器は重力には逆らえない
先日のバスケットボールの件とも繋がりそうな今回。右腕をボディ側面、親指をPUや弦の上などに強く乗せようとした場合、確実に下方向への力が加わることになるでしょう。
それを脚がしっかりと支えてくれるなら良いですが、立奏時は条件が変わってしまいます。当然、ストラップを付けて弾くのが宿命。にもかかわらず、下に強い力を加え続けたらそれだけ余計な力と負担の元になるんじゃないかと。
右側に過剰な力が働ければそれをフォローする為、左側にも何らかの影響が発生するのは必然と言えば必然。フォローするどころか左側まで一緒になって一生懸命に下方向に力を入れているのでは笑えない負担にもなってきそう。
楽器を支え落下を防ぐためにストラップがあるのに重力に協力してしまう、自分で落とそうとする力を加えるのというは何とも不毛な話。そりゃ疲れます。
楽器に圧力を加える
縦振動を意識した右手のタッチにしても左手の押弦にしても同じ。楽器本体に対して垂直に圧力を加えるような意識と運動がまずは効率が良いんじゃないかと実感。
座奏時と立奏時の違和感をなくす意味でも、上下に力を加えたりそれで固定するような方法にはあまり頼らない方が良いはず。
楽器のふらつきを解消するためだったり、フォームを安定させるために左手の握力に頼った弾き方など続けた場合、腱鞘炎の元になったりスムーズなフィンガリングの妨げにもなる可能性が高い。
そこで過剰に弦高を下げる選択などをすると悪循環のように音も痩せていってしまう恐ろしさ。これについては自分自身で嫌というほど痛感済み。怪我に苦しみ音の細さに悩み抜いたからこそ今があると言っても過言じゃありません。
なんでそんなことになったかって、
「楽器に全然圧力を加えられてないから」
今だからこそ一つ答えが出せます。
楽器も自分もフラフラ。弦は振動しない。無駄に力んで無駄に消耗。怪我して嫌になってさらに音が細くなって機材に頼っての悪循環。
あんなのはもう御免ですね。
興味深いのはジェームス・ジェマーソン
ぶっとい音を出そうと志してまず気になるのはやはりこの人。タッチについて考えていっても物凄く興味深くなる存在。
写真や映像を見ると分かりますが、右親指をPUや弦に置いて固定するようなスタイルとは異なります。何なら親指は浮いちゃってるぐらいにも見えるのが面白い。弦高も異常に高かったことで有名。軟弱な弾き方など許さないとにかく頑固一徹。
一方、そのサウンドは非常に心地よく太く、弾むようなグルーブも実現。体をカチコチに固めて力んで弾いている印象などまったくありません。
16分音符を積極的に織り交ぜた細かいフレーズでも実に自然に見事に弾き切るのがジェマーソン。それをしかも右手は1フィンガー、人差し指一本でやっているというのだから驚愕。
今後また触れていくことになるかと思いますが、ジェマーソンと縦振動のタッチとの関係は切っても切り離せないものかもしれません。色々研究していくとジェマーソンがやってることに自然と納得してしまいます。
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