ベースとスケールと疑問
2014年に某SNSで公開していた記事をリライト。
楽器に対し、神経質になるのは考え物と思いつつ、不利な現実を見ないようにするのもどうなのか?辛いものは辛い、厳しいものは厳しい、それを見て見ぬ振りするのも疑問。
しかし、短くコンパクトにしたからと言って楽になるとは限らないから難しい。ただ、長く大型にすれば良い音になるかって、そんな単純な話ではない。
そんな疑問や課題について、リライトを交えながら、考えていきたいと思います。
小型軽量自体は昔からある
『33インチ特集』みたいな記事が面白そうだった為、数年ぶりにベースマガジンを購入。
一昔前は、スケールを伸ばそうとする方が流行ってた印象がありますが、ここ最近の流れを見るに、その風向きがちょっと変わってきたような印象。
「重いベースじゃないと良い音はしない!」みたいなノリ、ヘヴィ級神話みたいなやつも薄くなってきたかなと。
ただ、「体の小さな日本人向け!」なんていう売り文句は昔からありますし、今でも耳にすると思います。
スケールが短い楽器、小型軽量の楽器というのは、そこまで特別の存在なわけではなく、ずっと以前から存在しています。
で、ちょっと皮肉な話、その多くは日本よりむしろ、海外から出ていたりする印象があるのが面白い。
その辺を考えるとまぁ、何と申しますか、日本人どうのって部分は、宣伝の常套句に過ぎない気もしてきます。
これと言うのは、実のところ、人種も国籍も関係なく、
「ベースしんどい・・」
そう感じるプレイヤーが多い証明なのかもしれませんよね。
海外の人だからと言って、皆が皆、バカでかいわけじゃない。もっと言えば、体がでかかろうが何だろうが、そもそも一筋縄ではいかない。
苦労の絶えない、タフな楽器だってことなのかなと。
売り文句なんか当てにならない
一時期のスーパーロングスケール至上主義みたいなのを考えると、売る側の姿勢やら言葉なんてのは、本当にいいかげんなものだと笑ってしまいます。
「35インチとは思えない弾き心地!」
「言われなければ分からない!」
みたいなのってもう、お約束ですよね。
でもそれって、
「じゃあ34でええやん」
ちょっとツッコミたくなります。
弦の調達が不便になる可能性があるし、34インチで済むならそれに越したことはありません。
それと同様、「33インチでも34インチと同等!」なんて売り文句もあったり、そのテキトーさに笑ってしまうところ。
それじゃほんと、
「全部同じやんけ!」
っていう話にならないかと。
ジョークではなく真面目な話、こういう売り文句なんかに惑わされず、自分自身の感覚でちゃんと判断するのが一番でしょう。
「この1インチで人生変わりました!」みたいなことはちょっと考えにくいですし、誤差レベルなのか、本当に劇的に違うものなのか、それをちゃんと判断する為にも、変な先入観は外した方が良い。
こだわるべきはクオリティ
スケール云々を気にするのもいいですが、まずはやっぱり、その楽器自体の完成、魅力がどうなのかってのが重要なんじゃないかと。
36インチでも全く鳴らない楽器もあった一方、普通の34インチで全然問題を感じなかったり、高く評価されている楽器もあるのが現実。
そう考えると、スケール云々って余程のことでもない限り、実は、そこまで大した問題じゃないようにも思えてきたり。
スーパーロングスケールだったとしても、全体のサイズで言えば、ヘッドレスの方が短くなったりもするように、目的意識や場合によっては、スケール云々なんてあまり関係なくなってくる気がしないでもありません。
実際、34インチでも、やたらと1フレットが遠く感じる楽器なんてのがありますし、トータルのサイズ、バランスなど、それを無視してスケールにだけ注視するのは、だいぶおかしな話。
小柄だったとしてもコントラバスのような楽器をバリバリ弾ける人もいる世の中、楽器で解決するべきなのか?技を高めるべきなのか?その両者を求めていくのか?
いずれにしても、スケールのみを気にするより、まずはやはり、その楽器自体のクオリティ、自分との相性に目を向けることが大切だと感じます。
短いスケールの悲劇とフェンダーの呪縛
短いスケールならではの難点と申しますか、これについては、前述のベーマガの特集の方でも書かれていたことですね。
スケールを短くする場合、大抵は安物扱いだったり、チープな方向性で作られる楽器ばかりだったする為、それが原因で誤解や偏見が生まれてしまう面があるんじゃないかと。
スケールの短いベースで評価されているものって、本当に少ないと思います。
そういった物も結局のところ、本格派とは見られないんじゃないかと感じますし、どちらかと言うとやはり、特殊な楽器として扱われてしまう印象が強くなる。
この辺りについては、フェンダーが築き上げてしまった歴史、その楽器の完成度というのが、本当に厄介に感じるところ。
我々と言うか、もはや人類と呼ぶべき規模?その多くが、その音を聴いて生まれ育ってきたという、とんでもない事実。
それだけに、その壁も恐ろしく分厚く存在しているのでしょう。
見方を変えれば、
「34の呪い」
とすら言っていい、呪縛があるのかもしれませんよね。
フェンダーそのものの音でなくとも、34インチの音を聴いて生きてきたのが現実。それを共通の文化、価値観として認める環境も、すでに出来上がってしまっている。
演奏する側にしても、その感覚が染み付いてしまっているから大変です。スケール変更という先入観、違和感を認識してしまうと、なかなかそれが外せないし、受け入れも難しくなってしまう。
フェンダーベースによる革命、実績もあまりにも偉大すぎた為、そこを変えようとするのは、非常に困難な道のりだと痛感します。
「プレベでいいじゃん」
「ジャズベでいいじゃん」
「34でいいじゃん」
これで済んじゃうと。
短くするなら半端じゃ駄目
こういった偏見を乗り越えるだけのクオリティ、オリジナリティを持ち、目的意識もハッキリしたものを作らなければならない・・・
そう考えると、スケールを短くした楽器に挑むというのは、安物向けを狙うどころかむしろ、凄くハードルが高いものだと感じます。
例え、30インチで素晴らしいフェンダーコピーを作り上げたとしても、「あぁ、やっぱり本物の方がいいわ・・」なんて風に、すぐ飽きられて終わってしまうのでは悲しい。
でも実際、そういうものですよね。中途半端な楽器では、まず生き残れない。ただスケールを短くしましたってだけじゃ、とても通用しない。
フェンダーから離れた完全なる別物、スタンダードとは異なる方向に仕上げる方向が、正解でもあるのかもしれません。
しかし、それを作るにしても結局のところ、相当な完成度を持った楽器でなければ、誰も振り向いてはくれないはず。
スケール短くすれば弾きやすくなるかって、 そう単純にはいかない。にもかかわらず、音に対しては物凄くシビアに判断される。
全てのクオリティに納得できない限り、恐らくは今まで通りの安物扱いをされるだけ。進化も感じない、志も見えない、そんな物しか作れないままでは、先に繋がらない。
なかなか、残酷な世界だと思います。
弾きたくなる楽器が一番
自分が初めて持ったベースは、32インチミディアムスケールのベース。小型軽量で弾きやすかったけど、音はスカスカ、コシも何もあったもんじゃありませんでした。
そのまんま、如何にもな「安物」って感じだったかなと。
その次に34インチの楽器を手に入れ、ま~、戸惑いました。想像以上に長い、大きい、あまりの違いに驚愕するレベル。
5cmも違うんだから当たり前っちゃ当たり前。でもやっぱり、実際に体験すると怯んでしまうぐらいに感覚が違う。
あれだけの違いがあるとやはり、「スケールは関係ない!」とは言えなくなってきてしまいます。
違和感バリバリ、あれで30インチのショートスケールからの変更とかだったら、完全に別の楽器だと感じていたことでしょう
しかし、ここからが大事。
短いスケールから、長いスケールへの持ち替えには苦労した一方、それ以上に満足感がとてつもなく大きかったのが、本当に強く記憶に残っています。
「やっと本格的なベースを手に入れたんだ!」
と、その音に感動しましたし、それを使いこなす快感ってのもありました。
「やっぱり軽くて短い方がいいよ・・」なんて戻ろうとはしませんでした。
大切なのはやはり、その楽器が好きかどうか。多少の違和感、苦労なんか気にならない魅力があるなら、それを弾きこなす為の努力をしたい。
最初はきつくても、慣れさえしてしまえば、意外と気にならなくなるもの。好きな音、出したい音、求める音が出ないストレスの方が大きい。
短いスケールの楽器の何がまずいかって、そういった魅力を考えず、ネガティブな方向で作られた物ばかりだから、魅力がなくなっちゃうんじゃないかと思ったり。
初心者向けどうのなんて話は、見方によっては安易な誤魔化し、逃げですよね。そもそもの話、本気で作る気があるのかどうか、そこが疑問になってしまいます。
プレイヤーも作り手も、目的意識とイメージをしっかり持ち、ちゃんとクオリティを追求、進化していけば、絶対、もっと良い物が出来るはず。
無闇にメリット・デメリットをごっちゃにするから、中途半端のままになっちゃうんじゃないかと。
自分が初めて持ったベースにしても、これがもし本当に素晴らしい楽器だったら、ロングスケールの方に憧れなんか感じなかったかもしれません。
憧れるどころか、ロングスケールの方にデメリットばかり見ていた可能性もある。
短いから駄目なのか?
その楽器その個体が駄目なのか?
よくよく考えたいテーマですね。
大型化ばかり目指すのは悲しい
短いスケールで個人的に1本作ってもらうとしたら、とりあえず、普通の楽器を普通に真面目に頼んでみたいところ。
すでに実験済みで淘汰されてきた物なのか、それとも、そこまで本格的に取り組まれてこなかったのか、そこを確認したい。
短くした結果、自分の体にバッチリ合ったら、まずはそれが何より。 その上で、音にも魅力を感じる実用的な楽器が出来れば、それは本当に素晴らしいことですよね。
身長163cm、手の大きさも並、腕の長さも普通、体格的に有利な面は、ほとんど持ってません。だからこそ、そこにフィットする物が欲しい、馴染む物を手に入れてみたい。
この辺り、何と申しますか、日本人こそ、もっと真剣に取り組むべきだったんじゃないか、ちょっと残念に思う部分があります。
フェンダーのコピー、海外の後追い、物真似ばかりだと、悲しくなってしまう。
日本人に合いそうな楽器を日本人が作れなくて、海外から輸入してそれに気付くってのは、ま~、どうなんでしょうね?
日本独自にエレクトリックベースが進化を遂げていれば、ヴィクター・ウッテン、マシュー・ギャリソンみたいな人が、日本の楽器を弾いていた可能性もあるんじゃないかと思ってしまったり。
海外にだって大型のベースを苦労して弾いている人がいるわけですし、そこから生まれる声も無視して固定観念にとらわれるというのは、あまり納得はできません。
国産の楽器ばかりを弾いてきた人間としては、かなり寂しい話。
小柄だったり手の小さなプレイヤーに向き合った面白い楽器、それをもっと作れていたんじゃないか?そんなことを考えてしまいます。
勿論、作り手の方にばかり文句をぶつけるのはお門違い、それと言うのも分かります。
結局は、プレイヤー自身の方が大きく重い物を求めてしまう、フェンダースタイルに落ち着いてしまうなど、その声に応えた方が当然の流れと言えます。
一方、今は多様性の時代。フェンダー以外を求める人が増えているのも、間違いない事実。だからこそ、フェンダーとはまた違うベースの世界も、追い求めていってほしくなりますよね。
柔軟、重厚、強靭、無茶な注文をしたくなってしまうけれど、素晴らしいビルダーも増えているだろうだけに、凄い物を求めたくなってしまいます。
悪ふざけでもない、成金趣味でもない、幼稚な捻くれでもない、安物でもなく、直球勝負できるガチなのが見てみたい。大型化の究極ではなく、小型化の超進化、可能性がないわけがない。
短いスケールで本当に素晴らしい楽器に出会ってみたいですね。
オリジナルマガジン
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