Beyond the Missouri Sky
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初めて聴いたのは十代の頃だったか、それからずっと人生の名盤として輝き続ける一枚。簡単に言うと『パット・メセニー』と『チャーリー・ヘイデン』によるデュオですね。重ねている部分もありはしますが、この二人が主役であることに間違いはありません。
サウンド的にはアコースティックで非常に落ち着いた作品、楽器を演奏しなかったりジャズに興味のない人でも聴きやすい作品と言えるでしょう。インストの世界への入門としてもおすすめ。
難解なイメージもありそうなメセニーですが、このアルバムではその印象を受けることはほとんどないんじゃないかと思います。ギターのフレーズも音色も素直に良いものと認識できるはず。
「これはジャズなのか?」そんな定義付けが心底どうでもよくなる、本当に素晴らしい作品だと断言できます。
チャーリー・ヘイデン
ヘイデンのベースを初めて聴いたのもこのアルバムですが、いや、本当に衝撃的でしたね。
「こんなに良い音が存在するのか!?」
「こんなに音数が少なくていいのか!?」
「こんな単純なフレーズで成り立つのか!?」
なんて感じに、当時の自分が描いていた理想とは対極の演奏に驚愕。あのプレイで人を圧倒・感動させられるベースなんて他に存在しないんじゃないかと今でも思います。
まずとにかくブッ飛んだのが二曲目の【Our Spanish Love Song】このベースソロは今でも理想のプレイとして憧れ続けている次第。当時、「ある病」にかかっていた自分にはあまりに衝撃的なものでした。
ベース小僧がこじらせた特有の病
音楽学校に通ったりジャズをちょっとかじり始めていた自分がかかったのが、
・ルート弾かない病
・音数弾きたい病
・難しい珍しいフレーズ弾かなきゃいけない病
・ベースから脱却したい病
こういう病気。ギターとか管楽器みたいなフレーズと技術を身に付けなければいけない、そんな風に悪戦苦闘していた記憶がよみがえります。
この流れで名前を出すのもちょっと失礼なようですが、要はジャコやスランリー・クラークにジェフ・バーリンなど、このあたりのプレイヤーに表面的に憧れていた時期ですね。
・華麗にベースを弾きまくりたい!
・他の楽器に勝てるテクニックを身に着けたい!
・ベースの限界を超えたい!新たな可能性を見つけたい!
そんなことを思い、躍起になっていたわけです。
ベースで辿り着く芸術の世界
繰り返すようですが、そういった中でチャーリー・ヘイデンの演奏というのは、あまりに衝撃的なものでした。なんと言うかもう、
・音をひとつ出せばそれで世界観が出来上がってしまう。
・休符がただの間ではなく『静寂』として成り立ってしまう。
・パフォーマンスのための演奏ではなく芸術を創造するために演奏する。
そんな印象です。
・どうしたらこんな深い音を出せるのか?
・どうしたらこんな意味のある音を出せるのか?
ハイポジションなんかほとんど使わない、それでも音楽的に芸術的に成立してしまう。こんなベースが存在する、弾ける人が存在する、その事実に感動するしかありませんん。『芸術家』『音楽家』とはこういうことかと納得させられます。
First Song
「全編おすすめ!」としか言いようがありませんが、その中でも特に自分のお気に入りについて話すのであれば、この五曲目になるかもしれません。前述の二曲目も素晴らしいけれど、ヘイデンのベースが最も重々しくシリアスに響いているのがこの曲ではないかと。
ヘイデン作曲ということもあるのか、メセニーも「必要なことだけを弾いている」と感じるところ。そしてそれだけに凄まじい緊張感に満ちているのがまた魅力的。アコースティックギターとコントラバスだけというシンプル極まりない編成。音数も少なに淡々と淡々と演奏していく。それだけで感動して言葉を失ってしまうのだから凄い。
何と申しますかこれこそ、
『音楽』
なんじゃないかと唸らされます。
入口にも終着点にもなる本当に感動する作品。
ただの癒し系デュオではなく人生に語りかけてくる一枚でしょう。
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