ジャズベースへの違和感と抵抗
そのクオリティを痛いほど思い知ってきたジャズベース。
アンチフェンダーを気取って色々抵抗してきましたが、弾けば弾くほどその素晴らしさを思い知り、実用性にも感服しっぱなし。
「これ一本あれば何でもイケる!」と堂々言えるポテンシャルに脱帽します。
一方、その実力を痛感し続けてきたにもかかわらず何かがひっかかる、自分の中でモヤモヤが残ってるのも本音。
フェンダーシェイプを数本持っている現在、今さらアンチ決め込むのも無理があるし、観念して素直に受け入れているつもり。
しかし、それでもどうにも納得しきらない、煮え切らない、届かない何かを感じる。この正体は一体何なのかとずっと抱えていたような気がします。
そして最近、そのモヤモヤを晴らす答えが出てきたかもしれません。
自分がフェンダー系の楽器に対して物足りなさを抱えていた原因は何なのか?
たぶんこれ。
『現実的すぎる』
形も音も含め、ファンタジックな領域に踏み込むのに合わないものを感じていたんだろうなと。
現代的、都会的、優れた大衆性、オールマイティ、一本あれば間違いないなど、そういった表現を用いるには最高の楽器だと思う反面、幻想や空想と言った言葉を当てはめるには何となく違う。
「そりゃプレイヤー側の仕事だ!」と言われればまったくもってその通り。
フェンダー系の楽器を用いてファンタジーな世界を表現している人なんて沢山いると思いますし、特にギターにおいては言うまでもない話でしょう。
ストラト一本で無限に広げられたって何もおかしくない。
ジャズベースにしてもフレットレスにするなり、リアPUを使用するなり、道はいくらだって存在します。
フロントPUでゆったり包み込むようなサウンドを鳴らすことだってできるし、シンプルながらも多様性に満ちています。
ん十年前にジャコがやってるじゃねーか、言い訳すんなってなるのも当然と言えば当然。
ただ、そういうこっちゃなし、もっと根源的と言うか深層に切り込むと言うか、またはもっと分かりやすく表面から来るものか、パッと見や第一声で世界観が出来上がってしまうことを楽器に求めたくなるのって絶対あると思うんです。
イマジネーションをかきたてられる、まったく別の広がりをもたらすことができる、勝手にストーリーが出来上がってしまう、そういった妄想的な領域を刺激しようとするとジャズベースって自分的にはちょっと弱いかもしれない、現実的によく出来すぎてる印象を強く受ける。
たとえば、と例にするのもどうなのかって話になりそうですが、アンソニージャクソンのコントラバスギターなどは300年前に存在していたとしても、何か納得できちゃうんじゃないかって思えるんですよね。
アンプが無いだの、電気楽器なんか存在しないだの、そういうことではない。その存在、思想、発想、ルーツが現代のそれとはちょっと違う領域にあるような気がする。
バイオリン、チェロ、コントラバス、そういった楽器と一緒に並んでいても恐らく違和感がない。
フェンダーより明らかに後発なのは間違いないのに遥か以前に存在していもおかしくない佇まい。成金的ハイエンドな風貌とは異なる次元にあると感じます。
弦と木の鳴り、唸りや軋み、根本的原始的ですらある音の要素をどこまでも追求したからこそ、楽器としての圧倒的存在感、生楽器な本物感が生まれるのかなと。
逆に言えば、だからこそフェンダーの方が優れている面が沢山あると思いますし、使い勝手が良くて当たり前、現代の音楽を演奏するにこれ以上ないほどの正解を導けるのだろうと納得もさせられます。
アンソニーのコントラバスギターはまた別種の楽器と言っても過言じゃないし、あれを普遍的にしようとしたり渇望する人はかなり限られているはず。
でも、そういうことばかり言ってたり需要や実用性を追ってしまうと、フェンダーの重力から抜け出せなくなっちゃうのかなって考えてしまいますね。
自分がジラウドのブラッククラウドにこだわっていたのも、そこから来ているのかもしれないし、ポップなカラーや雰囲気をなるべく避けるようにしていたのも納得できます。
良いフェンダーベースがあればそれだけで十分なのは分かってるんだけど、でもそこに抵抗したい、もっとファンタジックな雰囲気を楽器から感じたりそれが音にも出てほしい、そんなことを求めていたのかなと一つ答えを出せたような気がしますね。
5弦6弦をずっと弾いてきたのもそれがあるのだと思いますし、フェンダー外の多弦を弾く人なら共感する人もいるんじゃないかと想像。
幻想的、空想的、果てしない想像の世界、壮大なスケールなど、そういったベースを求めてやまないって夢があって良い。
そこを行くと今の自分は、ちと現実に足を付けようとしすぎてたのかなと考えてしまいます。
その方が絶対良いだろうし選択としても賢いんだろうけど、アホな妄想にひたってなんぼな楽しさもあっていい、フェンダーへの抵抗心は捨てないようにしたいと心が引き締まった次第。
ま~なんと申しましょうか、青春のポップスだの明るい音楽ではなくアニメとゲームで育ってきた身なことをかんがみても、フェンダーそのものはちょっと健全すぎるような眩しいような、そんな印象があるんでしょうね。
不良なんてのも自分からすれば分かりやすい表の住人と言うべきか、もっと深淵をさらけ出せてしまうような楽器も持ってみたくなってきました。
まぁ「それをベースに求めてどうすんねん!」って自分でツッコミ入れたくなるのも正直な話ですが、「ファンタジックなベースが欲しい!」とか言葉にしたり具体的に考えたことってなかった為、いずれ何か形にしてみたいですね。
そんなこんな、自分がアンチフェンダーだった理由としてこれ以上なく納得できる答えは出ました。
『暗いオタクの妄想を刺激するには健全すぎる』
これを自覚できたのはなかなかの収穫。
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