二大ヒーローのベース追求
十代の頃から変わらずヒーロー。永遠の憧れ。ミーハーってぐらいに好きな二人。自分が元々6弦弾きだったのも大きいけど、6弦云々を抜かしてもずっと尊敬してやまない。
二人の共通点・・・なんて考えるのは安易ではあるが、そのあまりの対極さが面白かったので、ちょっと語ってみたいと思う。
「6弦ベース」ではなく、自身の楽器を一貫して『コントラバスギター』と呼ぶアンソニージャクソン。
「フェンダーベースを持ってこい!」と批判されようが、仕事を失おうが、お構いなし。常に理想の楽器を追求してきた生粋のプレイヤー。そしてオリジナリティの塊。
この世に無い物を創造する道のりがどれほど過酷だったか、様々絶するものがある。
選択肢は4弦しかなかっただろう時代、誰も相手にしなかった構想をカールトンプソンが実現!!・・・と思いきや、弦ピッチが狭すぎて合わなかったり、前例がないが故の多くの困難にブチ当たり、実用できない失敗作に終わった様子。
その後、ケンスミスで製作、それはかなり手応えあったのか、実際に使用してる音源も映像もある。が、ジャズベースとも使い分けてたようなので、やはり、いきなり理想の楽器とは行かなかった事が伺える。
そして、今日にも至るフォデラとの長~い付き合いが始まるわけだけど、出会って作って一段落とは行かなかったのは間違いない。コントラバスギターの基本仕様、シェイプ自体は決定しても、細かい試行錯誤がずっと続いていた。
かの有名なマホトップの10号機、あれでようやく完全になったと思いきや、それすらも手放したのが何とも恐ろしい。現在はよりボディが分厚い仕様、アコースティックな方向性を感じるコントラを弾いている。
ロック、メタルの世界に堂々6弦を持ち込んだマイアング。6弦自体がまだまだ未発達の分野だった事もあってか、相当な苦労や違和感との闘いが窺い知れる。
トバイアス、タング、ヤマハプロト、RBX-JM、RBX-JM2、ミュージックマンボンゴ、そのカスタムシグネチャーと、彼もまた長い時間をかけて自分仕様の楽器を突き詰めていった。
今見ると本当、タングを弾いている時期などは非常に窮屈そうだったり、無理をしてる印象が強い。36インチ、ワイドピッチ、大柄なわけでもないのにこれを立奏、バッキバキに弾いてたのだから恐れ入る。
バルトリーニのPUにしても、彼のスタイルに合っているとは思えなかったし、それが必要以上の力みの原因になっていたんじゃないかとも想像する。
ヤマハRBXにしても、最初はスーパーロングスケールだったが、RBX2では34インチに仕様変更されていた。PUも、上品目な方向性は相性いまいちだったように感じるし、シングルコイル的な響きと手応えも合わなかったのか、ミュージックマンタイプに変更。
その後、本家ミュージックマンと契約する事になるのがまた面白い。元々、1stアルバムではカスタムスティングレイを弾いていたマイアング。ある意味、原点回帰でもあるのかもしれないし、必然だったとも言えそう。
そして完成したシグネチャーモデル、これがまた非常に独特な仕様。なんと、5弦幅のネックに6本の弦を張るという、超ナローピッチ。ヤマハRBXの時点で16.5mmピッチだったが、それをさらに超える狭さ。
ナット幅も驚異の44.5mm。これってのは本当、ギターと同じレベルの狭さである。
スーパーロングスケール、ワイドピッチが合わなかったのは明白だが、それにしてもここまでやるかと。アンソニージャクソンの対極を行くような楽器を理想としたようにも感じるのが、非常に興味深い。
ちなみにアンソニー、34インチで作った11号機を「完全な失敗だった。今後36インチから離れる事は無いと思う。」と語っている。
対してマイアングは「34インチに戻して失ったものは何も無いよ。」と語っているのが面白い。
弦ピッチについてもアンソニーは「狭い間隔でごちゃごちゃやるよりかえって疲労を減らしてくれる。」と広げる方が好みだと対極に語っている。
こういったスペック、弦間やスケールに関しては本当、誰かのおすすめもクソもなく、弾き手本人が判断するしかない。目的に合ってなければ、ただの足枷にしかならないリスクがある。メリット・デメリット、まさに表裏一体。
と、この二人について語った後で自分の話をするのは、あまりに恐れ多いというものだが、これまで7本の6弦を所有、その内の3本はオーダーメイド、その全てを手放した経験と挫折もあり、徹底して己を追求していくその姿勢に、心底痺れさせられる。
また、初期から明確なビジョンを持っていたであろう創造性、慧眼にも敬服する。とてもじゃないが、ここまで明確な意志と目的を持って楽器製作、追求をする事は出来ない。その意味でもやはり、この二人には特別なものを感じてしまう。
まだまだ語りたい事はあるが、一先ずはこの辺にしておきたい。永遠のヒーロー、アンソニージャクソンとジョンマイアング。使用する楽器だけを見ても、その強力なこだわりと信念が分かるというものである。
歴史上存在しない物を作り上げ手に入れる・・・その姿勢に凄まじいドラマとロマンを見る。そして、そのドラマとロマンってやつは、常に常識や現実との戦いであると痛感する。
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