太い音が欲しいなら楽器も大事
太い音が欲しいなら太い音がする楽器を弾けばいい
ものすごく単純な話、太い音を出したいなら太い音が出るベースを弾けば良い。当たり前のようですが人間の不思議。「太い音を出したい!」と悩んでいる人に限ってそういう楽器を弾いてなかったりする。
と言うか自分がまさにそれ。望んだ音から遠い楽器ばかり使って悩んでいた人間。それに気付かず不毛な努力をしていたとしか言い様がありません。タッチをおろそかにするのはいただけませんが、現実問題、楽器がよろしくない事実に目を向けることも大切です。
太い音と言ったらジェームス・ジェマーソン
エレクトリックベースプレイヤーの始祖とすら言ってもいい気がするこの人。音が細いと言われることなんてまずありえないでしょう。
ジェマーソンと同じくもはやレジェンド的存在のチャック・レイニーですら、
「なんて軟弱な弾き方だ!」
こうジェマーソンに笑われたとかなんとか。
そんなジェマーソンについてよく記述されているのが、
・誰も弾けないぐらい弦高が異常に高い
・極太のフラットワウンドでまったく張り替えない
・人差し指一本指で弾いて爪側のアップストロークも使っている
こういう話。
これだけ聞くと超絶ガテン系と言うか、尋常ではないパワーで勝負してるように感じてしまいますよね。実際、信じがたいぐらいに鍛え上げていたんだろうなと想像するところ。
それこそチャック・レイニーに対し、
「軟弱!」
これを言える人がどれだけ存在するものか。
徹底的にこだわるジェマーソン
ジェマーソンについて見方を変えてみるならば、それだけ太い音を楽器の方にも求めていた、執着とすら言えるこだわりがあったと考えられます。
少なくとも「楽器なんか何でもいいよ」というノリの人じゃなかったのは間違いないでしょう。話によると愛用のファンクマシーン(62年のプレベ)を他の人に触らせることもほとんど無かったとか。
楽器の掃除もほとんどしない、弦も切れるまで交換しないなど、独特の強いこだわりがあったみたいですね。汗も垢も汚れから何からその全てが自分のサウンドになる。それがファンクを生み出すという思想だった様子。
また、より自分の理想のサウンドとグルーブに近づけるためか、ブリッジ付近にスポンジを詰めたり、アンプ側のベースをフルブーストしていたとか、そういった話も残っています。
やはり、こだわりがないなんてスタイルとは対極ですよね。楽器に対してただ無神経に構えているなんてのとはまったく異なることをやっている。
その極端なセッティングにしてもただ根性論を唱えているのとは違う。理想の追求、合理的判断から生まれた選択なのでしょう。
弘法筆を選ばずなんて言ったりしますが、個人的にはあまり好きじゃないんですよねこの言葉。これを真に受けて思考停止するのは論外。ジェマーソンを知ろうとすると徹底的に我が道を行く大切さを感じます。
楽器の選択と理解が大事
ジェマーソンのようなスタイルや生き方は極端な例のようですが、楽器にこだわるのは重要だと自分は強く思います。「人生を捧げられる一本を手に入れろ!」とまではいかなくとも愛機があるとやはり違うもの。
それと同時に、そもそも理想の太さを実現できないような楽器で必死に頑張るのもどうなのかなと疑問になる次第。どう見たって聴いたって「そりゃ厳しいんじゃない?」って言いたくなる楽器で頑張ってたりすると「遠回りしてるなぁ」と思いますよね。
あえてそれで頑張るとか貫き通すって気持ちも分かるけど、変に視野が狭くなって前に進めなくなるのは考えもの。間違った楽器選びで理想が遠のき自分が潰れていってしまう可能性もあるから怖い。あまり変に意地を張っても良いことはないかなと。
少なくとも自分はそれで失敗し続けてきた身。無根拠な楽器選びで苦労するのは御免こうむりたい。あまりに合ってない楽器は工夫が生まれるどころか想像力を奪う要因にすらなってしまいます。
自分に合った楽器を選ぶ
太い音を求めるのであればやはり、
・どういうベースが好きなのか?
・自分が何を求めているのか?
・どんな音を出したいのか?
まずこれを理解することが重要でしょう。エレクトリックベースはタッチにこだわるだけでは解決しないものが沢山あるのが現実です。
ジェマーソンにしたってやってることはまったく無根拠じゃないですよね。ガテン系に見えるようで実はすごくリラックスして弾いていたはずですし、そうでなければあんなフレーズを弾くこともグルーブを出すことも不可能でしょう。
多くのプレイヤーが外すであろうPUフェンスやブリッジカバーも利用するのがジェマーソン。ピュアに解放するどころか制限を生むアイテムを積極的に使用するのだから面白い。自分に合ったシステムを使用しているからこその脱力。そう考えれば無頓着な楽器選び、相性を無視することの非効率さが分かるというもの。
楽器にこだわることは恥でもなんでもない。その理解を深めてこそ良い音、太い音、音楽になっていくのではないかと。金額の問題など大して関係なし。何百円万出したって合わないものは合わないし駄目なものは駄目。
太い音を出したいなら太い音が出せる楽器を素直に選ぶべきです。
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