縦振動のタッチの研究 (10) ベースのレスポンスとその重要性

縦振動のタッチ (10)

  

タッチレスポンス

 

ジラウドを知るとこの言葉をよく聞くことになるかと思います。ただ、いざ自分でどう説明したものかと考えてみるとこれが意外に難しい。

 

たとえばデジタル機器を扱っててタイムラグなどを認識した場合、恐らくは多くの人が気持ち悪い印象を覚えるかと想像します。弾いた瞬間に音が出て欲しいのにどうも遅れて出てくるように感じる・・ こちらがイメージしてるタイミングとは完全にずれている・・そういった違和感を経験したことがある人は多いでしょう。

 

ワイヤレスを使用する際の感覚などについても同じかもしれません。レイテンシー(遅延)がどうのそんな話を耳にするはず今回のタッチレスポンスの話についてもまずはそんなイメージをしておくと良いかと思います。

 

「遅い」「速い」「遅れる」「遅れない」「立ち上がりが良い悪い」キーワードはそんな感じ。

 

音の遅延は大問題

 

音が遅延するのってそんなまずいことなのか?

 

「そりゃ大問題だろ!」

 

声を大にしたくなります。

 

極論すれば16分音符ずれて出てくるとか8分音符ずれるとかそんな話。それじゃ演奏のしようがないだろうとツッコミたくなるところ。そこまで計算して弾ける人がいたとしても根本的に何かがおかしいことに変わりはない。絶妙なタイミングが命にもなってくるであろうグルーブに影響がないとは考えられないし、余計な足枷もなく自然に弾きたいなら遅延なんかない方がいいに決まってる。

  

音楽・演奏の世界は1秒にも満たない領域での勝負が常。細かい刻みが求められるなら尚更というもの。それを考えればレスポンスが遅いことを無視するのが理に適っているとは到底思えません。放置していいどころか致命傷にすらなりかねない話ではないかと。

 

それ考慮していけばもっと優れたレスポンスを持つものが出てくるはずなんですが、残念ながらこの世の中、鈍重な楽器が溢れている恐ろしさ。ナチュラルにレイテンシーが起こると言うか、恐ろしいぐらいに立ち上がりが悪い、反応がよろしくないものが多く存在するのが現実。前述したようにその遅れを自分の感覚で無理矢理に強制して弾いてる人も多い印象。 

 

「もっと速く音が出てほしい!もっと楽に音が抜けてきてほしい!もっとベースがはっきり聴こえてほしい!もっと気持ちよく音が前に出てきてほしい!」

 

こう望む人が多いだろうにそれとは真逆なものを作る不思議。高級そうに見せかけるだけで定番品の実用性の足元に及ばないようなものが溢れている恐怖。

 

音が遅いことによる余計な負担や労力というのはかなりのもの。少なくとも自分にとっては多大なストレスの要因になります。イメージより遥か遅れて音が出てくるのは気持ち悪くてしかたない。

 

低い音を素早く出す

 

ただでさえ音が遅れがちになるのがベースって楽器の宿命。ただ単にローをブーストすれば良いというわけではありません。「低い帯域をいかに高速に再生するか?」これが大きな鍵になってくるでしょう。いくら高い帯域をブーストしたりアタックを演出したところで肝心のボトムが鈍重、かったるく立ち上がるのではアンバランスな音になってしまいます。

 

ゆったりした立ち上がりと伸びが良い感じになる場合があるのも当然ではありますが、その本意とはまったく逆の結果になってしまっているのでは意味がない。「グルーブしない・・音の立ち上がりや抜けにずっと悩んでいる・・」そんな人がレスポンスの悪く鈍重な楽器を使っていたらやはり大問題。そんな不要な苦労なんかせず素直にもっと速い楽器を選択した方が絶対に良い。

 

ナチュラルにレイテンシーがあるようなものを弾いているのは辛いだけ。いくらエフェクターをかけようが電気的に改善を図ろうが望み薄。むしろ泥沼にハマっていくことになるパターンがほとんどではないかと。

 

高い楽器が良いとも速いとも限らない

 

グルーブってやつは本当に奥が深いもの。ただでさえ一生悩み続ける可能性があるから恐ろしい。結論なんてものが出るとは思えない領域の話かもしれません。だからこそ自分がイメージした通りのタイミングで音が出ない楽器で頑張ろうとするのは辛い。理想のポイントより遅れている、根本的に引っ込んじゃって抜けてこないなど、それを弘法筆を選ばずで思考停止、放置するのは危険だと考えます。

 

楽器選ばずで問題ない人も存在するのも間違いないけれど、それが自分にも当てはまるかは分からないし、そうだからと不利な条件を受け入れるのが良いとは思えません。自分の好みとは実は違っていた。スタイルに適合していなかった。そんな相性の悪い楽器に気付かず苦労。余計なところで悩むのは正直ばかばかしい。

 

どんなに値段が高かろうと超一流のプロが使っている物だろうと関係なし。自分が出したい音が出ないだけではなくタイミングまでずれているのでは意味がない。 グルーブのことを考えればむしろそのタイミングこそが最重要と認識してもいいぐらい。

  

タッチレスポンスが良いと音を出すのは本当に楽になります。 縦振動のタッチで弾くにしても違うタッチで弾くにしても、反応が速い方がより的確に表現できること間違いなし。弾き方で音が活き活きと変わる楽器とそうでない楽器。当然、前者の方がタッチによる音の変化を瞬時に感じられますし、 それだけ音も元気よく前に出てきて抜けてくるはず。音抜け感を演出するために仕方なく高域を持ち上げるなんて必要もなくなります。

 

反応が豊かならそれだけタッチのトレーニングも面白くなる。縦振動のタッチの習得だってはかどる。機材任せの音から卒業すればボトムも別物に変化。鈍臭く遅れることなくリズムもどんどんプッシュできるようになっていくでしょう。

 

ベースは根本的に遅い楽器

 

ギターの切れ味鋭いカッティングやドラムのハイハットの刻みなど、そういった立ち上がりの楽器に対しベースの音が遅れるのは当然っちゃ当然。

 

それに対抗するようにベースもスラップしたり、ピックで激しくアタックを出したくもなりそうですが、それが好みでないという人も沢山いるはず。普通の指弾きでボトム豊かかつガンガン前にプッシュしていくのは本当に難しい。正直、どんなに反応の良いベースを使っていても根本的には厳しそう。

 

にもかかわらずレスポンスの悪いもので必死に頑張るのは並大抵のことじゃありません。と言うかまったく理に適ってない。色々諦めて「ベースに存在感は不要!」なんて風に悟ってしまえばまぁ、そんな神経質になる必要はないとも思います。

 

たとえばロックでの場合、ギターの刻みに対しベースは低音を補佐する為だけにいるとか、一つにはそれでも良いのかもしれません。「バンドさえ良く聴こえるならそれで満足」という感覚も楽しさも確かに分かります。

 

でもそれってかなり寂しい話ですよね。そんなので「縁の下の力持ち!」なんて言って落ち着いちゃうのが本当にいいのか?少なくとも自分は抵抗を覚えます。バンドの為とかサウンド重視と言うならばこそ独自の存在感があるべき。そこに甘んじたくないならタッチレスポンスについて真剣に考える価値は絶対にある。「何となく聞こえてればそれでいい」なんて諦めたくはない。

 

指を弦に叩きつけバキバキ弾くにしてもレスポンスが速い方が絶対に有利。上の帯域だけ速くて下の帯域はもっさりとかそれじゃ結局は埋もれるし、ボトムから何から全帯域が高速に立ち上がってくれた方が理想的。瞬間的なアタックや立ち上がりが命になるのにそこにこだわらなくてどうするのか?根本的なレスポンスを無視して豪華な木目や多機能に目を奪われてばかりでいいのか?

 

「結局はパッシブのフェンダーでいい」こんな結果になるのもある意味では必然。見てくれだけで鈍重極りないものと比較したらレスポンスも実用性も雲泥の差。よっぽど素直に気持ちいい音が出てくれます。

 

成果が出てこそ演奏は楽しくなる

 

様々なタッチを駆使しているのにもかかわらず違いが大して生まれないのは悲しい。反応の悪い楽器による音のタイムラグは本当に致命傷にもなりかねない。この点についてもっと感覚を高めた方が得だと自分は実感する次第。

 

これについては前回からも続くようにアンプシステムの選択も非常に重要。鈍重なベース本体と鈍重なアンプと組み合わせるのはある種の地獄と言っても過言ではありません。しかし残念ながら現実は常にそんなもの。楽器もアンプも遅い物ばかりが溢れててうんざり。そこに加えてエフェクターも通すとさらに壊滅的になる恐れあり。

 

そうやって余計なものをバンバン追加するのが当たり前になっているのはもはや救いのないホラー。いくら機材を探しても理想の音にも存在感にも辿り着けない・・いくら練習しても上達を感じられない・・ずっと成長が止まったまま・・そう落ちこむ人は結構な確率でいることでしょう。

 

それというのも実のところ、楽器のレスポンスが大きく関係してる可能性は否定できません。大げさかってそんなことはなし。理想のタイミングとずれてる、努力した成果がが目立たない、問いかけても反応に乏しいなど、そりゃ辛く悲しく疲れるのも無理はない。

 

繰り返しますが「弘法筆を選ばず」という言葉には色々疑問を持った方が良いと自分は考えます。何を使っても一流であるのは確かに素晴らしいこと。一方、「道具なんかどうでもいい!」なんて方向に勘違いしたり思考停止するのはいかがなものかと。

 

楽器にもシステムにも疑問があるならば一度本気で見直してみることをおすすめします。縦振動のタッチの習得に挑むなら尚のことタッチレスポンスについてもっとちゃんと意識すべき。グルーブに悩むにしても音抜けに悩むにしても突破口になる可能性は十分あります。

 

「考えない方がいい!「もっともっと苦労すべき!」「甘えんじゃねぇ!」ってのは老害の主張みたいで自分は嫌い。良い結果を早く確実に得られるに越したことはない!

 

オリジナルマガジン

note.com

 

note.com

 

note.com