フレットレス 選び方のポイント 楽器探しについて考える (3)

フレットレスベース選び

 

 

まず分類してみる

 

「フレットレス」

 

こう一言にしてみても、好みはさまざま分かれるもの。

 

たとえば、

 

・ジャコ系

・ぶっとい系

・ウッド系

エレアコ

・独自系

・フレットがないだけ

 

など、ぱぱっと簡単に分けてもけっこうな種類が存在するんじゃないかと。

 

定番はやはりジャズベースだと思う一方、フレットレスという時点ですでに定番からは外れている気もする為、その分だけ自由度が高くなるとも言えそうです。

 

正直な話、

 

「オールラウンドなフレットレス」

 

これを求めるというのは矛盾な感じもするところ。

 

その為、自分の好みや目的用途をはっきりさせておかないと、そのユニークさや個性の強さに呑まれてしまうことにもなるかもしれません。

 

自分が持っている中で例を挙げるならば、ジラウドのW-BASS。

このベースの場合、弦はフラットワウンド専門、ウッドのような音以外は狙わないことにしています。

 

世の中、ブラックナイロン弦を張ることを前提としているような楽器もあったり、目的に特化させた仕様にした方が唯一無二の強い武器になってくれる印象。

 

そういう意味では、短いスケールの楽器も面白い響きを持つ存在になりますし、その最たるウクレレベースとかだって侮れません。

 

基本的にはライン入りがおすすめ

 

余程に慣れているか専門の人でもない限り、フレットラインはあった方がとっつきやすいでしょう。

 

ただでさえ正しいピッチで弾くのは難しいわけですから、ガイドがないと悲惨なことになる可能性が高くなります。

 

しかし注意点もあります。

指板サイドのポジションマークの位置には気を付けた方がよい。

 

・フレット数を表しているだけなのか?

・音程ピッタリのところにあるか?

 

これで感覚が意外なほど変わってしまう為、絶対に確認すべきポイントですね。

目視の違和感があるとそれだけストレスに直結してきます。

 

自分の好みで言えば、普通のフレッテッドと同じ箇所にあってほしいところ。

見た目気にせず、ポジションマークも絶対にあってほしい。

 

ラインレスなら後者の方が良いんですが、そもそもラインレスは使わない為、ポジションマークは好みは一択。

 

これは本当に好みと感覚の問題ですね。

音程のことを考えるのであれば、生命線にもなりかねません。

 

1PUのサウンドがおすすめ

 

これも自分の好みが多分に入った話ではありますが、フレットレスの場合、1PUの方がそれらしさが出たり、弾いていて気持ち良い印象があります。

 

2PUの楽器だったとしてもミックスサウンドを主にするより、どちらかに振った方が感覚的にしっくり来ることが多いですね。

 

たとえば、前述の「ジャコ系サウンドを狙うとした場合、ジャズベースのような2PUの楽器だったら、バランスはリアPUに寄せた方が絶対に良いでしょう。

 

実際、1PU仕様のフレットレスというのも結構あったりしますし、ブリッジ寄りのポジションとまた相性が良かったり、そうやって使う方がスタンダードとすら言えるかもしれません。

 

ゆえに、スティングレイのフレットレスなんかも意外と良い感じだったりしますね。

ジャズベのリアとは異なるニュアンスがまた独特で美味しい。

 

フレッテッド時の無骨なイメージとは趣を変え、甘くメロディアスに使えたりもするから面白い。

 

そう考えると、1PUの力だけでも成立するような、それで十分に良い音が出せる楽器を選択することが大事ではないかとも思う次第。

 

ジャコ系のサウンドを狙うなら特にそうですね。

リアPUだけでもまったく問題なくイケるぐらいに楽器が鳴っててくれないと厳しい。

 

60年代前半のジャズベをフレットレスにしたものを弾いたこともありますが、「なんでリアだけでこんな良い音するの!?」 と驚愕。

 

そのあまりの別物感にひっくり返りそうになりました。

もちろん買えなかったけど、あれは本当に超良かったですね。

 

・パッシブ+シングルコイルPU1発

・リアPUオンリーでも最高の音が出る

・タッチで音が自由自在に変化する

 

こんな個体があったら間違いなく当たりですね。

 

1弦の音づまりには特に気を付ける

 

音づまりも味わいと見るか完全な欠点と認識するか、それは好みによります。

 

ただ、現実問題、

 

「このポジション伸びないんだよなぁ・・」

 

なんて考えながら弾くのは、かなりのストレスになるものです。

 

サスティーン豊かにメロディックなプレイをしたいなんて場合、デッドポイントが沢山あるような楽器は論外になりかねません。

 

しかしフレットレスの世界、そういった厄介なデッドが目立つ楽器が多かったりするから困りもの。

 

音づまりが酷いものが当たり前のように存在するので、試奏する際はゆっくりと一音ずつ弾き、デッドポイントがないかを確かめた方が正解。

 

ポジションによって音の出方が露骨に変わる、サスティーンがまったく異なってしまうなど、いくら音色にも魅力があったとしてもそれでは実用は難しくなってしまいます。

 

1弦のサスティーンが壊滅的なものには要注意。

びっくりするぐらい音が伸びないやつが本当にあるから厄介な話。

 

指板をコーティングするかどうか

 

耐久性の確保はもちろん、より分かりやすいアタック感やサスティーンなどを求めるのであれば、コーティング指板の方をおすすめします。

 

ラウンド弦をメインにしたりプレイ時間が長く使用頻度も高いなんて場合、指板のメンテを考える意味でもコーティングした方が安心感があるでしょう。

 

一方、明るく軽い傾向になるサウンドが仇になったり、 硬質な触り心地が気に入らない可能性も十分にある為、そのあたりが難しいところですね。

 

前述のような音づまり対策などにも大きな効果を期待できる反面、これもまた強力に好みが分かれるポイントかもしれません。

 

「気に入らなければ剥がす」と、安易に考えるわけにもいきませんし、コーティングするか否かというのは、意外なほど大きな問題になると言えそうです。

 

頼れる楽器店やリペアマンを知っているかどうかも重要なポイントかなと。

 

ホロウ系の楽器には気を付ける

 

「アコースティック感を演出しよう!」

 

という意図で作ってるのは分かるけど、正直、微妙だと言いたくなるものも多い印象。

 

大体の場合、ほんの僅かにホロウスペースがあるだけとか、アンプを通すとまったく効果を感じないとか、Fホールなどの見た目の演出だけで終わっているような感じ。

 

ソリッドとホロウのメリットを両方ころしてしまっているようなものには要注意。

不要な共振を生む原因になる可能性があるし、音が腰砕けになってしまうことも考えられます。

 

音はつまるわ、軽くなるわ、ボヤけるわ、抜けてこないわ、こういう楽器は悲惨。

最初の印象は良くても使っている内に「失敗した!」って気付くことになるかも?

 

アコースティックでもエレクトリックに

 

ウッドのようなサウンドを狙う場合、アコースティック楽器の方に目が行くかと思いますが、本当にそのままアコベを買うのは個人的にはあまりおすすめしません。

 

ウッドのような量感や柔らかさを求めることは困難な印象の方が強いです。

 

と言うのも、エレアコギターを元にしているようなものばかりなので、実際は音がめちゃくちゃ軽かったり、安っぽいだけなことが多いんですよね。

 

サウンドホールもギターそのままな感じだと当然、ハウリングにも弱くなりますし、アンプから再生するには不向きということになる。

 

やや極論になるようですが、生音の充実度は諦め、アンプからの出音がリアルでアコースティックに感じられるという方が実用性も高く、アンサンブルでも強いかと感じます。

 

目的用途によりますが、低音も音量もけっこう出したいのであれば、単純なエレアコベースを弾くのはちょっと厳しいかもしれません。

 

「ピエゾをのせればいい!」

 

なんて単純なものではありませんし、かなり難しいジャンルだと言えますね。

 

そのピエゾにしても、アコースティックベース専用のものがあるとは思えませんし、ギターからの流用が主だから困ります。

 

アコースティックなサウンドで楽器が欲しいのなら、その方面に特化しているか、相当な研究を積んでいるブランドを選んだ方が無難ですね。

 

ギターのおまけ感覚で作られているものは高確率でいただけません。

 

まとめ・雑談

 

フレットレスに関しては正直、

 

「これが最強!」

「何でもこい!」

 

みたいな一本を見つけるのはちょっと無理かなと考えています。

 

汎用性で言えば、自分はジラウドのブラッククラウドの5弦フレットレスを持っている為、それでもうどうにでも出来るとは思っているのは事実。

 

その一方で、何か一歩届かない面があるように感じるのも確かだったり。

 

あくまでもシングルコイルである為、片方に寄せるとどうしてもノイズが出てしまうんですよね。

 

だからと言ってハムバッカーにすると、音の傾向も反応も好みとは違ってしまうかもしれないし、そのあたりが非常に悩ましい。

 

後、前述したように、コーティング指板には良い面も悪い面もあるので、ここも悩みどころ。

 

耐久性はもちろん、立ち上がりの良さやサスティーンなどの安定感を求めるのであれば文句なしなんですが、まぁ、フレットレスってもうちょい柔らかい感じだったり、温かみのあるニュアンスも欲しくなるものです。

 

やっぱり、

 

『木に直接触れる感じ』

 

これは気持ちいいですよね。

 

コントラバスとかの指板がカッチカチにコーティングしてあったら、たぶん、がっかりするんじゃないかと思います。

 

いくらその方が実用性に優れてると言われても、なかなか受け入れられるものではないでしょう。

 

コーティングなしの分厚いエボニー指板で作られたW-BASS。

実際、このベースの音色と弾き心地は最高に気に入ってます。

使いこんだフラットワウンドで鳴らすのがめちゃくちゃ気持ちいい。

 

しかし、特化したサウンドとセットアップゆえ、どの場面でも気軽に使えるとは限らない。

このベースで細かいフレーズをやれと言われても、ちょっと勘弁かなと。

 

そういう意味では結局、フェンダースタイルの方が安心感も万能感もありますし、扱いやすく感じちゃいますよね。

 

プレベのフレットレスとかロックでも普通に使えるだろうし、弦の選択や弾き方によってはウッドのような感じも出せるだろうから面白い。

 

ちなみにですが、自分が今まで手に入れてきた、試してきたフレットレスの中で魅力的を感じる傾向にあったのは、

 

『指板が分厚く高密度』

 

これだった印象。

 

ヤマハのサイレントベースとかにしても、通常のSLB200とリミテッド仕様の方とでは全然違いましたからね。

 

リミテッド仕様の真っ黒なエボニー指板による音色、サスティーン、感触の良さは特筆もの。

トラ目で詰まったメイプルネックということもあるとは思いますが、指板が良いと楽器全体が凄く締まる感じがします。

 

前に持ってた6弦フレットレスなども、安定したバーズアイネックに分厚いエボニー指板の組み合わせで、なかなか凄い楽器でしたね。

 

あれは本当、全音域にわたるほぼ完璧なサスティーン、バランスの良さが素晴らしかった。

 

ジラウドで簡易ネオパッシブへの改造を依頼した際にも、このフレットレスのクオリティはかなり認められていましたし、手放したことをちょっと後悔しています。

 

そう考えていくと、ネック・指板そのもののクオリティが大きく問われるのが、フレットレスの難しさとも言える気がしてきますね。

 

もちろん、フレッテッドでもそれは同じことですが、材料から設計から精度から何から、よりシビアにその全てが求められてくるのではないかと想像。

 

それでいて楽器ならではの曖昧な感覚や、人間が心地よいと思うポイントが直接的に求められるという、何とも難儀な楽器と言えるかもしれません。

 

実に奥深く面白い世界です。

 

フレットレスがメインだったりするというのはやっぱり、ちょっと変わった人だって印象があったり、それだけ独自のものを築き上げていたり、真似できない何かを持っている存在でもあると感じます。

 

自分の体験談を言うのであれば、フレットレスを手に入れたことでタッチに対する感覚が劇的に変わったこともあったり、それがフレッテッドに対する良い影響にもなるから、それがまた楽しい。

 

ここまで長く語っておいてなんですが、触ったことがない人がいるとしたら是非、一度はフレットレスに触れてみてほしい次第。

 

あまり深く難しくも考えず、

 

「何か面白そう!」

 

と感じるものを見つけて弾いてみることをおすすめします。

 

【Godin】とか【Rob Allen】とか、ああいうエレアコベースも面白い楽器ですし、普通のエレクトリックベースと弾き心地も大差ないはず。

  

いつもとは違う新鮮な何かを感じることができるのもフレットレスの醍醐味。

そのままメインにしちゃっても良いぐらい、ベースならではの魅力ってやつが沢山つまってますね。

 

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