ベースと左手 (12)
ドリームシアターのジョン・ミュング
彼が教則ビデオで紹介していた練習方法が今でも大きく役に立っています。基本的な理論やスケールを覚えるにも凄く効果的でおすすめ。
6弦ベースを始めたての頃、毎日のように指が迷子になっていましたが、それを克服するためにも非常に有効だったのが、このバックワード・モーダル・アプローチ。
せっかく左手に関する話を続けているのだから、ここで簡単にまとめてみようかと。
ただ、アイオニアンやドリアンなどそういったスケールの構成音や機能について、一つ一つ説明していくと恐ろしく長くなりそうなので、ここでは省略。
また、とりあえずここでは5弦ベースと6弦ベースを前提に話を進めていくことになりますので、その点についてもご了承下さい。
バックワード・モーダル・アプローチ 上行パターン
【Key=Cmaj 】
この設定で解説していきたいと思います。
最初に弾くのはローB弦の1フレット。
『C』から始め【アイオニアンスケール】で上行。
「C D E F G A」と六音弾きます。
次に頭に来る音は『B』
今度は【ロクリアンスケール】の上行。
「B C D E F G」と六音弾く。
今度は『A』の音。
該当するのは【エオリアンスケール】で上行。
「A B C D E F」と六音弾きます。
次は『G』の音。【ミクソリディアンスケール】を弾く事になります。
ここで5弦ベースの場合、G弦の17フレットのCで終わりにするのが良いかと思います。
6弦ベースの場合は、ミクソリディアンの六音「G A B C D E」を弾く。
今度は『F』の音。
【リディアンスケール】の上行。
6弦ベースで24フレットの場合、「F G A B C」で最終フレットに達してしまう為、その最高音の『C』を弾いて終了ということになります。
ダイアトニックコード内における基本的なスケールを順番に弾こうとした場合、
【アイオニアン→ドリアン→フリジアン】
その順番になるのをこの方法では逆に、
【アイオニアン→ロクリアン→エオリアン】
と戻っていくように弾くことになるわけですね。
ゆえに、
『バックワード』
こう呼んでいるのだと想像。
その規則に従い、7つのモードスケールを弾くという方法。
期待できる効果
この練習の何が良いかって、たとえば6弦ベースの場合。
『最低音弦の1フレットから最高音弦の最終フレットまで続けて弾くことができる』
これが非常に効果的な印象。
音域は違えど4~5弦ベースでも同様、最低音域からほぼ最高音域の方まで繋げることができますし、スケールを覚えるにも運指を覚えるのにもってこいです。
指をただ無闇に動かすのではなく、スケールの理解とそれに伴う運指を身に付けられるのが非常に効果的。
ダイアトニックコードとその各コードトーンやテンションの構成などについても覚えていけば、非常に実用的に取り組むことができます。
そうやって理解が深まることで多弦を弾くのもスムーズになっていきますし、幅広い指板上で迷子になることなども無くなっていくはず。
バックワード・モーダル・アプローチ 下降パターン
最高音まで上行したら今度はそこから下降。
同じ要領で弾いていきます。
『C』に該当するのは【アイオニアンスケール】
「C B A G F E」と六音を弾く。
次に来る『D』で該当するのは【ドリアンスケール】
「D C B A G F」の六音を弾いて下降。
次の『E』で該当するのは【フリジアンスケール】
「E D C B A G」と六音弾いて下降。
こうやってルールに従い進行し、ローB弦の1フレットを弾いて終了。
つまり、始めの『C』に戻ってくることになります。
下降の場合、
【アイオニアン→ドリアン→フリジアン】
バックワードの逆になるところが面白い話。
上がっている時は下がり、下がっている時は上がる。
ちょっとした脳のトレーニングにも良いかもしれませんね。
弦が何本でもおすすめ
多弦ベース前提みたいに話しましたが、実はそこはあまり関係ないのも本当のところ。
4弦でもEの開放から始めれば、21フレットまで繋げることができます。20フレットでも最後はチョーキングすれば解決可能。
慣れない運指で試してみたり手癖から離れてみたり、色々実験してみるとそれだけ良い練習にもなっていくでしょう。
また、絶対にアイオニアンから始める必要があるわけではありません。そのあたりも変化させてやっていくと面白いんじゃないかと。
やっていることは同じようでも、淡泊に「ドレミファソラ・・」とメジャースケールを弾いていくのとは一味も二味も違う取り組みになります。
プログレッシヴ・ベース・コンセプト
この教則ビデオは本当、色々な意味で度肝を抜かれましたね。
「地味な内容の嵐」
見てるだけだと眠くなってしまう可能性大。それだけにマイアングの尋常ではない練習量と基本への心構え、その意識の高さなどがうかがえるのも確か。
最初はあれです、
「どんな超絶テクが見られるんだろう!」
なんてワクワクしながら手に入れたんですよ。
それがま~、見てビックリ。理論なんか知らないから、異世界の言葉の連続で困り果てることに。コードトーンをゆっくり弾いていく練習が淡々と20分以上も続くというのも困惑。
今回のスケール練習なんかについてもそうですよね。
「とにかく地味」
正直、理論を知るまでは内容もほとんど分かりませんでした。分かってくればものすごく身になる為になるんだけど、その価値に気付くまでかなり時間がかかりました。
その誠実な内容は本当、マイアングそのものという気がしますね。彼の人柄、それがよく出ていると感じる次第。
「ドリームシアターは一日にしてならず!」
こんな気持ちにさせられます。
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